サンプルシナリオ


 「 ワインの味は血と陰謀 」


  サンプルシナリオ概要

  オープニングフェイズ ミドルフェイズ クライマックスフェイズ エンディングフェイズ



 サンプルシナリオ概要

!! 警告 !!

“管理者”ダンタリアン

 「お待ちなさい、矮小なる人の子よ。
  この禁書「サンプルシナリオ 〜 ワインの味は血と陰謀 〜」は、
  デカダンスRPGのGMを試みる敬虔な魔女のみが閲覧を許されています。

  貴方はGMを目指すものですか?
  そうであるならば、このまま本を開きなさい。
  そうでないのならば、本を閉じ、今すぐ禁書室から立ち去りなさい。
  でなければ、知りすぎる地獄を貴方は身を持って味わう事となるでしょうから。

  ……心の準備はよろしいですか?

  では、闇と退廃のゲームを、存分にお楽しみなさい。戻れなくなるまで……。
 


シナリオについて

このシナリオはデカダンスRPGの世界における重要な要素、
商人や聖職者という権力者の腐敗とその脅威に晒される被害者、
そしてその騒動にて漁夫の利を目論む黒山羊の命を受けて
現場に介入する魔女、という基本構造を体感するシナリオになっている。

魔女は迂闊に魔術を使うと目撃者により通報され、
異端査問官が現れて魔女を捕縛しようと活動を始める。
そうなれば黒山羊からの使命を果たすどころではないために、
魔術を使う際はできうる限り人目を避け、目撃されたなら口封じを行い、
時には殺人という非道に手を染めなければならないが、
保身のために起こした事件がさらに監視の目を増やす事もある。

そうした制約の中、魔女は自身が取り得るあらゆる手段を用いて、
自らも生き残りつつ黒山羊からの使命を果たさなければならない。
このシナリオに挑むPCは、魔女が如何なるものかを身をもって知る事となるだろう。
 


あらすじ

PCは全員が魔女である。PCは黒山羊の“統率者”オセから招集を受け、
リグールという宿場町におけるワイン商人の抗争に介入する事を命じられる。

オセはツァン商会というワイン商と相互支援の関係にあり、
ツァン商会は今、エッティゴ商会と教会の陰謀によって滅びの危機を迎えている。

ツァン商会の壊滅はオセの勢力低下に直結してしまう。
魔女はツァン商会の現当主オミール=ツァンを苦境より救い、
エッティゴ商会当主のプギーリッヒを報復として粛清し、
あわよくば教会を利用してでも、オセの勢力低下をなんとしても防がなければならない。
 


シナリオスペック

推奨PC烙印レベル : 合計1

推奨PL人数      : 3人

想定プレイ時間    : 6時間
 


推奨サンプルキャラクターと役割

【 憤怒の剣闘士 】

 このシナリオには高確率で戦闘が含まれる。
 憤怒の剣闘士の魔術は戦闘において大いに助けとなるだろう。

【 傲慢なる淑女 】

 このシナリオにはあるNPCを懐柔する事で危険を回避する展開が含まれる。
 傲慢なる淑女の魔術は交渉において大いに助けとなるだろう。

【 強欲なる貧者 】

 このシナリオには警護厳しい家屋へ忍びこむ展開が含まれる。
 強欲なる貧者の魔術は潜入において大いに助けとなるだろう。
 

 


 シナリオの舞台と主要NPC

 ◎ リグール (規模:宿場町 通報時の幸運修正:+10 特産:ワイン 物流:3)
特産ワインで名を馳せる新興の宿場町。いま好景気の最中にあり、今後の発展の期待も持たれている。しかしその裏ではツァン商会とエッティゴ商会の抗争と、漁夫の利を目論む教会の陰謀が渦巻きいており、暗雲が立ち込めている。
 要人NPC
“覚悟の女傑” オミール=ツァン 
 「どんな手段を使ってでも、私は父から受け継いだこの商会を守ってみせる。
素性

性別:女/年齢:22歳/階級:高位階級/境遇:指導者+商人

原罪

憤怒

長所/短所

リアリスト/腹黒

魅力

絶世の美貌/映える礼服/溢れるカリスマ

性癖

惰眠/売買/飲酒

概要

凛とした風貌に長いブロンドヘアが映える、
リグールの経済の一角を担うツァン商会現当主。
男勝りのハッキリとした物言いの迫力は商人というよりも騎士のように思わせる。

ワインによって一代で財を成した父オットーの死によりツァン商会を継承し、
それによってリグール産業ギルド幹部の座をも継承した。
その商才は父譲りの敏腕で、女商人という偏見を覆す豪腕でもある。
ワインを愛した父同様に自らもワインを嗜み、ソムリエとしても確かな舌を持つ。

しかし当主となってからの多忙と父を失った傷心の心労は確実に彼女を蝕み、
そこへエッティゴ商会との本格的な抗争の危機がそれに拍車をかけており、
嗜好のワインは今や睡眠薬の代用となっている。


“過ぎた強欲” プギーリッヒ=エッティゴ 
 ええい、忌々しいツァンの売女め!女風情がギルド幹部などふざけておる!
素性

性別男/年齢:47歳/階級:高位階級/境遇:商人

原罪

強欲

長所/短所

腹黒/利己的

魅力

金持ちキャラ/病的な影

性癖

奸計/財産/快楽

概要

不健康に肥え太った、醜悪な成金という風貌そのままの中年男性。
大衆向けのワインを扱うエッティゴ商会の当主である。

商売敵を強引な手法、時には明らかな犯罪行為によって排除し続け、
それを多額の賄賂で法の追求をかわし続けた、生粋の悪徳商人である。
商品のワインは粗製濫造もいいところの最低品質であり、
それを相手を選ばず薄利多売で商うことで利益を得ている。

品質を重視するツァン商会とは犬猿の中であり、
顧客層の違いからこれまで正面衝突は避けられていたものの、
オットーが死去し娘のオミールが商会とギルド幹部の座を継承してからは、
ツァン商会への憎しみを憚ることなくぶつけ始めている。


“生き馬の目を抜く” ユバ=ヘーブリッヒ 
 狐と狸がよく吠えている。さて、優れた猟師はどちらを狙うべきかな?
素性

性別男/年齢:42歳/階級:聖職者/境遇:指導者+使徒

原罪

傲慢

長所/短所

腹黒/利己的

魅力

映える修道服/堂々とした態度

性癖

睥睨/出世/財産

概要

ルグールの聖堂を預かる聖職者にして法の番人。
長身細身の体型だが、王者のような佇まいと
似合いのカソックによって、確かな威厳を醸し出している。

彼の関心はいかに好景気の旨味を独占出来るか、それによる利益を首都へ
どれほど送金すれば己の出世が早まるかという自己中心的なもので満ちている。
その利己的な野望は悪徳商人の利用を当然とし、
さらに上回る利益あればそれを切り捨てる事も厭わぬ冷徹非情そのものである。

現在エッティゴ商会の後援者として動いており、ツァン商会との抗争に関して、
プギーリッヒとオミールの利用価値を値踏みしている。

  


 PCの周辺環境について

活動に必要な最低階級とPC間関係

舞台となる宿場町は高位階級が主役となり、
このシナリオにおいても中心となるのは高位階級以上のNPCである。
高位階級のNPCに不信がられず面会するには同位以上、
最低でも一段階低い中位階級である事が望ましい。

このため、後ろめたい事をするのでなければ、
低位階級である「憤怒の剣闘士」と「強欲の貧者」は、
高位階級である「傲慢なる淑女」の従者という名目で集団行動を取る事が推奨される。

その際、互いの人間関係はできうる限り好意的なものであれば望ましいので、
互いは既知の関係であり、相互に思い思いの印象を抱いていると設定する事を推奨する。
関係性がなかなか決まらない時は「関係チャート」が役に立つだろう。
 


PC拠点の設定について

PCが自宅を置く拠点はシナリオ舞台の宿場町リグールに在る事を推奨する。
こうすれば旅費の工面も難しい低位階級以下のPCが自宅から遠く離れた場所まで
遠征しているという不自然を軽減できるだろうし、
高位階級のPCを主人とする従者一行であるとするなら、
高位階級と低位階級が共に行動するのはより自然な事となる。

また、夜露を凌ぐに金のかからぬ安全な自宅という聖域を得る事は、
反社会的な存在である魔女において重要なものとなるだろうから。
 


 



 PCの介入動機について

PCとNPCが既知の関係であり、そこで様々な因縁があれば、
PCは使命に向かう理由がただ黒山羊に命じられただけという他に、
人間関係に絡んだ感情的な動機を得て行動指針を明確にする事ができる。
また動機の理由付けはキャラクターの立ち位置も誘導し、
階級によってPCの活動幅が大きく変わるこのシステムにおいて、
GMのシナリオ管理負担の軽減を図る事ができる。

以下は今シナリオにおけるPCの動機と社会的立ち位置の提示であり、
各フェイズ・シーンはこの項目の設定に準じて進行していくが、
PCからNPCの人間関係についてはGMと相談の上で設定しなおしても良い。


【 憤怒の剣闘士 】 介入動機:報復  NPC関係:オミールへ【 貸借 】

ツァン商会のオミールは剣闘士である君の良き後援者である。
剣闘士という身分の君に対してオミールは誠実に対応し、決して侮蔑の視線を向けなかった。
何かあれば、剣闘士を使い捨てとしか思わない雇用主とは比較にならぬ対応をしてくれた。

悪意渦巻くこの世界、品質を重視するワイン商の矜持と大商人のプライドもあるのだろうが、
彼女の手厚い誠実さは君に確かな恩義を与えていたし、
試合の度に必ず差し入れられるワインは傷つく君に元気を与えていた。

何故自分にここまでしてくれるのか尋ねた時、彼女は、
「優れた技を有しながら厳しいままの環境に身を置く君の戦いを見ていると、
 私も闘志が湧いてくる。決して負けてなるものか、と。
 君の勝利は私の勝利であり、君の敗北は私の敗北そのものだ」と言ってくれた。

それだけに昨今の先代を喪ったツァン商会への風当たり、
ひいてはオミールへの侮辱は君にとって決して許せるものではなかったし、
闘技場に来る彼女の顔に疲労の影が濃くなっていくのが見て取れて、やるせなかった。
“統率者オセ”からの使命はその義憤を昂ぶらせると共に義憤の開放の期待をもたらし、
それは君が憤怒の魔女である所以を自覚する事となるだろう。
 


【 傲慢なる淑女 】 介入動機:利用  NPC関係:プギーリッヒへ【 敵意 】

エッティゴ商会のプギーリッヒは君にとって目の上のコブである。

機を見るに敏、価値あるものを見定める彗眼を有する君は
この宿場町の将来性に目をつけ、居を構えた。
特産品の高級ワインは重要な贈呈品となるし、今のうちから
ここに根を張り地盤を整えておけば後々社交界においても有利になるだろうから。

しかし今、君が目をかけていたワインの名家ツァン商会は風前の灯となり、
密造酒もかくやという酷い安酒を商うエッティゴ商会がでしゃばり始めているではないか。
このままではワインを特産とするこの町の発展性は閉ざされてしまう。
屋敷を構えるために莫大な私財も消費してしまった。
立身出世どころか、遠くない未来の姿であるゴーストタウンの道連れにされてしまう。
なんとしてもツァン商会には生き残ってもらい、エッティゴ商会は必ず潰さねばならない。

部下のチンピラに偉そうに指示をするプギーリッヒの太鼓腹を見る度に、
君はツァン商会のワインの味と眼前の商会のワインの味を思い出し、
月とスッポンと比較するのも烏滸がましいその格差から、
生き残るべき商会はどちらかを改めて認識するのである。

そこへ飛び込んできた“統率者”オセからの使命は、正に渡りに船。
君は傲慢なる魔女として、野望を阻もうとする存在を決して許してはおけないのだ。
 


【 強欲の貧者 】 介入動機:命令  NPC関係:ユバへ【 対抗 】

君は元々黒山羊から斥候としてこの町に送られていた魔女である。

君の属するサバトの主人は“統率者”オセであり、
主人はこの町の支配を図って君を始めとする工作員を多数送り込んでいた。
この町の活動において君はツァン商会に連なる商店に大いに世話になっている。
それはツァン商会の先代当主オットーが“統率者”オセを主人とする魔女だったからだ。
オットーはこの町に魔女のための後援者を密かに配置し、
カヴェル教団とそれに媚びを売る腰巾着の動きを監視していたのだ。

しかしオットーが病死し、娘のオミールが継承してから流れは変わった。
オットーはオミールに魔女という秘密を打ち明けずに死んでしまったのだ。
蘇生しようにもオットーは衆人環視の中で心臓の発作で突然死してしまい、
検死で魔女の烙印が見つかるのを防ぐために同志の担当医がその場で死亡認定する他なく、
結局オットーは永遠に墓場に潜る事となり、魔女の情報網は危機に陥ってしまった。

現在、かろうじて先代から繋がり合っているコネクションで動いてはいるが、
当主であるオミールの支援がなければ本調子とはいかない。
さらにツァン商会はエッティゴ商会に抗争を吹っかけられ、
その背後には調査の妨害に熱心な教団の司祭の影がちらついている。
このままではツァン商会は巨大な権力の大口に飲まれてしまうだろう。

君が主人にそれを報告すると、主人は君に新たな使命を与えた。
ツァン商会を他の魔女と共に救済せよ、と。
 

 



 オープニングフェイズ

 シーン1 : 悩みの匂い
シーン説明

憤怒の剣闘士の勝利祝いにツァン商会当主オミールが面会に来るシーン。
オミールの好感的な人柄と、彼女が悩みと疲労の渦中にある事を説明する。

GMは、シーン中にPCの性癖に沿う状況があれば
PLに「性癖充足」宣言を促すとよい。
性癖充足は性癖1種につき1フェイズに1回づつ宣言できる。

登場PC

憤怒の剣闘士

描写内容

場所は闘技場。
憤怒の剣闘士の持つ武器は血に濡れ、足元には運なき敗北者が倒れている。
勝利者として声援と罵声が浴びせられる中、君は控室へと戻っていく。

するとそこには君の後援者であるツァン商会の現当主、
オミールが勝利祝いにワインを直接届けに来てくれていた。
君はオミールから労いを受けるが、彼女には明らかな疲労が浮かんでいた。
君がその事を尋ねるならば、オミールは大丈夫と言ってはぐらかしてくる。

話そこそこに商館へ戻る彼女を見送る君の背後に闇の世界の従者が現れる。
昼の決闘とは違う、血塗られた夜がやってくるのだ。

憤怒の剣闘士はオミールからの差し入れとして
「消耗品:高級酒」を無対価で入手する。
これは今飲んでもよいし、後にとっておいても良いが、
アフタープレイ時には無くなってしまうので注意する事。

NPCセリフ

オミール
 「いい試合だった。相変わらず気持ちのいい戦い方だな。」

オミール
 「ん、そうか?この所眠る時間も惜しいという生活はしているがね。」

オミール
 「何、この程度は大丈夫だ。それに、私も負けてなどいられないからな。」

ブラッキー
 「PC様、ご主人様がお呼びです。日が沈む時、我らの家で。」


 シーン2 : 台無しにされた上天気
シーン説明

傲慢なる淑女が世情調査のために街を散歩するシーン。
エッティゴ商会の当主プギーリッヒの人柄がいかにもな悪徳商人であり、
良からぬ企みをしている事を説明する。

登場PC

傲慢なる淑女

描写内容

場所はリグールの商業区域の大通りである。
景気の良さから頻繁に馬車が行き交い、露天や商店が賑わっている。

傲慢なる淑女は、この町の景気の良さと
将来性の高さを確認するために通りを散策している。
ある一角に差し掛かった時、傲慢なる淑女は
ワイン商店からの耳障りな罵倒を耳にする。

声の主はエッティゴ商会当主のプギーリッヒであり、
配下の使い走りに大量のワインを馬車に積ませていた。
配下はワインを雑に扱い、瓶がぶつかりあう音が頻繁に響いてくるが、
プギーリッヒはそのれよりも積み込みの遅れに苛立っているようだった。
罵倒の鞭を浴びせられ続けた使い走りは急いで馬車を走らせ去っていく。

侮辱とともにワインの出荷を見送ったプギーリッヒは、
今度はその矛先をその場にいないツァン商会のオミールへと向ける。
そしてオミールのギルド幹部の座と資産に嫉妬する独り言と、
商会潰しの意思をはっきり含む呟きと共に商店へと入っていく。

プギーリッヒの醜悪さを目の当たりにした傲慢なる淑女に、
前から走ってきた馬車が横付けしてくる。
馬車の御者はブラッキーであり、伝言を伝えるとそのまま走り去っていく。

GMはシーン中、「飲食店:露天」の利用と「食事を取る」宣言を促してもよい。
露天を利用し、宣言したならば傲慢なる淑女はリビドーが+2D10される。

NPCセリフ

プギーリッヒ
 「さっさと馬車に積み込めノロマ!納品が遅れるだろう!」

プギーリッヒ
 「安酒未満の価値しかないクズ共め!
  あぁイライラする。それもこれも、あの雌狐のせいだ!」

プギーリッヒ
 「莫大な財を生むギルド幹部と商会長の椅子はあの女には荷が重い。
  どうにかして代わってやらんとなぁ、ぷぎっひっひ!」

ブラッキー
 「PC様、ご主人様がお呼びです。日が沈む時、我らの家で。」


 シーン3 : 豚小屋観察
シーン説明

強欲なる貧者が“統率者”オセの命を受けてエッティゴ商会を監視しているシーン。プギーリッヒがカヴェル教団の司祭ユバを屋敷に招いて密談を匂わせ、
この二人がよからぬ癒着関係にある事を説明する。

登場PC

強欲なる貧者

描写内容

場所はエッティゴ商会当主プギーリッヒの屋敷付近である。
強欲なる貧者は“統率者”オセの命によりプギーリッヒを監視している。
どのように監視しているかはPCの任意である。
なお、協力者から「非消耗品:キーピック」の差し入れを任意で受けられる。
これはアフタープレイに失われるので注意する事。

この日プギーリッヒは日が傾き始める頃に商店より帰宅している。
それから数時間後、日も暮れる頃合いに屋敷の前に馬車が止まり、
馬車からは3人の用心棒と共に司祭ユバ=ヘーブリッヒが降りてくる。
屋敷からはプギーリッヒが慌て飛び出て、媚びた笑顔と態度でユバを出迎える。

ユバは周囲を警戒しており、強欲の貧者が特に隠れていなければ、
強欲の貧者とユバは目が合ってしまう。
しかしユバは強欲の貧者に明らかな侮蔑の視線を向けるに留まり、
侮辱を吐くとプギーリッヒに小言を言いながら屋敷へと入っていく。
その小言の内容は明らかに斥候を警戒したものであり、
この会合が良からぬものである事を十分に予想させるものであった。
ユバが連れてきた用心棒は強欲の貧者を見ると
さっさと屋敷から離れるように威嚇してくる。

強欲の貧者が屋敷から離れた時、路地裏から
みすぼらしい姿のブラッキーが現れる。
ブラッキーは“統率者”オセからの伝言を伝え、
日が暮れた空に月が出ている事を指で示すのであった。

NPCセリフ

プギーリッヒ
 「これはユバ様、ささどうぞ!極上の酒を用意してあります、ぷぎっひっひ!」

ユバ
 「虫よけはちゃんとしているだろうな?近頃は小蝿共が鬱陶しい。」

ユバ
 「何を見ている、下賤な物貰いめが。」

ブラッキー
 「PC様、ご主人様がお待ちになってやがりますだよ。」


 シーン4 : 統率者万歳
シーン説明

魔女たちが“統率者”オセの王座に招集され、
今シナリオにて達成すべき使命を説明されるシーン。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者


描写内容

魔女たちは、荘厳豪奢な王城の謁見の間にいる。
その王座に座る者こそ、傲慢の黒山羊“統率者”オセだ。

オセは魔女たちに、リグール産業ギルド元幹部にして
ツァン商会の先代当主オットーは魔女であり、
オットーが一代で財を成せたのは彼の手腕だけでなく、
我ら魔王の軍勢が保護していたからだと説明する。
そして商会を隠れ蓑にリグール征服のための工作を行っていた事も。

しかしオットーは蘇生機会なきまま急死し、
娘のオミールは父が魔女であった事を知らずに
商会とギルド幹部の座を継承してしまった事、
その上継承の混乱の最中に、敵対するエッティゴ商会が
ツァン商会の崩壊を目論んでいるという情報を得た事を語る。
このままではオセのサバトは工作のための聖域を失う事となり、
リグールの征服は大きくつまずいてしまうとオセは危惧している。

オセは魔女たちに命ずる。オミールを魔女の後援者に引きずり込み、
エッティゴ商会を壊滅させ、ツァン商会を保持せよ、と。

そこまで説明すると、オセは魔女たちに「紹介状」と「豹の鍵」を渡す。
紹介状はオミールと面会するために必要で、
「豹の鍵」はオミールを懐柔するために必要だとオセは言う。
これらは「非消耗品/重量0」の所持品として扱う。

そしてオセは「カヴン」の結成を宣言し、
魔女たちはオセを盟主とするカヴンを結成する事となる。
カヴンの司祭長は魔女たちの任意で決定される。

話とカヴン結成の儀式が終わると
オセは魔女たちをサバトハウスのロビーへと転移させる。
魔女たちは使命に備えて今夜は休む事となる。

PCはこの休息で「睡眠をとる」を宣言する事でリビドーを+2D10できる。
この時、シーン2において傲慢なる淑女が運悪く「軽い病気」となっていた場合、
休息を取る事で「24時間安静に過ごした」と扱っても良い。

このシーン終了時にGMはオープニングフェイズの終了を宣言し、
ミドルフェイズの開始を宣言する。
GMは終了宣言の前に、PCにリビドーを変動させる行動を取るか聞くとよい。

NPCセリフ

オセ
 「ツァン商会は余の領土であり、次なる征服の足がかりである。
  余の領土の簒奪を目論む痴れ者は、王錫にて叩き伏せねばならぬ。」

オセ
 「美しき夜を過ごすには相応のワインと、そのためのソムリエが必要だ。
  オミールを我が陣営に引き入れ、食えぬ豚たるプギーリッヒを廃棄せよ。」

オセ
 「まずはオミールの元へ行き、ツァン商会の真の主人を伝えるのだ。
  これを持ってゆくがよい。よき手綱となろう。」

オセ
 「カヴンの力、ワルプルギスの夜は獲物を逃さぬ至高の狩場だ。
  そして、同時に全ての魂を蝕む檻という事を忘れるでないぞ。」

オセ
 「余は寛大である。お前たちの失敗は三度まで許されよう。」

オセ
 「今宵は休め。吉報を期待しているぞ、余の子らよ。」

 



 ミドルフェイズ

 シーン1 : くじかれる出鼻
シーン説明

魔女たちがオミールとの面会のために集って町を練り歩くシーン。
物流3の範囲内でPCは買い物や施設の利用が行える。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

オミールの商館の位置は伝えられており全員が知っているとする。
しかしツァン商会の商館に向かうと、受付から面会の予約を
取っていないとしてあしらわれる。
予約を取ろうにも次の予約は一月後まで詰まっているという。
「紹介状」を受付に渡すと、受付に変わってオミールの執事が対応してくれる。
しかし執事はオミールは日中は商館の仕事で手が離せず、
余裕の取れる夜に再度訪ねて欲しいと言われる。

この空いた時間に魔女たちは物流3の範囲内で
買い物や施設の利用を行える他、情報収集を行える。
情報収集は「シーン2:料理の下準備」で行う。

NPCセリフ

ツァン商会館受付
 「申し訳ありません、会長への面会は予約された方のみとなっております。
  次の面会予約は一月後の夕暮れが空いております。」

オミールの執事
 「豹の使者様ですね。はるばる駆けつけてくださり感謝いたします。
  しかしお嬢様は今職務に忙殺されており、面会の余裕が御座いません。
  この時間では何も知らぬ商会員も館内に多数おります。
  恐縮ですが、万一に備え日が暮れるまでお待ち願います。」


 シーン2 : 料理の下準備
シーン説明

オセの使命遂行のために必要な情報を収集するシーンとなる。

登場PC

任意のPC

描写内容

新たな情報のための調査内容は以下となる。

【 オミールの危機 】 【 プギーリッヒの野望 】 【 ユバの思惑 】

【 プギーリッヒの警護 】 【 ユバの警護 】、そして【 ユバの弱み 】である。

GMからは【 ユバの弱み 】以外の項目を提示する事。
それぞれの項目で要求される判定に成功すれば、その内容の情報を得る。
ただし、成否に関わらず情報収集の判定を合計5回行なうと夜となり、
タイムリミットとしてこのシーンは終了する。

【 オミールの危機 】

情報提供者 : 噂好きのマダム

必要判定   : [情報判定/対価:不要]

 オミールは父オットーの継承権を有するただ一人の実子であり、故にオットーの死で父の役目を全て継承する事となった。しかしこの町では女性が産業ギルド幹部の座に着く事は初めてであり、彼女にとっての最悪の逆風となっている。商才は認められているものの、女であるという理由でツァン商会の顧客の数は減少傾向にあり、さらに商売も知らぬ財産目当ての有象無象からの求婚を断り続けている事もあり、そのために無駄な時間を取られている。

 プギーリッヒはここに目をつけ、振られた男達に届くように彼女の根も葉もないゴシップを撒き散らし、逆恨みを誘発したのだ。これによりオミールはさらに孤立を深めており、ついに父の急死は財産目当てのために魔女となったオミールの仕業だという噂が流れ始めている。この噂は教会の耳にも入っており、異端査問官が彼女を焼きに来るのは時間の問題だという域にまで深刻化している。  


【 プギーリッヒの野望 】

情報提供者 : プギーリッヒの元使い走り

必要判定   : [情報判定/対価:1] 

 プギーリッヒはツァン商会先代当主オットーの代からツァン商会とは犬猿の仲だったが、顧客層の違いから表立って衝突する事態は避けられていた。オミールが女だという事で、オットーの商会を引き継げてもギルド幹部の座は得られないと思ってもいたのだ。

 しかしオミールの商才が世間の風評よりも凄まじく、産業ギルドの発展に大いに貢献するものだったため、産業ギルドは伝統的に例がない事だとしながらも女であるオミールのギルド幹部継承を認める他なかった。空いたギルド幹部の座に自分が座ると確信していたプギーリッヒはこれに激高し、以後ツァン商会ひいてはオミールに憎しみをぶつける事をいとわなくなり、それはエスカレートし、ついにはオミールを魔女と貶めて排除し、物理的に空いた幹部の座を狙い始めたのたのだという。そして実際に異端査問官を呼ぶために、司祭であるユバ=ヘーブリッヒへと接近し、教団の後ろ盾を得るに至っている。

 なお、プギーリッヒが幹部の座を求めるのは出世欲からではなく幹部という権力が生む汚職の金のためであり、その金でさらなる贅沢を味わうためである。  


【 ユバの思惑 】

情報提供者 : 聖堂に出入りする商人

必要判定   : [情報判定/対価:3] or [社会判定/提供者権力Lv3] 

 ユバはプギーリッヒと手を組んでオミールを魔女として告発するために動いている。そうすればツァン商会の資産をユバが全て接収する事ができるからだ。ツァン商会の莫大な資金は首都への贈呈金となり、ユバの出世を確かなものとするだろう。

 しかしオミールを魔女として告発するには機が熟していないと判断している。今すぐにでも魔女として告発するだけならできるのだが証拠は当然ながらなく、また産業ギルドが幹部の座を認めているために、焦って告発すれば産業ギルド全体が魔女告発に怯えきり、発展のさなかにあるこの町の景気は瞬く間に後退し、それは自らの首を締める事となるだろうと計算している。

 ユバがプギーリッヒの後援者となっているのは単純に出世のための軍資金を手っ取り早く手に入れるためであり、別の儲け口があるのなら、告発の対象はオミールである必要はないと手のひらを返すであろう。  


【 プギーリッヒの警護 】

情報提供者 : プギーリッヒの元女中

必要判定   :[情報判定/対価:2]

 プギーリッヒの屋敷は「エネミー:悪徳商人_迷宮御殿」を流用する。

 建物の死角は2箇所だが警備員が3人常駐し、用心棒が一人雇われている。この用心棒のデータは「エネミー:傭兵くずれ」を使用する。この用心棒はプギーリッヒと常に同行する。さらに教団が身辺警護のために手配した官憲4名が配置されている。

 官憲は屋敷の内部を不定期に巡回しており、官憲に発見されると教団へ通報される危険がある。警備員と用心棒だけならともかく、官憲をどうにかできなければ暗殺に踏み切るべきではないだろう。  


【 ユバの警護 】

情報提供者 : 聖堂警備をしていた元官憲

必要判定   : [金満判定/財力30:要支払] or [社会判定/提供者権力Lv3]

 ユバは私兵として3人の用心棒を付き添わせている。この用心棒のデータは「エネミー:官憲」を使用する(役職としては官憲ではない)。

 ユバは聖堂の中の司祭室を私室としており、聖堂は「修道院」相当の自宅として扱う。聖堂には常に修道士や雑用のための人員がひっきりなしに出入りしており、夜間は官憲の厳重な警備下にある。この警備網を魔女が密かに突破するのは、少なくとも今シナリオの魔女には不可能と扱う。

 もし強引に突破を試みるなら全員が[幸運判定]を行い、成功すれば突破は出来ずとも無事に脱出できたと扱うが、失敗した者は捕縛され、その場で身体検査を受ける事となり、魔女の烙印が発見される。烙印が発見されれば捕縛された魔女は聖堂の地下にある座敷牢に投獄され、魔女裁判を待つ身となり、今シナリオにおいては退場する事となる。エンディングフェイズにて捕縛された魔女は火炙りにされるが、死体はオセが手を回して回収し蘇生され、アフタープレイ時に「身分値:0」「階級:余所者」となった上でPCとして復帰する。  


【  ユバの弱み 】

情報提供者 : PCの人脈にある誰か 

必要判定   : [金満判定/財力60:要支払] or [社会判定/提供者権力Lv5]

 この情報はPCあるいはPLからの要求がなければ、GMから選択肢として提示しない。情報提供者となるNPCはPCの知人の誰かとして任意に設定するが、特に思いつかない場合は、憤怒の剣闘士の後援者の一人、傲慢なる淑女のゴマすり相手、強欲なる貧者の世話役、はたまた独自に動いていたブラッキーのいずれかとするとよい。このシナリオにて情報提供者がPCに協力できるのはこの情報収集のみとなる。

 情報の内容は「ユバは司祭の権力にものをいわせた強引なやり方で得た資金を首都に送金しているが、その金には相応の闇が付きまとい、様々な不正会計や貴族階級を巻き込んだ泥沼の人間関係が絡んでいる。」というものである。とにもかくにもそのスキャンダルの公表はユバにとって大きな打撃となる事は確実である。

 スキャンダルの具体的な内容は、GMとPL間で自由に設定し、決定したものが事実となる。  

NPCセリフ

噂好きのマダム
 「これはとっておきの秘密なんですけれどね、
  ツァン商会の新しい女主人って魔女なんですって!」

プギーリヒの元使い走り
 「あいつが酷い目にあうなら、なんだって喋ってやるぜ。
  その前に見返りも貰うけどな。」

プギーリッヒの元女中
 「あの屋敷での生活はひどいものでした……。
  お給金も踏み倒されて、どう暮らしていけばよいか……(ちらちら)」

聖堂に出入りしている商人
 「あの人はほんと、模範的といってもいい聖職者様さ。
  俺のような清貧を尊ぶ商人をご愛顧して下さるからね。
  それで、何が知りたいんだ?」

聖堂警備していた元官憲
 「俺が話したって事はほんと言わないでくれよ。
  もしバラしたらお前も道連れだからな。」


 シーン3 : 魔女の娘の覚悟
シーン説明

魔女たちがオミールと直接面会し、
オセの傘下に入るよう交渉するシーン。
その最中、事態急変の知らせが飛び込んでくる。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢の淑女、強欲の貧者

描写内容

屋敷へと戻った魔女はオミールの執務室へ案内される。
執事は下がり、魔女は中へ入るよう促される。
オミールの顔は疲労に満ち、過労から軽い病気の状態となっている。

オミールに父オットーが魔女だと伝えると、オミールは激昂する。
「豹の鍵」をオミールに渡すと、オミールは金庫から
小さな錠付きの小箱を取り出し、「豹の鍵」で箱を開ける。

そこには父オットーの娘に当てた告白書と、
“統率者”オセとの相互支援更新契約書が収められていた。

オミールは告白書と契約書を確認すると怒りも冷め、
全てが真実であり、魔女に縋るより他に生き残る道はないと悟る。
そして魔女に、自身が魔女として燃やされ、
商会が壊滅する未来を予測していた事を話す。

オミールは魔女たちの要求通り、オセの傘下に入る事を宣言し、
ナイフで指を切り、契約書に血判を押す。

オミールを懐柔するという使命は成った。
しかしその時、執事が血相を変えて飛び込んでくる。
そして、教団がオミール告発に動き出した事を伝える。

NPCセリフ

オミール
 「どうぞ。扉は空いている。」

オミール
 「私がツァン商会長オミール=ツァンだ。
  PC(憤怒の剣闘士)が来てくれるとは嬉しい限りが、随分と物々しいな?」

オミール
 「父が……魔女、だと?ハ、ハハハ!これは傑作だ!
  魔女と噂される私が本当に魔女に連なる者とはな!
  失せろ!!」

オミール
 「この鍵は……まさか」

オミール
 「生前、父が言っていた。父がいなくなった後、
  私が本当に困った時、足長おじさんが助けにきてくれる。
  その時にこの箱を開けなさい、鍵はおじさんが持っている、と。
  ……冗談だと思っていた。」

オミール
 「私が魔女とされるのは、受け継いだ時から覚悟していた。
  遅かれ早かれ、この時が来ると。しかし私が死ねば、商会は終わる。
  幹部の座がなければ、商会はあっという間に飲み込まれる。
  だから、どんな手段を使ってでも、
  私は父から受け継いだこの商会を守ってみせる。
  あの欺瞞の畜生どもの牙から!……そう誓ったのだ。」

オミール
 「どんな手段を使ってでもと言った。悪魔に魂を売ってでもだ。
  口だけではない事を示そう。これが証明だ!」

オミールの執事
 「お嬢様、一大事に御座います!」

オミール
 「なんだ、騒々しい!何があったというのだ!」

オミールの執事
 「教団がお嬢様の告発のために動き出したと、
  斥候より伝達がありました!」


 シーン4 : 逆襲開始 
シーン説明

執事が司祭ユバのオミール告発計画を知らせてくるシーン。
PCはその対策を迫られる。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

場所は引き続きオミールの執務室となる。

執事が斥候から得た情報によれば、
司祭ユバはプギーリッヒの案に乗り、
遠方より町へ戻る途中のツァン商会の行商人を待ち伏せて襲い、
オミールが遠方の魔女に当てた内容の「捏造された密書」を
ユバ自身が「積み荷から発見」する事で「証拠」と
「大義名分」を得るつもりなのだという。

町中で事を起こすは産業ギルドを萎縮させるため、
所要で町を出た司祭が偶然行商人が山賊に襲われる場に遭遇し、
偶然行商人の死体から密書を発見、
「遠方と繋がる魔女」を粛清する事で、
産業ギルドそのものに危害は加えないというポーズを取るのが、
このまわりくどい計画の理由というのだ。

夜間の危険を避けるためユバは翌日の早朝に
襲撃予定現場へ向かう手はずだという。
行商人は別の宿場町に宿をとっている予定だが、
警告や救援を向かわせようにも、ユバ自ら出向くのであれば
反撃はかえって口実や自白を強要される捕虜を生みかねない。
ユバの武力に対抗するには、第三勢力の武力が必要だ。

オミールはユバの計画実行の阻止を魔女に依頼する。
カブンによってオセを盟主とする魔女たちは、
オセの契約者となったオミールの依頼を拒否できない。

オミールが提示するユバ対策の選択肢は以下の二通りとなる。


【 ユバの暗殺 】

 行商人襲撃予定現場にてユバを暗殺する。その上でユバの死を事故として偽装するか、あるいは行方不明扱いにせねばならない。激しい抵抗が予想され、戦闘が前提となる。勿論、目撃者は全て口封じしなければならない。

 いずれにせよユバの死は教団を大いに刺激する事が予想され、暗殺が発覚すると首謀者のオミールの処刑は免れず、ツァン商会は教団に資産を接収された上で完全に取り潰しとなる。暗殺に成功すれば、少なくとも代わりの司祭が派遣されるまで、プギーリッヒの後ろ盾は完全に失われる。

 しかしユバの死亡は商会間の抗争に関わるものだという事は容易に推測され、長期的に見れば、オセの町支配が盤石ではない現状での司祭暗殺は、教団の武力駐屯を強める結果となりうる。  


【 ユバの懐柔 】

 行商人襲撃予定現場にて魔女がツァン商会の特使としてユバと交渉を行う。この交渉でユバにプギーリッヒへ見切りをつけさせ、ツァン商会の後援者として裏切らせるのだ。

 この交渉に成功すれば、ユバはエッティゴ商会の資産接収に目的を変え、ツァン商会によるプギーリッヒ暗殺を教団は黙殺し、オミールは魔女ではなかったと潔白の宣言を約束し、逆にプギーリッヒこそが魔女であったと宣言する。抗争劇を知る者達にはプギーリッヒの悪行も知れ渡るところであり、ツァン商会を見捨てた者達やオミールに振られた男達は手のひらを返してプギーリッヒの死を祝福するだろう。

 もっとも、ユバと手を組む事は今後もユバに相応の対価を支払い続ける事となり、それは新たなオミールの心労となるのは明白である。また、オセとの契約の発覚の危険度も高まる事となるだろう。後顧の憂いなく懐柔するのならば、主導権を完全に握る程の交渉力が必要となる。  


ユバ対策に「暗殺」を選択したならば「シーン5_1:ユバの暗殺」へ、
「懐柔」を選択したならば「シーン5_2:司祭ユバの暗殺」へ向かう。

NPCセリフ

オミール
 「そこまでして金が欲しいか、豚どもめ!」

オミール
 「さっそくだが働いてもらう。契約だからな。」

オミール
 「暗殺と懐柔、どちらも相応の危険がある。
  安全を優先するならば懐柔なのだが。」

オミール
 「後はお前たちに全てを託す。……頼んだぞ。」

オミール
 「PC(憤怒の剣闘士)、生きて共に勝利の美酒を味わおう。
  その時は今度はお前が私を祝ってくれ。」

オミールの執事
 「旦那様の代から仕え続けて40年。
  今後も私はお嬢様のじいやで御座います。
  皆様方、よろしくお願い致します。ご武運を。」


 シーン5_1 : 司祭ユバの暗殺
シーン説明

行商人襲撃前にユバと接触し、暗殺を行うシーン。
ユバの命運はここで途絶える。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

襲撃予定地は、馬車が一台通れるほどの渓谷に流れる川、
それにかかる堅牢な石橋である。
この橋は「悪魔の橋」と名付けられており、
しばしば山賊の待ち伏せが行われる危険な場所であったが、
半年前に騎士団が山賊を討伐し、比較的安全な状況にある。
しかし最近になって山賊の残党が出るという噂が流れていた。

< 襲撃 >

行商人がここを通るのは昼ごろとされ、
魔女が早朝以降に出発したのであれば、
現在は日が東の天と地の間にある時間、朝の9時頃である。

PCが早朝以降にここへ向かう場合、
ユバは既に橋の手前でテントを張り、行商人を待ち受けている。
注意は橋の奥へと向けられているが、
用心棒が襲撃に備えて周囲を警戒している。
ユバは用心棒を3人を率いており、自身も武装している。
用心棒は1人がユバの側に控え、
橋の前後に1人づつを歩哨として配置されている。
ユバのデータは「エネミー:悪徳司祭」を使用する。
なお、ユバの死体からは「捏造された密書(非消耗品/重量0)」を入手できる。

以下は「悪魔の橋」にてユバと戦闘を行う際のマップとなる。
黒塗り部分はテントと谷であり、谷は飛行していなければ侵入できない。
ユバ達の位置は以下の通りとなる。

「ユバ:C_10」「用心棒A:D_10」「用心棒B:B_19」
「用心棒C:E_05」「ユバの幌馬車(無人):A_07」
PCは「01」のいずれかが初期位置となる。
 
【 悪魔の橋・戦闘マップ】
A[01]0203040506071011121314151617181920
B[01]020304050607101112131415161718R20
C[01]0203040506070809I11121314151617181920
D[01]0203040506070809I11121314151617181920
E[01]020304D060708091011121314151617181920
F[01]02030405060708091011121314151617181920


ユバ達は戦闘に入らなければ初期位置から動こうとはしないが、
ユバから4PT以内に踏み入ると、道は封鎖されているとして追い返しにかかり、
それ以上踏み込むと公務執行妨害で発砲すると威嚇する。
さらに2PT以内に踏み込んだ場合、戦闘開始となる。

戦闘時、ユバはフリントロック銃で最も近い魔女を狙い撃とうとする。
用心棒Aはユバから3PT以上離れる事はない。
用心棒B・Cは最も最も射程の長い武器で間近の相手に攻撃を行う。
用心棒はユバが死亡する、あるいは用心棒が2人無力化されると
残った一人は逃亡を図る。

逃げた用心棒が「01」「20」のいずれかに到達し、
次のターンで移動を選択すると逃亡成功扱いとなる。
逃げ延びた用心棒は教団に襲撃を通報し、ユバ暗殺計画が発覚してしまう。

< 奇襲 >

夜間に危険を冒して向かうならば、PCは全員が[幸運判定]を行い、
失敗した者は耐久点が−1減少して到着する。
この時に「原罪の庇護:重き瞼」の魔術を発動させていれば、
「失敗は恥(判定修正+40)」の判定となる。
もし全く暗闇対策をしなかった場合は、
「無理難題(判定修正−40)」となり、減少する耐久点は−2となる。
この耐久点減少は防御力を無効化するが
「原罪の庇護:壊れぬ檻」の魔術は効果が適応される。

夜間に先んじて到着した場合、PCはユバを奇襲する際の
[潜伏判定]に+20の判定修正を受けられる。
ユバの幌馬車は朝9時頃に「C_01」から現れ、「C_07」で左折し、「A_07」に停車する。PCは任意の地点に隠れ、[潜伏判定]に成功すれば、任意のタイミングで奇襲をかける事ができる。なお、御者は用心棒Cである。

< 後始末 >

ユバ暗殺後、ユバの死体を隠蔽する場合、以下の手段を取れる。

【 事故死に隠蔽する 】 

 金目のものを全て奪い、山賊の仕業に見せかける。代表者(任意)が[器用判定]を行い、これに成功すると偽装に成功したと扱う。これを実行すると、プギーリッヒの屋敷を警護していた官憲がユバ捜索に駆り出される。失敗時はクライマックスフェイズの[奈落判定]直前に偽装を主導した魔女が[幸運判定]を行い、これにも失敗すると偽装がばれ、ユバ暗殺計画が発覚してしまう。  


【 行方不明者にする 】 

 ユバの顔を潰し、身分証となるものを剥ぎ取り、証拠品を燃やすなどして処分し、死体を谷底に投げ捨てる、あるいは死体を完全に損壊させる。この作業は精神的・体力的にひどく苦痛をともなうため、全員が[狂気判定]を行わなければならない。これを実行すると、プギーリッヒの屋敷を警護していた官憲がユバ捜索に駆り出される。

 クライマックスフェイズの[奈落判定]直前に、代表者(任意)が「失敗は恥(判定修正+40)」の[幸運判定]を行い、これに失敗すると念入りに処理された死体が発見される上に行方不明となっているユバと断定され、そこからユバ暗殺計画が発覚してしまう。  



ユバの暗殺に成功した魔女たちは、
最後の使命「プギーリッヒの始末」を果たしに、町へ戻る。
GMはミドルフェイズの終了を宣言し、
クライマックスフェイズの開始を宣言する。

NPCセリフ

ユバ
 「お前たち、この橋は山賊が出没しているために封鎖中である。
  封鎖は夜に解除される。町に戻って待っていたまえ。」

ユバ
 「聞こえなかったのか?
  それ以上近づけば、我らに敵意ありとして神の裁きを受ける事になるぞ。」

ユバ
 「お前たち、ただの旅人ではないな?さてはツァン商会の連中か。
  まぁいい、予定より早いが、この際貴様らでも構いましない。」

ユバ
 「な、何だこれは!まさか、魔術……!?
  本当に、魔女だったというのか!?」

ユバ
 「な、何をする、きさまらー!!」

ユバ
 「わ、私が、こんな、ところで……グフッ!」

用心棒
 「ひ、ひぃい、こんなところで死にたくねぇ!」


 シーン5_2 : 司祭ユバとの交渉
シーン説明

行商人襲撃前に司祭ユバと接触し、ツァン商会へ鞍替えさせるシーン。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

場所は「悪魔の橋」という石橋のかかる渓谷である。
ユバは用心棒3人を引き連れ、橋の袂で待ち受けている。魔女たちが現れるとユバはこの道は封鎖されているので町に戻れと追い返しにかかる。ユバにオミール告白計画の事を問い詰めれば、ユバは魔女たちがツァン商会の使者だと思い込む。ユバは魔女たちの目的に興味を持ち、話を聞く態勢となる。

【 ユバと手を組む 】 

 ユバにツァン商会への主導権を握らせる形で脅迫する。交渉の内容は魔女が自由に指定でき、どのような内容でもユバの対応は判定の結果に従う。

 魔女のいずれかが[知恵判定]か[金満判定/財力45:支払い不要]のどちらかに成功すれば、ユバはエッティゴ商会を裏切りツァン商会に付く事のほうがより大きな利益を得られると勘定し、裏切りに応じる。これにより、プギーリッヒは教団の後ろ盾を失い、屋敷を警護していた官憲は撤収し、ツァン商会への風評被害は今後教団が取り締まる事となる。判定は一人一回づつ行え、失敗してもその判定を別の魔女が成功させればよい。

 もし[知恵判定]と[金満判定]の両方に失敗した場合、[社会判定]を行わねばならない。これに成功すると交渉は決裂するものの、魔女たちは戦闘を仕掛けられる事なく追い返されるにとどまる。

 ただし[社会判定]にも失敗した場合、ユバは魔女たちを口封じとして戦闘を仕掛けてくる。戦闘となった場合「ミドルフェイズ5_1:ユバの暗殺」の<襲撃>へと展開は変化する。戦闘開始時、PCの初期位置は「C_06〜07」「D_6〜7」のいずれか任意の地点となる。  


【 ユバを脅迫する 】 

 ユバにツァン商会への主導権を渡さない形で交渉する。脅迫の内容は魔女が自由に指定でき、どのような内容でもユバの対応は判定の結果に従う。

 [知恵判定]と[金満判定/財力45:支払い不要]に成功した上で[社会判定/対象権力Lv4]に成功する必要がある。これらの判定は同一の魔女が行っても、それぞれ分担しても構わない。情報収集にて【 ユバの弱み 】を得ていた場合、それらの判定全てに「失敗は恥(判定修正:+40)」の修正を得る。これに成功すれば、ユバはツァン商会が予想よりも遥かに長い手を有する油断できぬ存在として認識を改める。ユバは飴と鞭を織り交ぜた脅迫に屈し、ツァン商会に対して攻撃的な干渉の意欲を失う。これにより、プギーリッヒは教団の後ろ盾を失い、屋敷を警護していた官憲は撤収し、ツァン商会への風評被害は今後教団が取り締まる事となる。

 上記のいずれかの判定に失敗すると、その時点でユバは激怒し、魔女たちを口封じもかねて始末しようと戦闘をしかけてくる。戦闘となった場合「ミドルフェイズ5_1:ユバの暗殺」の<襲撃>へと展開は変化する。戦闘開始時、PCの初期位置は「C_06〜07」「D_6〜7」のいずれか任意の地点となる。  



内容はともかく交渉が成立すると、ユバは契約成立の証として
「捏造された密書(非消耗品:重量0)」を魔女たちに手渡す。
そして用心棒ともども馬車に乗り込み、リグールへと戻っていく。
この時、脅迫に成功していればユバの馬車に乗り込んで帰路につく事ができる。

こうしてユバの協力を取り付けた魔女たちは、
最後の使命「プギーリッヒの始末」を果たしに、町へ戻る。

NPCセリフ

ユバ
 「お前たち、この橋は山賊が出没しているために封鎖中である。
  封鎖は夜に解除される。町に戻って待っていたまえ。」

ユバ
 「ほう、この密書の事を知っているか。
  ツァン商会、なかなか耳が早いものだ。」

ユバ
 「なるほど、確かにお前たちの言う事はもっともだ。
  あの醜悪な商人の尻拭いにも辟易していたところだ。」

ユバ
 「お前たちの主人は誰に跪くのが正しいか、よくわかっているようだな?」

ユバ
 「よかろう、お前たちの望み通りとしてやろう。
  プギーリッヒは煮るなり焼くなり好きにするがいい。」

ユバ
 「交渉は成立した。もはやここにいる必要もない。戻るぞ。」

ユバ
 「な、何だと、その秘密をいったい何処で……!貴様、いったい何者だっ!」

ユバ
 「もういい、わかった。やめてくれ。お前たちの望み通りとしよう。
  ツァン商会は私には荷が過ぎた相手だったようだ。」

ユバ
 「お前たち馬車を出せ。この方々を町までお送りしなければならん。」

ユバ
 「もうよい。交渉はこれまでだ。もはや取り合う価値もない。
  予定は早まるが、密書を見つける死体はお前たちでも一向に構わん。
  死ぬがよい。」


 



 クライマックスフェイズ

 マスターシーン : 機を見るに敏、されど時既に遅し
シーン説明

ユバの死亡、あるいは裏切りによって、自身の身の危険を
敏感に察知したプギーリッヒの様子を演出するシーン。

登場PC

登場不可


描写内容

リグールの一角にある3階建ての屋敷。
屋敷の主であるプギーリッヒが叫んでいる。
屋敷を警護していた官憲が撤収するのである。
官憲は上からの命令としか返答しない、いや、出来ない。
官憲は何も知らぬ木っ端役人でしかないのだから。
あとは自分だけで身を守ってくださいと、
恨みを買い漁った悪徳商人に、
官憲は冷たく言い放ち、詰め所へと戻っていく。

うまく事が運んでいれば、ユバがオミールを魔女として
告発するための密書を掲げて凱旋しているはずだ。
しかし予定の時刻を過ぎても、
もうすぐ夜がやってこようとしても、ユバは姿を表さず、
ツァン商会に官憲が詰めかけたりもしていない。

見放された?裏切られた?
それともユバの身に何かあったのか?

いずれにせよ、計画は失敗したらしい。
しかもこのタイミングで官憲が撤収となれば、
事態は想定よりも悪いのかもしれない。
悪党の、外道の感働きが、最悪の事態を予感する。

何かよくない事が起こっている。
逃げなければ。それも、今すぐに。

血相を変えた主人に突き飛ばされながら、女中が悪態をつく。
普段はそれに憤慨する不機嫌な主人は、
それどころではないと階段を駆け上がり、自室に飛び込む。
旅行用の鞄を開け、金庫を開け、片っ端から金目の物を投げ入れていく。
隣の部屋で寝ている愛人はどうでもいい、足手まといだ。
たとえ危険でも、深夜には、遅くとも早朝には起たなければ。

夜がやってくる。
主人の部屋から明かりが溢れる。
その屋敷の明かりを、3人の魔女の目が見つめていた。

NPCセリフ

なし。


 シーン1 : 悪徳商人の居城
シーン説明

逃げ準備を始めるプギーリッヒの屋敷へ潜入し、暗殺するシーン。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

時間は夜、場所はプギーリッヒの屋敷の付近の路地裏である。
魔女たちは“統率者”オセの契約者に牙を向いた罰として、
プギーリッヒの命を頂戴しなければならない。

以下はプギーリッヒの屋敷の大まかな構造と潜入の妨害要素である。

ミドルシーンにて【プギーリッヒの警護】の情報を得ている場合、
魔女たちは屋敷の構造と人の配置を把握しているとする。

なお、屋敷への放火は引火の危険性からオセへの反乱と扱われる。

【 屋敷の外 】 

 3階建ての屋敷は死角が2箇所あり、警備員がその死角に1人づつ陣取っている。2箇所在る死角はそれぞれAとBに区別され、魔女たちが内部に侵入するための扉や窓となる。

 警備員が死角に駐在する限り、PCは潜入のための[潜伏判定]に「困難(−20)」な判定修正を受ける。警備員を何かしらの手段で無力化する、あるいはおびき出して死角から離した場合、[潜伏判定]は「簡易(判定修正:+20)」となる。判定に成功すると、何事もなく屋敷の扉や窓の傍まで移動できる。この時「原罪の庇護:空の階段」の魔術を発動させていた場合、2階、3階の窓に貼り付けるが、目立つために[潜伏判定]は2階においては[困難(判定修正:−20)]、3階においては「超困難(判定修正−30)」となる。

 窓や扉は「強化鍵」が仕掛けられており、「強化鍵」を解錠できなければ、中に入る事は出来ない。強化鍵の解錠に二度続けて失敗すると騒音が発生する。この強化鍵の騒音は警備員に潜入を確実に伝えてしまう。解錠のための[器用判定]、あるいは「大罪魔術_強欲:勝手知ったる他者の鍵」に依らない解錠手段をとった場合も、騒音が屋敷に鳴り響く。

 [潜伏判定」に失敗した場合、警備員が駆けつけてくる。直後に[幸運判定]を行い、これに成功すると運に助けられてやりすごせるが、失敗すると警備員に捕捉されてしまい、潜入が発覚する。また成功しても警備員はその場に留まるため、警備員を無力化しなければ解錠の[器用判定]は「困難(判定修正:−20)」なものとなる。

 警備員に捕捉される、あるいは攻撃を仕掛けると戦闘になる。警備員は片手にランタンを持っており、棍棒を装備している。戦闘開始時の警備員の初期位置は、発見された魔女から6PT先となる。警備員はまず魔女を捕縛しようと接近し、魔女が離れる、あるいは攻撃を行うと、逃亡阻止や自衛のために1カウントを消費して増援を呼び、その声に応じて他の警備員が移動を開始する。警備員が駐在する死角Aと死角Bは20PT離れているとする。  


【 屋敷1階 】 

警備員の待機室や厨房、炊事場、ロビーにて構成される。

 警備員の待機室で1人が仮眠をとっている以外にほぼ誰もいなくなるため、[潜伏判定]は「失敗は恥(判定修正:+40)」となる。判定に成功すると2階へと移動できる。

 警備員の待機室は鍵がかかっておらず、机の上の燭台によって室内は照らされており、[睡眠]状態の警備員がベッドに横になっている。待機室の壁には強化鍵の合鍵が一つ掛けられており、これは判定の必要なく発見できる。

 死角Aから侵入した場合は玄関ロビーの正面玄関から、死角Bから侵入した場合は厨房裏口から侵入した事になる。

 騒音や警備員の大声によって眠っていた警備員は目を覚まし、騒音にもっとも近い他の警備員と合流しようとする。もし他の警備員が全滅していた場合、その死体を発見して混乱しその場から動かなくなるか、介抱に専念する。  


【 屋敷2階 】 

従者の部屋や客間や泊客のための寝室、書斎にて構成される。全ての扉と窓に鍵がかかっているが、1階にある合鍵にて解錠できる。また、この階層は全く灯りが灯されていない。

 従者達がこの階層で寝静まっているため[潜伏判定]は「並(判定修正:なし)」となる。判定に成功すると3階あるいは1階に移動できる他、この階層の部屋を捜索できる。

 従者の部屋は[睡眠状態]の女中や使い走りがベッドに横になっており、私物に特に気を引くものはない。

 書斎には読んだ形跡のない、いかにも専門書的な本が書架に陳列されている。[文献判定]に成功すると、全ての本に特に不審な点はない事が確信できる。

 客室には人が住んでいる痕跡があるが、部屋の主はおらず、[捜索判定]に成功すれば、ベッドの枕の下に「武器:短剣」を発見できる。

 死角Aから侵入した場合は書斎の窓から、死角Bから侵入した場合は客室の窓から侵入した事になる。

 騒音や警備員の大声によって何者かの侵入に気付いた従者は私室に引きこもって嵐が過ぎるのを待つようになる。  


【 屋敷3階 】 

 プギーリッヒの私室とその家族の私室にて構成される。この階層の部屋の扉と窓は鍵が掛けられていない。灯りが灯されているのはプギーリッヒの部屋のみである。

 プギーリッヒは自分の私室で金庫をあさり逃走資金を鞄に詰め込んでおり、そのそばに用心棒の傭兵もどきが控えている。このため、[潜伏判定]は「やや困難(判定修正:−10)」となる。判定に成功すると、プギーリッヒの私室の扉前や2階に移動できる他、家族の私室の探索が行える。[潜伏判定]に失敗する、あるいは騒音で何者かの侵入に気付いた用心棒とプギーリッヒは、部屋の中で待ち伏せの態勢となる。

 家族の寝室にはプギーリッヒの愛人の売春婦が[睡眠状態]でベッドに横になっている。なおこの愛人の衣装や家具は全てプギーリッヒの亡き妻のものである。

 死角Aから侵入した場合は愛人の部屋へ、死角Bから侵入した場合はプギーリッヒの部屋へ侵入した事になる。

 騒音や警備員の大声によって愛人は目を覚まし、部屋の中で荒らしが過ぎるのを待つ。  


潜入の発覚の有無に関係なく、
プギーリッヒの部屋に突入した時点でシーンは終了する。

NPCセリフ

警備員
 「何だぁ?」

警備員
 「何だ、鼠か。」

警備員
 「貴様、そこで何をしている!!」

警備員
 「倒してしまっても構わんのだろう?」

警備員
 「な、なんだよこれ、なんでこんな事に!?」

警備員
 「おい、大丈夫か、しっかりしろ!」

眠っていた女中
 「え、泥棒?なになに、やだ、怖い」

プギーリッヒの愛人
 「な、何かあったの?に、逃げなきゃ、その前にお金お金……。」


 シーン2 : 魔女の洗礼
シーン説明

プギーリッヒの部屋に突入した魔女が、
今回の抗争劇に決着をつけるラストバトル。

登場PC

憤怒の剣闘士、傲慢なる淑女、強欲なる貧者

描写内容

部屋の中には、ありったけの金や貴金属を強引に
荷物に押し込んでいるプギーリッヒと、護衛の用心棒の姿があった。

プギーリッヒは魔女たちの突入に狼狽し、威嚇や命乞いを行う。
しかしその誘いに乗る事は魔女たちにとって“統率者”オセへの反乱を意味する。
命乞いや懐柔が効かぬと悟ったプギーリッヒは
用心棒と共に戦闘を仕掛けてくる。

プギーリッヒのデータは「エネミー:悪徳商人」を流用し、
さらに「武器:ラッパ銃」を所持(未装備)している。
プギーリッヒと用心棒は死ぬまで抵抗を続ける。
シーン1で潜入に気づかれていた場合、
プギーリッヒは最初からラッパ銃を装備している。

プギーリッヒ達の位置は以下の通りとなる。

「プギーリッヒ:C_05」 「用心棒:D_04」
潜入発覚時は用心棒の初期位置が「D_01」となる。
PCは普通に部屋に突入したなら「C_01」が、
窓から突入したなら「A_03」が初期位置となる。
「C_03」はテーブルであり、この部屋の光源である燭台が置かれている。
 
【 プギーリッヒの部屋・戦闘マップ】
A0102[03]0405
B0102030405
C[01]020304D
D010203C05
E0102030405

プギーリッヒと用心棒を[死亡]状態にすれば、暗殺は成功となる。
ミドルシーンにてユバを暗殺していた場合、指定の[幸運判定]を行わせる。

上記の処理が終了すれば、GMは魔女たちに[奈落判定]を行わせる。
[奈落判定]の処理が終わればシーンとクライマックスフェイズの終了を宣言し、
エンディングフェイズへと移る。

NPCセリフ

プギーリッヒ
 「ひ、ひぃ、何だお前たちは!?」

プギーリッヒ
 「ま、窓から!?ここは3階だぞ!どうやって……!」

プギーリッヒ
 「み、見張りは何をしていた!?何が目的だ!?」

プギーリッヒ
 「も、目的はわしの命……!?な、なんで!?」

プギーリッヒ
 「こんな事をしてただで済むと思っているのか!?
  わしには教団の司祭がついておるのだぞ!」

プギーリッヒ
 「そ、そんな、では官憲がいなくなったのは、やはり……っ!?」

プギーリッヒ
 「わしが、魔女だと!?おのれ、おのれユバめがぁ!!?」

プギーリッヒ
 「お、お前たちはツァン商会に雇われたのだろう?
  どうだ、わしに付かんか、金ならいくらでもやるぞ!」

プギーリッヒ
 「おのれおのれぇ、どいつもこいつもわしを舐めおって!
  おい、やってしまえ!!」

プギーリッヒ
 「な、なんだ、わしの部屋が、何処だここは!?
  まさか、お前たち、本物の魔女……ヒ、ヒィイイイ!?」

プギーリッヒ
 「そ、そんな、し、死ぬのか、わしが!?
  ゆ、夢が!酒池肉林の贅沢がぁ〜〜っ!グフッ!!」

用心棒
 「ちっ、命乞いしても火刑台か。さっさと逃げりゃよかったぜ」

用心棒
 「せめてお前らだけでも道連れにしてやるぜ!」

用心棒
 「こ、これは、夢か?地獄か?」

用心棒
 「畜生、畜生……グフッ!」

 



 エンディングフェイズ

 マスターシーン : 結末
シーン説明

一連の抗争劇、その結末を描写するシーン。
道中の分岐に拠って内容が変化する。

登場PC

登場不可


描写内容

【 覚悟の果ての勝利者 】

決定要素 : 【 司祭ユバへの脅迫成功 】

 リグールの宿場町。今ここは好景気のまっただ中にあり、その発展は衰える事なく続いている。家屋は次々と増えていき、物流は活性化され、今や立派な町となった。特産品はワインだけではなくなり、ワインのための葡萄畑は観光名所の一つとなっている。

 この華々しい発展の立役者、オミール=ツァンは今もなおツァン商会の長として、次期ギルド長候補として、そして「リグールの女主人」という礼賛の声の中、凛とした笑顔で多忙な日々を送っている。ユバ司祭はツァン商会の良き理解者として彼女をよく支え、聖堂はツァン商会の発展と共にあるとさえ豪語している。

 町の人々は繁栄の喜びに満たされ、平和を謳歌している。それら全てが欺瞞と知らずとも、その裏でワインよりも赤く黒い血が流れている事に気づかずとも、そして、盤上にてチェックメイトを果たした豹の悪魔の笑い声が聞こえずとも、その平和は確かにそこにあるのだ。  


【 光と闇の境界線 】

決定要素 : 【 司祭ユバとの交渉成立 】

 リグールの宿場町にて起こった商会の抗争は、教団と手を組んだツァン商会の勝利に終わった。

 プギーリッヒの死は魔術に手を出した果ての死であり、魔女と噂されたオミールは潔白であった、と司祭が宣言した事で、ツァン商会やオミールに向けられていた侮辱や罵倒といった風評被害は途端に途絶えた。敗北し、全てをなすりつけられたエッティゴ商会は解体され、その資産は教団が接収した。その後、ユバは教団への「貢献」が認められ枢機卿候補となり、この町の支配者として君臨している。

 ツァン商会はリグール産ワインの顔として名声を上げ、他の町にも支店ができる事が決定している。しかし商会の発展とは裏腹に当主オミールから疲労の影がなくなる事はなく、彼女の美貌は病的な影に覆われている。

 オミールは、感情が混濁した瞳を窓の外に向けながら、この町の未来を、己の未来を予測する。景気の波は落ち着き始めており、やがて消えるだろう。ユバにはまだ黒山羊との契約は知られていない。しかし教団の影響も、魔女の勢力も、確実にかつてより強くなっている。町の成長が止まれば、外から流れ込む獲物がなくなれば、後は内の獣どうしで食い争う事になるだろう。

 この町を舞台にした教団と魔女の全面衝突の時は、刻一刻と近づいている……。  


【 果たされる契約 】

決定要素 : 【 司祭ユバの暗殺 (隠蔽成功) 】

 司祭ユバは悪魔の橋に出没するという山賊の噂を確かめるために町を出立し、そのまま行方不明となった。その直後、エッティゴ商会に強盗が押し入り、プギーリッヒは惨殺された、という事になった。

 ツァン商会の危機は去ったものの、オミールは今もなお魔女ではないかと噂されている。教団を刺激しないように、ツァン商会の拡張は控え、教団に多額の寄付金を投げ込む事で、かろうじてツァン商会は今もなおリグール特産ワインの顔であり続けている。

 ユバの代わりに司祭となった後釜は、やはり典型的な聖職者ではあったが、ユバほどの野心もない風見鶏で、自らの地位が脅かされず危険もなく余生を過ごせればよいうという凡人であったため、現在のツァン商会と教団の関係はそれほどに悪いものではない。

 しかし、抗争はまだ終わってなどいない。俗欲的な抗争の枠を超えた、信仰と魂の抗争は今もなお続いている。そして、リグールは今や“統率者”オセの勢力によって掌握されんとしている。豹の牙は、凡人の希望を容赦なく噛み殺すだろう。

 商館の窓ガラス越しに聖堂を見つめるオミールの背後には、王冠をかぶる豹の幻影が漂っていた……。  


【 魔女としての死 】

決定要素 : 【 司祭ユバの暗殺 (隠蔽失敗) 】

 リグールの中央広場。普段は屋台が立ち並ぶ広場には、今、別の台が築かれている。

 それは火刑台。魔女が火炙りとなる神聖なる舞台。それに上る主演女優は、ツァン商会のうら若き商会長オミール=ツァン。罪状は、悪魔に魂を売り渡し、正義感溢れる善良な司祭を野望のために暗殺し、商売敵であるプギーリッヒを私利私欲のために惨殺した事。ギルド幹部の座を利用して、リグールを魔王の軍勢の橋頭堡としようとした事。カヴェル教国に対する反乱の罪。これほどの重罪はもはや救い難く、火によりて肉体と魂を浄化する他なし。

 異端査問官がとくとくとオミールを糾弾する。オミールは喋らない。否、喋るための舌は切り取られてもうないのだ。その美貌は覆面にて覆われている。その覆面の下は筆舌に尽くしがたい。守るべきものはもはや全て失われた。

 火刑の観衆がオミールに罵詈雑言を投げつける。そうしなければ、次は自分が燃やされてしまうから。

 査問官が魔女の足元に積まれた藁束に火を投げ込む。油が染みた藁束は勢い良く燃え上がり、炎の渦が魔女を呑みこんでゆく。

 かくてリグールの魔女は浄化され、悪魔の手先は教団の手により敗れ去り、町には平和が戻ったという。めでたし、めでたし。  

NPCセリフ

なし。


 シーン1 : それぞれの顛末
シーン説明

マスターシーンのエンディングを経て、
魔女たちがその時何をしていたか、
今後どう動くのかを演出するシーン。

登場PC

PLの任意

描写内容

このシーンおよび今後のシーンの内容はマスターシーンで演出された
エンディングを経て、PLから出された希望によって様々に変化する。
GMはPLにどのようなエンディングがよいかを訪ね、
返答に沿った演出を行なうと良い。
NPCセリフは魔女がオミールやオセと相対した場合の参考例である。

それぞれやりたいシーンを演出し終われば、
クライマックスフェイズの終了を宣言し、アフタープレイへと移る。

このシナリオでPCが得られる経験点は、
サンプルPCで参加していれば、それぞれ2点となり、
GMが得られる経験点は3点となる。
アフタープレイの処理を終えれば、
シナリオ「ワインの味は血と陰謀」はゲームセッションは終了となる。

お疲れ様でした!!

NPCセリフ

オミール
 「全てはお前たちのおかげだ。礼を言う。亡き父も安心して下さるだろう。
  約束だ。さぁ、今度はお前が私の勝利を祝ってくれ、PC(憤怒の剣闘士)!」

オミール
 「私は言った、全てお前たちに託す、と。
  その結果がどうであれ、その判断は私が下したものだ。
  だから、決してお前を責めたりはしないさ。」

オミール
 「エッティゴ商会の件はよくやってくれた。
  しかし……、恐らく、いや、確実に、
  またお前達魔女の手を借りなければならない時が来るだろう。
  今は……そうだな、仮初の勝利の美酒を共に味わおう。」

オミール
 「…… ァ ア……」
  舌なき彼女の唇に、聞こえぬはずの言葉を見た。それは……。

オセ
 「よく戻ってきた、余の子らPC(それぞれの魔女の名)よ。
  見事使命を果たし、そしてそれを超えて余の軍門に益をもたらした功績、
  実に大義であった。今後もよく励み、奉仕する至福を得るがよい。」

オセ
 「見事余の使命を果たした事、
  褒めてつかわそう。PC(それぞれの魔女の名)よ。」

オセ
 「お前たちが奈落の誘いにどう応えたかは見せてもらった。
  実に面白い。より余を楽しませるよう精進せよ。」

オセ
 「よく戻ってきた、無能なる人の子らよ。
  仕損じた経緯については何も言うまい。
  だが、余は言ったな?失敗は3度まで許される、と。
  残り2回の機会にて、汚名返上してみせよ。」

 

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