魔女になる者は、啓示とも言うべき不可思議な夢を見て魔女となる。
それは、「無垢なる夢」と呼ばれる、魔王からの啓示である。
夢の内容は基本的に以下のものとなる。
夢見る者は、最初、深い霧に包まれた光景の中をさ迷い歩いているが、
やがて霧は晴れていき、己が望む願望を形にした楽園へと風景が変化する。
その楽園と足を踏み入れると、白いドレスに身を包んだ、12歳ほどの少女が現れ、
夢見る者を、玩具を見つけたような笑みで見つめると、次の聖句を唱える。
「求めよ。さらば与えられん」
すると、夢見る者の身体の何処かに、「槍のような文様」、
あるいは「十字架のような文様」が痛みもなく刻まれる。
直後、足元から沸く奈落の闇に飲み込まれ、そこで夢は終わり、目が覚める。
そして夢の中で文様を刻まれた箇所を見れば、そのままに文様が刻まれ、
同時に、魔術の知識と行使の手段を得ているのだという。
それこそが「聖槍(せいそう)の烙印」「磔刑(たっけい)の刻印」と、
呼ばれる「魔女の印」であり、その文様を媒介に、
魔女は原罪の魔術の行使を行えるようになるのである。
この「無垢なる夢」に現れる少女は「アリス」と呼ばれており、
魔王が強い望みを持つ者を察知すると、その者を魔女とするべく
アリスを使いとして夢の中に送り込むのだと言われている。
|