拠点の規模と社会風俗

魔女の住む場所
村(廃村/過疎村/村) 町(宿場町/町/発展町) 都市(中継都市/都市/大都市/首都)
社会風俗
1,デザイン様式 2,階級格差 3,職の引き継ぎ
4,貨幣制度 5,衛生事情 6,食事事情
7,職業軍人 8,性産業 9,一般的な倫理観 
10,教国の亀裂 11,怖れられる魔女 12,楽園の残骸

 

 魔女の住む場所

魔女が拠点を構える集落には主に以下の大きな3種類の規模があり、
その中の区分けをいれれば全10種類の規模の拠点が存在する。
魔女はいずれかの中から自身の拠点を選び、その拠点を中心に活動を行う。

用意されている公式拠点として「村:ドルア」「宿場町:エデンズゲート」
「町:リアージュ」「都市:ラース」「都市ボルボア」の5つが存在する。
それらの詳細は別項の「拠点と黒山羊を含む公式NPC」を参照し、
新たに独自の拠点を作りたい場合は「拠点チャート」を使用してほしい。

 ○ 村(廃村/過疎村/村)

村は主に農業、畜産、狩猟、漁業などの第一次産業によってなりたっており、
人口の90%である農奴が属するのもこの村となる。

貴族に選抜された中位階級が施政者の村長となり、
その家族が村長の地位を継いでいく事が基本となっている。

村長は村では高位階級を凌ぐ権力を握っており、
裁判所が存在しない小さな村では、村長が聖職者立会いの元で裁判官も務めている。

村とはいえ施政者である村長は、基本的に教団からの干渉を受けており、
諦観して悪事の共犯者となって、望む望まぬに関わらず非道に手を染める事も多い。 しかし閉鎖的な村では村民を敵にまわす事は、己の家族までも
危険に晒す事になるため、可能な限り穏便に事を済ませようとする。

外部との接触は主に市場において商人達と行われており、
彼ら行商人の持ち帰る情報を買取り領地を監視する貴族も多い。
行商人は都市部の大商人が経営する商会に属している事も多く、
村における物資の流通の権利争いは稀に流血の惨事を生む。

地方の辺境における、領主に対する反感が高い村では、
村ぐるみで魔女の親派という末期的な状況の場所も存在する。

そうした村では魔女を教団に通報しようにも様々な妨害にあう。
こうした事情から、村は教団の追っ手から逃れるために
やってきた魔女たちの拠点となっている事が多い。
 


 ◎ 町(宿場町/町/発展町)

都市部と村を繋ぐ宿場町であり、
出稼ぎにきた農奴や中位階級が人口の大半を占める。

貴族に選抜された高位階級が町長の地位に付いており、
やはりその家族が跡を継ぐのが基本となっている。

町長縁の商会が拠点を町に構えている事もあり、
町においては町長をはじめとする商人が強い権力を持っている。

主に観光や流通によって運営がなりたっており、
町においてトラブルが起こって旅人の評価が下がる事は死活問題となる。
そのため、何か問題が怒っても町ぐるみで隠蔽する事が多く、
外部からの収入によって成り立っているため、教団への擦り寄りも激しい。

しかし、それはあくまで生存のための手段であり、
反体制についた方が得策だと判断すると、すぐに手のひらを返す狡猾な所でもある。
良くも悪くも現金であり、魔女達は町に潜伏する場合は、
交渉などの駆け引きの技術が必要となってくるだろう。
 


 ☆ 都市(中継都市/都市/大都市/首都)

教国の経済や軍備を維持する拠点となる要の都市であり、
支配階級や貴族が居を構えるのもこの都市となる。

国主である教皇、そして教皇に選抜された貴族階級が
都市の統治者となり、都市の住人は中位階級が大半を占める。

都市の周囲には、出稼ぎに来て挫折した低位階級の溜まり場である
スラムを形成しており、その地域の治安はあって無きものである。

スラムの住人は兵士が寄り付かない下水道の排水口付近に集まっており、
都市部で発生する疫病は主にこのスラムから発生する。

軍事拠点としての役目も存在するため、都市は城壁で囲まれており、
都市内部も入り組んだ迷路のように設計されている。

都市の中心部には領主の屋敷やカヴェル教団の神殿、
そして高位階級が経営する商会の本店が立ち並ぶ商店街や市場が存在する。

商人は扱う商品の系列によって統合的な「ギルド」を形成しており、
新参者の商人は何処かのギルドに所属しなければならない。

高位階級の腐敗の温床であるため、教団の目が光っていながら、
快楽や富を目的として魔女に取り入る腐敗しきった商人や聖職者も多い。

教団支部や本部が存在する場所であり、当然、魔女や異端者に対して
監視の目が常に光っている。

騎士団が駐留する都市であるため、都市部で騒乱を起こした場合、
即座に駆けつけた騎士団によって騒乱は鎮圧されるだろう。
 

 

 

 1,デザイン様式
基本となるデザイン様式

カヴェル教国および周辺属国における文化様式の主流は、
支配階級においては先鋭的な「バロック様式」、
貴族階級では伝統的な「ゴシック様式」となっており、
それらのデザイン様式の違いが階級を分ける重要なものとなっている。

ただし名前こそゴシック、バロックと銘打たれているが、
PL達の住まう実際の世界の同名文化様式とは一致しない。
おおよそのデザインの基本は踏まえつつも、
現代での「ゴシック・ロリータ」や「ゴス」といった
アレンジ様式の衣裳文化をも内包しており、
また、主流文化の「ゴシック様式」と「バロック様式」が交互に入れ替わり続け、
その度に細部の様式が変化している。
 


階級で指定される様式

聖職者階級に関しては己が属する領地が支配階級の直轄地か、
貴族の領内かによって変化し、領土の君主と同じ様式のものとなる。

現在、高位階級以下においては領土に関わらずゴシック様式までしか許されず、
バロック様式のデザインをとる事は伝統的に許されていない。

奴隷階級に至っては、礼服は一切禁じられ、
簡素な衣服のみが許可されており、さらに革の首輪の着用が義務付けられている。
 


支配者の機先

支配階級は、世界の統治者として
最も時間の先に立たねばならぬという趣旨の元、
次なる時代へと導きつつも変わらぬ栄光の象徴として
保守的な文化様式の洗練に勤しむ事が強く推奨されている。

王族は現在「バロック様式」を主流としているが、
やがては新たな「ゴシック様式」に移り変わり、
それまでの「バロック様式」を貴族階級が受け継いでいくという
特殊な文化循環が行われている。

これは「ルネサンス」と呼ばれ、教皇の交代の度に行われている。
 


カヴェルシンボルの形状と意味

カヴェル教団のシンボルは、
旧教のシンボルである十字を逆さまにした逆十字である。

これは「傾かざる罪の天秤」であり、
教徒の罪と赦しを吊り下げていると教団は語る。

罪とはデミウルゴスという神への不信仰、
旧教の神を祭り続けた罪であり、教団において「人間の原罪」である。

傾かざる天秤は教徒に対して
「奉仕が足りず、未だ赦しは得られない」
という事を突きつけている。

これは、教徒は自身が罪人であると自覚し、
天秤が赦しに傾き罪が軽減され、いつか完全に赦されて救済されるまで
神と教団への奉仕を常に意識せよ、という教えである。

そして逆十字は天秤であると同時に、
カヴェル教による旧教との決別と断罪の表明であり、
旧教を徹底的に廃滅する復讐の意思の象徴である。

旧教のシンボルである十字架は
「この世において最も許されざる邪神の象徴」として貶められており、
逆十字を逆さまに、つまり十字部分を握り手から上に出す持ち方をすれば
邪教徒と見なされる。
 

 

 

 2,階級格差
階級別の人口概要

プルガトリウムに住む人口のうち、約90%が低位階級の農奴であり、
残りの10%に支配階級や貴族階級、聖職者、そして都市の
住人である高位、中位の階級の者が含まれる。

奴隷階級は主に爵位を持たない罪人で構成されており、
農奴のおよそ1%ほどの数が強制労働に就かされている。

常備軍は主に貴族階級の騎士達によって構成されており、
大部分の雑兵は、主に貴族の領民である農奴が徴兵されている。
 


絶対的な階級制度

プルガトリウムの階級差による意識格差は、
まさに異世界が隣合わさっているといっても過言ではなく、
上位の階級の者は自身に劣る階級の者に対し、
「自らが監理してやらねばならぬ愚かな生き物」という認識で接している。

生来の階級ではなく、武功を立てるなどして階級を駆け上った者に
対しての風当たりは並大抵ではなく、時には平然と暗殺すら行われる。

その差別意識は、下層階級の者たちにとって地獄のような重圧を畳み掛け、
より下位の階級を見る事で、劣等感と重圧を紛らわしている。

この階級という絶対的なカースト制度を打ち砕く事は、
「クーデターを成功させる事より難しい」と言われている。

もし階級差を無視する者が現れたなら、
その者は「恥知らずの不相応者」として認識され、
最悪「社会の敵」として制裁を受けるだろう。
 


野心が生む政略結婚

結婚は互いの家系の階級に差があった場合、
低い階級の家は相手の家の階級と同等まで出世できる大きな機会を得る。
これが成立すれば低階級の家はしめたもの、
制限がかかっていたも同然の贅沢や仕事、社交界への進出の機会を得られるようになる。

そのため政略結婚が頻発し、親が子供を上位階級の愛人、
ひいては伴侶とさせる目的で劇場に送り込む事はもはや日常となっている。 
この政略結婚に当然周囲は低階級の家に「身の程知らず」という侮蔑を向け、
上位の家には「下賎の血が交じった」等の風評が流れる。
 

 

  

 3,職の引き継ぎ
受け継がれる階級と役職

この世界においては個人の財産や地位は、
基本的に直系の長男に受け継がれる世襲制となっている。

例外は御曹司が相続に相応しくないと当主が判断した場合に、
別の者に相続させる場合や、聖職者階級や施政者の相続などである。

聖職者階級は教皇が大司祭を、大司祭が司祭を、
司祭が侍祭を選抜していくという選抜制度を取っており、表向きは世襲制ではない。

教国の支配以前に土地を支配していた豪族や王は大貴族となっており、
これら貴族による領土統治は世襲制となっている。
 


地方の自治体事情

村長や町長の施政者は、その領地の支配者の指名後に
縁者が受け継ぐ、選抜と世襲の混合制度となっている。

教国の頂点たる教皇も聖職者の例に漏れず、
現教皇が大司祭の中から後継者を指名する選抜制となっている。

ただし、これら選抜制はほとんどがザルであり、
「偶然選抜した適任者が縁者だった」という事が日常的にまかり通っている。

また、上位階級の中では、庶子や内乱の火種となりかねない問題児を、
低位の階級に貶める、あるいは辺境へと左遷するという事も行われている。
 

  

  

 4,貨幣制度
貨幣の流通

カヴェル教国において、取引は「マモン硬貨」という貨幣が基本として使用されてる。
マモン硬貨には「金貨」「銀貨」「銅貨」の3種類があり、紙幣は全く流通していない。

貨幣価値は「金貨1枚=銀貨5枚」「銀貨1枚=銅貨5枚」「銅貨25枚=金貨1枚」が
基本となっており、中位階級の成人男性一ヶ月の平均収入は金貨10枚前後、
銀貨にして30枚前後となり、1日の生活費は銀貨1枚程となる。

マモン硬貨の名の由来は、カヴェル教団の初代法王マモンの名から取られており、
硬貨の装飾は「双頭の烏」が基本となっている。

システム中における財産点は、これらの貨幣制度を簡略化したものなので、
貨幣の扱いは、あくまで演出上のものとなる。
 


貨幣の鋳造

これらの硬貨の素材はその名のとおり、金、銀、銅の鉱物であり、
教国首都の金融機関にて鋳造され、プルガトリウム中で流通している。

これらの硬貨を大量に鋳造する技術は、プルガトリウムにおいては
カヴェル教国以外に存在せず、周辺国もこの貨幣を使用している。

そのため国貨の価値は揺るぎないのだが、それに驕ってか、
近年は粗悪な貨幣が多く出回り、硬貨の密造も行われている。

これらの悪貨や偽金による詐欺事件も頻繁に起こっており、
マモン硬貨は教国の腐敗の象徴となっている。
 

 

 

 5,衛生事情
水と衛生

水は井戸や川から汲まれたものが主であり。、
大量の水を必要とする入浴の文化はあるにはあるが、
水の大量使用には莫大な費用を支払う必要があり、
大衆においては公衆浴場での入浴が基本となっている。

水道設備は発達した町や都市部にのみ存在し、
小さな集落では、池や川からの水に頼るほかない。

また、水道はあっても汚染水をろ過する装置など存在せず、汚水を垂れ流す
下水道は醜悪な臭いと病気が充満する非常に危険な場所となっている。

こうした不衛生な衛生事情から、都市に住む中位階級においてさえも、
真っ先に流行病の餌食になる危険と隣り合わせとなっている。
 


求められる清掃夫

街の清掃は主に奴隷階級が押し付けられているが、
奴隷階級だけで到底間に合う仕事ではないため、清掃人は常に募集されている。

しかし、その悪辣な衛生事情が蔓延する場所で働く彼らの疲労は並大抵ではなく、
また、発生したガスなどで窒息死する者も続出している。

都市の外観や清潔感を気にするカヴェル教団は、この清掃業にそれなりに高額な
資金を出しているため、過酷な現場であろうと、人が絶える事はない。
もっとも、その金も、賃金として彼らの懐にはいる頃には少額になっているのだが。
 

 

 

 6,食事事情
独占される食材

上記の格差の通り食事も同様で、上位階級では香辛料や果実、
酒、上等の肉を使った豪勢な料理が毎日のように振舞われるが、
低位階級はおろか中位階級ですら料理の質は格段に下がり、
素材をただ切り分けて軽く塩を振り分けた程度の味気ない質素なものとなる。

一般的な民衆の主食はライ麦や小麦で作られた硬いパンと安い豚や山羊の肉であり、
奴隷には売り物にならぬ粗悪な食材が使われた。
 


食器とテーブルマナー

フォークやスプーンなどの洒落た食器で礼儀正しく食べる
テーブルマナーは高位以上の者達のものであり、それ以下の階級では、
大皿に盛り分けた食事を、そのまま各々がナイフなどで切り分けて、
そのまま手掴みで食べるのが常となっている。

この時、食事の分量を欲張ると、他の者から怨みや顰蹙を買い、
ナイフがそのまま凶器となって大事件に発展する事も珍しくはない。
 

 

  

 7,職業軍人
煉獄の軍部情勢

莫大な維持費を必要とする常備軍は現在のプルガトリウムにおいて、
高度な軍事組織としては発達していない。

貴族たちは支配者の義務として騎士団を構成し、
所属する騎士達が戦争において戦闘を行っていたが、
国家の総人口のうちごく僅かな貴族階級が集まった騎士団の
軍隊としての規模は殆どが小さいものだった。

しかし武装がよくても小規模な軍隊は数の暴力に対抗できず、
局地的に勝利しても戦略的に勝利する事は難しかった。

そこで需要が出てきたのが、絶対数の多い身分の低い者達が
武装した戦士を兵士に使用する「傭兵」であった。

騎士団の騎士たちは少ない戦力を整えるため傭兵を徴募し、
それら傭兵を主力の兵士として指揮しする事が戦争の常識となっていた。
 


山賊と化す傭兵

傭兵達は自前で揃えた安物の武具を纏い、騎士に従い戦闘を
行っていたが、雇兵の常として忠誠心は低く、士気は低いままだった。

さらに質の低い兵士といえど数が揃えれば維持費がかさむため、
会戦の度に傭兵団は徴募と解散が繰り返された。

お役御免の間の傭兵は、各地の散発的な戦闘に参加するために
放浪を繰り返し、一箇所にとどまって農民として生活する事も難しく、
結果、傭兵たちが山賊化し、敵国の領土に入り込み簒奪を繰り返すだけでなく、
雇われたはずの領内で暴れまわる事すらあった。

このように山賊の強襲を受けて被害にあった村では、
立ち向かった男は尽く殺され、残りは奴隷として売り飛ばされる事となる。

カヴェル教国がプルガトリウムを支配してからこの兆候は一層激しくなり、
山賊や反乱、その討伐による戦火に平民は苦しめられている。

そして財産や家族を失った貧民がさらに山賊化し、組織的な革命軍に
成長する事もあり、未だプルガトリウムの各地が戦火に燃えている。
 


騎士と傭兵の末路
戦争で捕虜とした騎士はそのまま殺害するより、
高額の身代金と引換に開放した方が儲かるために丁重に扱われる。

しかし、傭兵には身代金を支払える財産が無いため、
傭兵の捕虜は奴隷となるか、その場で殺害され、
死体はそのまま野ざらしとなるのが大半である。
 

銃は剣よりも強し

プルガトリウムには既にフリントロック式の銃が発明され実用化されているが、
主要な軍勢である騎士団や傭兵団の軍装に基本として銃は配備されていない。

これは銃が民兵を主とする反乱軍に渡り、鎧に身を包んだ騎士達が打倒される事を
権力者が警戒しているためであり、銃の製造や販売においては教会が厳格に管理している。
これにより銃は高い身分、表向きには貴族と聖職者のみが所有を許されており、
故に銃は剣と並ぶ権威を有し、身分不相応な者の銃の所持は厳罰に処せられる。例外として「ラッパ銃」は高位階級も所持を容認されるが、これは銃性能が比較的劣悪だからである。

とはいえ腐敗甚だしい教国にあっては銃の横流し品も当然存在し、
時には暴走する貴族による銃の密造も稀ながら行われ、
それが反体制勢力や犯罪組織に渡る事は必然と言える。
 

 

 8,性産業
弾圧される性風俗

カヴェル教団の厳格な教義により、
性的風俗はその多くが弾圧を受け規制されている。

しかし、全ての性風俗を禁止する事は不可能であり、
それどころか弾圧によって裏社会がより連携を強め、余計に活発になっている。

さらに、教団による性風俗弾圧にしても、実際は売春の収益を独占するために、
貴族管理の公営娼館以外を摘発するという、腐敗からの規制である。

カヴェル教団がプルガトリウムを支配する以前は、
娼館だけでなく、旅館や公衆浴場、そして一部の共同住宅でも売春が行われていた。
しかし、現在では売春が許可されているのは、
貴族階級から経営許可を得た、香水ギルドに所属している娼館のみとなっている。
 


香水ギルドと娼婦の関係

香水は隠語で娼婦を表し、娼婦ギルドとそのまま登録するのは
社会通念上好ましくないと判断され、このような名称となっている。

その隠語通りに香水ギルドは売春を専門業とする商人が集い、
己の所有する商店や共同住宅を娼館として娼婦を集め利益を得ている。

勿論、香水も売春を斡旋するために必要な小道具であるため、
香水だけでなく化粧品全般を取り扱う商店もこの香水ギルドの所属となる。
 


香水ギルドの娼婦たち

娼婦は自主的に娼館に登録するのがもっぱらであるが、
拉致された、人身売買で買われて娼婦に落とされた者も少なくない。

そして、強制的に娼婦とされた者の多くは、自主的に
娼婦となった者達から恰好のストレスの捌け口として目をつけられ、
場合によっては当人がパニックからの愚痴を周囲に撒き散らしてしまい、
他の娼婦から顰蹙を買い虐待を受ける事も多い。
 


綺麗過ぎる思想が生んだ背徳
かつて旅先や仕事帰りでの軽い性風俗として
人気を博した混浴の公衆浴場は、風紀を乱すとされて男女別に柵が設けられた。
そして、共同住宅の住人同士が、そのまま臨時の娼婦や男娼となって
性的行為を行う頽廃アパートも同じく規制を受け、多くが正規の娼館となった。

しかし、非合法の娼館も当然のように溢れかえり、
皮肉にも貴族や大商人など、取り締まる側が秘密裏に経営するものが多い。
それら非合法な娼館では、さらに悲惨な光景が広がっており、
これは正規の娼館経営者すらも忌み嫌う程である。

性質の悪い事に権力者の後ろ盾を得ている裏娼館は取り潰しを受ける事もなく、
その中では、娼婦達の嘆きや悲鳴が常に渦巻いている。
 

ブルジョアの腐敗した放蕩

この他にも私的なハーレムを持つ者も多く、
特に貴族階級以上の者は必ずと言っていいほどにハーレムを持っている。

それらの多くは「保護者と客分」、あるいは「養父(養母)と養子」という
隠れ蓑の裏側で、背徳と放蕩の日々を送っている。

ハーレムの寵姫は、大半が劇場の踊り子や役者出身であり、
その劇場は、後援者を求める野心を持った低階級と
悪趣味な上位階級を繋ぐ場所として認知されている。
他には、腐敗した聖職者が孤児院や修道院を私物化し、
哀れな孤児や修道女に虐待を行っている。

中にはこのハーレムが趣味にとどまらず、
同好の鬼畜から金を貰い、実質的な裏の娼館となっている所もあり、
ハーレムや裏娼館に、家族や恋人を奪われた者達が、
上位階級に対して激しい敵意を向ける強い要因となっている。
 

 

 

 9,一般的な倫理観
穢れを忌避する穢れた者達

厳格な禁欲的生活による清貧が至高の美徳とされており、
これを口実に、施政者の低位階級への重税の取り立てが正当化されている。

性的倫理に関しては、乱交や不倫は非常に穢らわしい悪徳とされ、
近親相姦や獣姦、同性愛は悪徳を通り越し邪悪そのものとされている。

それ故に、社会では教育を受ければ紳士淑女たる振る舞いを求められるが、
欲望溢れる生物にとって、それは慇懃無礼に容易く繋がってしまい、
親切な態度を隠れ蓑に、幸福で純朴な者を言葉巧みにだまくらかし、
己の領域に引き込んだ瞬間に本性を顕にする者も珍しくない。

むしろ、腐敗したカヴェル教国ではそれが当然となり、格差と同様、
荘厳な光景の内側には、陰湿で陰険な背徳と悪徳が蔓延っている。

それらの悪徳は発覚すれば重罪は免れず、運が悪い者は冤罪を受け、
魔女という異端者として処刑台に送られる事となる。
 


出る杭は打たれる
国民は通常、階級の順列を守り、国民は生まれ持った階級で育ち、
同じ階級の者と結婚し、その階級のまま生を終える事が通例となっている。

ただし隣接する階級は様々な繋がりがあるため、
自身や家族の階級が上昇する場合は1段階の上昇までであれば見逃される事も多い。

例えば中位階級の者が高位階級に出世する事は比較的多いが、
それを超えて出世する者は極稀であり、非常に強い反発を得る。
 
 

 

 10,教国の亀裂
欺瞞の天国

カヴェル教国の母体であるカヴェル教団は、
徹底した選民思想、清貧や自己犠牲を美徳とする思想教育を行っている。

支配階級である教皇は勿論、その配下の大貴族は
全て国教のカヴェル教団に属しており、その他の宗教を信仰する者や、
それらの施政者に逆らう反抗思想の持ち主は異端者として扱われ、社会的制裁を受ける。

美麗で荘厳なデザイン様式を重視する教団は芸術を愛する者達に
強い影響を与え、その華麗さは他国をも魅了している。
 


膨れ上がる内戦の気配

上記にあるように反体制と見なされた芸術や音楽、
思想は全て弾圧されるため、自由主義者から潜在的な憎しみを買っている。

また、腐敗した施政者や聖職者からの搾取や暴行などの
傍若無人な振る舞いに反感を覚えるものは大多数であり、
機会があれば教国打倒を目指す反乱軍に入る事を躊躇しない
血気盛んな若者たちも存在し、日に日にその限界点は近づいている。

純粋に教団の教義に惹かれて聖職者を目指す純朴な者も存在するが、
その多くは天に見放され、腐敗した聖職者の恰好の餌食となる。
 

 

  

 11,怖れられる魔女
魔女は人にあらず

魔女は神聖なる存在を堕落させる退廃の使者であり、
それは当の魔女達にとっても同一の見解である。

基本的に表社会に置いて魔女とは処罰されるべき汚れた存在であり、
人間ではなく悪魔の使い、家畜以下の存在とされ、
魔女の烙印を教団から直接刻まれた場合、その者の社会的生命は
そこで絶たれたも同然であり、あらゆる権利が剥奪される。

それこそ殴る蹴るの暴行を行っても罪にはならず、
殺害に至っても社会的に罰せられる事は一切ない。

それ故、通常の民衆であれば魔女の仲間とみなされる事を恐れて
近づこうともしないし、保身のために教団へ通報する事も極普通である。
 


敵の敵は魔女

教団、ひいては教国の統治に対する怒りと憎しみから、
魔女たちの事を「革命の使者」として崇める者も多く存在する。

それら魔女の親派のうち、実際に魔女になる事を望む者達は、
魔女を助け、魔女から伝えられる魔王の教義に酔倒するのである。

基本的に教国の首都から離れる程、魔女の崇拝者は増加傾向にあり、
首都に近いほど親派は数を減らし教団に通報されやすくなる。
 

 
魔術の行使者

魔女とは、サバトに属し、魔女の印を持ち、魔術を行使する人間を総称するもので、
性別によっての別称はなく、男性であっても魔女となる。

サバトに属さず、魔女の印も持たず、魔術書などによって
魔術を行使する者は魔術師、あるいは魔道士と呼ばれる。

これら魔術師の属する組織として有名なものが、
「白鴉の空教会」や、魔女のいない「黒羊の夢教団」という民間組織であるが、
世間的にはどちらも危険なカルト集団と扱われ、魔女と同様に恐れられる。

ただし、魔術師は教団に魔王崇拝でないと判断された場合、
恩赦と引換に知識と経験を求められ、教団に従属する事もある。
こうして教団に属した魔術師は、異端査問官や魔狩人として活動している。
 

 

  

 12,楽園の残骸
楽園の残滓

プルガトリウムは古き世界の上にある新しき世界であり、
処々にその古き世界の面影を見る事ができる。

今はもう膨大な時の流れによって見る影もないが、
都市部の下水道は一部が楽園があった時代に残る遺産であり、
下水道の汚れた水路を辿っていくと、倒壊し、
瓦礫と錆にまみれた鉄の城が残っており、かつての栄華を彷彿とさせる。

これは穢れた水を聖水に変化させる大いなる神殿の遺跡と見られており、
他にも様々な古代遺跡が存在する。
 


古代遺跡

土木工事を行った際に時折、鉄で創られた馬車の荷台の
ようなものや、巨大な鉄の鳥の化石の一部が発見される事がある。

これらは馬もなく奴隷も使わず高速で走り、そして空を飛んだと謳われているが、
今はもうどのような原理で動いていたかも定かではない。

楽園の残骸は都市部を離れた場所にもいくつか見受けられるが、
多くが最早原型も留めぬ廃墟であり、非常に危険な場所となっている。

また、遺跡から笛の音が聞こえたという噂も流れ、
近づいた者は無残な死体となって発見されるという怪談も溢れている。

これらの風評もあり、楽園の巨大な廃墟の
不気味さと神秘性は人々を圧倒し、一部の好事家を魅了しているが、
教団は楽園の時代を「古き神という悪魔を生んだ暗黒時代」と
扱っているため、遺跡の保存や復旧は全く行われていない。
 


天空の道と大空洞

上記のようにプルガトリウムには楽園の時代の残骸が残っているが、
当時の通行の要となったインフラが健在な場所も存在する。

それは天にそびえる巨大な石柱に支えられた巨大な橋であり、
または地下や山を貫く巨大な通路でもある。

これらは、かつての高速道路が「天空の道」、
海底トンネルや大トンネルが「大空洞」という通称の
遺跡となったものであり、崩落の危険性は常にあるものの、
その利便性によって行商人や軍隊の重要な生命線として活用されている。
 


考古学の進まぬ研究

楽園の時代の遺物の復元や復旧はプルガトリウム、
そして世界全域に存在する学者や技術者の使命となっている。

そのため廃墟となった遺跡からサンプルを持ち出し研究しているが、
そのサンプルがいったい何の金属で出来ているのかすらわからず、
当時の日記や書類を探そうにも、住宅となっていたであろう廃墟には
何故かそういう類のものは見つからず、風化したものすらなかった。

当時の人間が文明の必須である書類や絵画など一切使用せず、
どのように文面でやり取りを行っていたかは大きな謎となっている。
 


ペテンで金を生む錬金術師

しかしどの時代にもペテン師はいるもので、
特にこの煉獄を自称する地域においては、より活発に動いている。
ペテン師達はガラクタを楽園の遺物と触れ込んで金持ちに持ち込み、
復旧の目処があるとして豪胆にも援助金を要求したのである。

もちろん詐欺そのものなのだが、詐欺師達は巧妙に
間の抜けた好事家を選びぬき、まんまと遊びながら大金をせしめているのである。

彼ら詐欺師は自らを錬金術師と名乗り、痺れを切らしたパトロンが
怒鳴りこんでくる頃合いを見計らって姿をくらますのである。

このため、錬金術師は詐欺師の代名詞なのだが、古代の浪漫と
楽園の技術に目が眩んだ金持ちはあとを絶たず、被害は減る様子がない。
 


レムナント

かつて都市として繁栄していたであろう
巨大な規模の集落の残骸、放棄された地域を指す。

特に特定の地名とした場合、「エデンズゲート」という寂れた
宿場町に最も近い古代遺跡を指す事が多い。

そこでは、倒壊した巨大な古代遺跡の周囲を囲むように
腐り落ちた古びた家々がそれぞれ墓標のように立ち並んでいる。

この、今は見る影もない大規模な集落を築いたのは、
デミウルゴス以前の古き神を"真なる神"として崇め祀る信者達とされ、
袂を分かった信者たちがやがて「黒羊の夢教団」と
「白鴉の夢教団」という秘密組織の基礎となったという説も存在する。

レムナントに入り込んだ者は不可思議な迷宮に囚われ
悲惨な最期を遂げるという噂が流れており、禁忌の廃都として恐れられている。
 

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