拾いもの


「なかなか面白そうな事になってるじゃない」


13歳程の、一人の少女が眼下の光景にそう呟いた。

少女は黒いランジェリーにその肢体を包んだだけの扇情的な姿をしていた。

波打った黒髪には黒いリボンがつけられ、その猫のような瞳は黄金に輝いている。

華奢な身体のお尻からは、太い尻尾が生え、その先端には歯のない口がついていた。

少女の名はゾフィ=ロッツ。

暗黒の魔界に住まう魔族の一人。その地位は通常の魔族としては最下位の魔人に過ぎないが

その表情からは魔王すら笑い飛ばすような微笑が浮かんでいる。

今、ゾフィは魔界の森の中で、とある”ショー”に偶然出くわし、それを樹の枝の上から見下ろしていた。


「んっ くふぅっ はぁっ ぬぅ、や、やめ…て… むぐぅ…っ」

「ゲハ、ハハハ、イイ穴ダァ、コイツはイイ拾い物ダァっ!」

「ゲヒ、ゲヒヒ、モットダ、モット舌ヲ使ェ」

「ヒヒャハ、シリアナモ、イイ具合ダァ」


艶声を上げているのは、おそらく足元まで伸びているだろう長い黒髪の女性。

衣服はドレスであったのだろうが、ビリビリに破られており、

半裸となったその姿は見る者を欲情させるに十分だった。

下卑な笑い声を上げているのはオークと呼ばれる魔界では雑魚も同然のモンスターである。

醜悪なオーク達は汚らしいイチモツを拘束した女性の秘所や口に突っ込み、激しく腰を揺らしている。


ゾフィは犯されている女性が自分と同じ魔族である事、

階級は魔人ですらない下級魔族である事がわかった。

この魔界では弱者はこのように犯され嬲られ陵辱され奴隷とされるのが常である。

それだけならば珍しいものではないが、一つ、よくある事とは違う事があった。


それは、その女性があまりにも美しいのである。

その美しさは人間であれば国家を傾かせるに十分足りうるものだろう。

潤んだ瞳は憂いを帯び、小さいピンク色の唇はかすかに開いて震えている。

見るものに庇護心か、そうでなければ加虐心を抱かせる細い華奢な体、

しかしドレス越しに浮かぶそのスタイルは豊満な胸と尻を表す見事なラインを描いている。

醜い者が少ない魔族の中であってもその美しさは一際輝くに違いない。


実はゾフィがこの森に来ている理由はこの下級魔族の捕縛にあった。

ソウルイーターの奴隷商人の馬車がオークの群れに襲われ、商品が連れ去られたのだ。

つまりその商品こそ、眼下で陵辱されている下級魔族という事である。

ゾフィはソウルイーターからソウルと引き換えに商品の奪還を依頼されたのだ。

普通ならこんな仕事は請けないのだが、最近は退屈をしていたので気まぐれで引き受けたのだ。

しかし、その商品をソウルイーターの元へ届ける理由はもはや無くなった。


欲しい。


ゾフィは辱められている下級魔族を見た瞬間にそう思ったのである。


「頂いちゃおうかしら?うん、それがいいわ。
 
 だってあのブタどもには勿体無さ過ぎるもの。

 どうせあのタコ頭の所に連れて行っても、どうしようもないクズに売られるがオチだわ」


オークは魔族の喉奥にペニスを突っ込み、涙を浮かべる彼女に気使いする事もなくイラマチオを繰り返す。

残りのオークは魔族の膣と尻穴にペニスを突きいれがむしゃらに腰を振っている。

魔族は必死に抜け出そうと抵抗しているが、オーク数体相手の陵辱から抜け出せるはずもない。

このまま陵辱されれば下級魔族がオークの奴隷になる事は間違いない。

オークの数匹如き敵の数ではないが、少し面倒くさいと思う事があった。

それはオークが持っている槍である。

槍には赤い羽根と髑髏が装飾としてつけられており、

それはこの森一帯を支配する「デブルンギス」と呼ばれる部族の証明でもあった。

一匹一匹はたいした事はなくとも、集団となると厄介な事になる。

しかし目の前の”お宝”を見逃すつもりもない。


「数は3匹か。

 ちょっと面倒くさいけど、小隊規模じゃないからどうとでもなるわね。

 逃がすと厄介だから皆殺しは決定。

 手数が欲しいから、ちょっとあの子に来てもらおうかしら。

 足もあった方がいいしね」


ゾフィはそう呟くと、静かに枝から飛び降りた。

オーク達は快楽を味わう事に夢中で気が付いていない。

心の中でやっぱりブタはブタね、と見下しつつ、呪文の詠唱に入る。


「カモン、デストリア」


ゾフィの身体から暗黒の瘴気が溢れると、目の前の空間に実体を造り始め、それは漆黒の馬の姿をとった。

デストリア。常に瘴気を吐き散らす魔界の巨大な軍馬である。

その体長は3Mを超え、その存在感はオーク達をも我に帰させるものであった。


「ナ、ナンダァッ!?」

「ウ、ウマ、デストリア!?」

「オ、オマエハッ」


「ハロー、汚らわしい腐ったブタども。その子はあんた達には過ぎたものだから、私が貰ってあげるわ♪」


デストリアの隣に立ち、侮蔑と横取りの宣言を告げながら、次の詠唱に入る。

手のひらに暗黒の球体が生まれ、バチバチと散発的な小さな爆発音を響かせる。

オーク達は下級魔族から身体を離し、槍を構え戦闘態勢を取ろうとするが、完全に一歩遅れていた。


「イビルブラスト!!」


ゾフィが呪文の詠唱を完了させると、暗黒球がオークの一匹に直撃し、バヅンッ!!と強烈な破裂音が森の中に響いた。

次の瞬間、オークの半身は抉り取られ、血を噴出しながらその場に崩れ落ちた。

同時に、巨体のデストリアが駆け出し、オーク達に瘴気のブレスを吹きかける。

デストリアの口から吐き出された漆黒の瘴気はオーク達を包むと内側から蝕んでいった。


「ゲァアアアッ!!?」


瘴気を吸ったオークの一匹の身体がみるみる黒く染まっていき、そしてボロボロと崩れ塵と化した。


「ヒ、ヒィイイッ!!?」

「逃がさないわよ」


生き残ったオークは背を向け一目散に逃げ去ろうとしたが、このオークもまたゾフィの呪文によって崩れ落ちた。

戦いと呼べるものではなく、一方的な虐殺であった。


「さてと、これで当面の邪魔は入らないかしら」


虐殺したオーク達の死体を一瞥もせず、ゾフィは倒れたままの下級魔族へ歩み寄っていく。

下級魔族は全身に精液を浴び、猛烈な淫臭を放ちながら、倒れ付していた。

はぁはぁと吐息をこぼしながら薄く眼を開いてこちらを見上げているので、意識はあるらしい。


「…だ、だれ…?」


下級魔族の精液が零れる口元が開き、単語を紡ぐ。


「私はゾフィ=ロッツ。

 今から貴女は私のものよ。あ、拒否は認めないから♪」


にこりと微笑むゾフィに、下級魔族は怯えるような表情を浮かべる。

そんな様子を見てゾフィはまたにんまりと口元を歪め、眼を細めた。


「うん、やっぱりなかなか可愛いじゃない、私には及ばないけど。
 
 貴女、名前は?」


そのまま下級魔族の傍へしゃがみこみ、眼を見つめる。

下級魔族はゾフィの瞳を見ると、ぞくりと身体を震わせ、怯えの表情から陶酔するものへと変化する。

ゾフィの瞳には見つめた者を魅了する魔力がある。下級魔族はそれにあっけなく捕らえられたのだ。


「私は… レイン…。 
 
 レイン…マグナス…」

「レインね。それにしてもひどい有様ね。

 ブタ共の下種な匂いが臭くてたまらないわ」


レインと名乗った下級魔族はゾフィの言葉に頬を赤らめさせ、そっと胸を隠し、股を閉じ、顔を反らした。

破れたドレスから覗く美しい肢体、胸、ふともも、そしてそれを白く染めるオークの穢れた精液。

ゾフィはその羞恥に染まる淫靡なレインの姿にごくりと生唾を飲み込んだ。

お尻から生えている肉蛇の胴部に血管のようなものが浮き上がり、垂れた舌からは涎が垂れる。


「そうね…私が綺麗にしてあげる。感謝なさい?これは特別な事なんだから」


ゾフィの肉蛇がレインの身体にぐるぐると巻きついていく。

そして舌を伸ばすと、レインの肌を塗らす精液をぺろぺろと舐め取り始める。


「えっ…あ、んっ はぁ… や、やぁ…」


愛撫のような舌の動きにレインはその身をくねらせる。

長い髪の毛が乱れ、頬にかかり、色っぽさを増していく。


「それに、このままじゃ貴女、一歩も動けないでしょう?
 
 大人しく私を受け入れなさい」


ゾフィの言うとおり、レインには身体を動かす余力は殆ど残っていなかった。

オーク達の蹂躙により体力と精神を消耗しつくしていたのだ。

あのまま犯されていれば、身も心もオーク達に支配されていただろう。


「んっ あっはぁ…  くふっ んっ あぁ… はぁん…っ」


ぴちゃ、ぴちゃと肉蛇は精液を掬い舐めとり、レインを綺麗にしていく。

同時に乳首や首筋を愛撫し奉仕する事でレインに活力を与えていた。

やがて肉蛇はもっとも精液で汚れている場所、膣と尻穴に舌を這わせ始める。


「ひっ!?あ、そ、そこはっ…! んっあ、くふぅううっ…!!」

「本当に汚らしいわ。一体どのくらい中だしされたのかしら…あら?」


肉蛇が股間に入り込んだ時、違和感を感じた。さっとドレスをずらすと、

レインの膣の上には勃起したペニスがいきり立っていた。


「へぇ…貴女、ふたなりなのね。

 これはあのオーク達じゃないけれど、本当にいい拾いものをしたかもね」

「み、見ないでぇ……っ」

「ふぅん、下級魔族にしては結構大きいのね」


ペニスをドレスで隠そうとするレインの震える手を、ゾフィの手が掴む。


「この精液はあのブタどもだけのものじゃなかったのね。もっとよく見せてくれなきゃ。」


面白い玩具を手に入れた子供のような笑みにレインの顔が再び羞恥に染まる。


「ま、これはあとにするとして…まずはこっちね」


長く伸びた舌が膣内に潜り込み、内側からぐちゅぐちゅと精液を掬い取る。

そして肉蛇の口が直接膣に触れると、じゅるるるるうぅと一気に精液を吸い始める。


「ひぃいぁあぁぁーー〜〜っ!!?」


膣中を舌でかき回されながら、一気に吸われるとレインの身体が大きく跳ね、

膣はぴゅ、ぴゅるっと潮を吹きながらきゅぅううっと肉蛇の舌を締め付けていく。

ペニスから精液がびゅるぅ、びゅるる、びゅーーっと噴射し、

そのままレインは自分の身体をきゅぅっと抱きしめると、そのまま脱力し、再びぐったりとなった。


「この程度でイくなんて。オーク程度にも奴隷にされかけるし、本当に弱いのね。

 でも、まだ汚れているトコロがあるでしょう?」」


肉蛇を膣から離すと、今度は尻穴に蛇を宛がわせる。


「…だ、だめ…、おしり…今、イッた、ばかりで…っ」

「ふふふ、だから、というのもあるんだけどね?」


ゾフィの瞳が意地悪く笑みを浮かべる。

それは肉蛇がレインの尻穴に舌を突き入れるのと同時だった。


「ッッッ!!! ッあ、あ、あはぁーー〜〜〜っ!!!」


レインの艶声が高く上がり、同時に背中を仰け反らせる。

じゅるうぅ!ぐちゅぅ!ぐちゅ、くちゅ、ぐちゅるるるる!!

先ほどの奉仕の愛撫から打って変わり、攻め立てるような舌の動きに、レインの身体が敏感に反応し、跳ね、震える。

ペニスは今にも射精しそうな程に硬くなり、そして小刻みに震えている。


「さっさとこの森から抜けたかったんだけど、気が変わったわ。

 今この場で貴女を私の奴隷にしてあげる♪」

「そ、そん…ぁ…あ、ああぁあーー〜〜っ!!」


肉蛇の下が容赦なく尻穴の中を暴れ周り、精液を吸い上げる。

奉仕から調教に切り替えたゾフィの攻めによって、

限界が近かったレインは呆気なくその身体と心に、ゾフィの奴隷という烙印を刻まれた。

びゅるぅう!!びゅるう!びゅるう!とペニスから精液が射精され、再びレインの身体を白に染めていく。


「ぁ… はぁ…  ぅぁ…… 」

「これで貴女は私のモノ。光栄に思いなさい?」

「ぁ… はぁ、はぁ、はぁ… ぞ…ふぃ…  さま…」

「そうそう、ゾフィ様。さ、次は貴女が私を楽しませなさい」


くすくすと笑うとゾフィはレインの上にまたがり、自らの割れ目に、レインのペニスを宛がった。

ゾフィの下着は秘所が開いており、穿いたままセックスができるようになっていた。


「あ、あぁ…っ」


先ほど射精したばかりだというのに、レインのペニスは今だ硬く天に向かってビンビンに立っている。

レイン自身も、これから味わう快楽の予感に頬を赤らめ、両手でその顔を覆う。


「駄目。私から眼を離す事は許さないわ」


ゾフィはレインの手を握ると、無理やり持ち上げ、羞恥と快楽に期待を寄せるレインの顔を露にする。


「い、いやぁ…っ」

「何が嫌なの?本当は逆なんでしょう?私に逆レイプされたくて仕方ないのよね?

 だって、こんなに大きく、硬くなってるんだから」


くちゅ、くちゅっとペニスに秘所を擦り当てる。

発情して熱を帯びたペニスの感触に、ゾフィ自身も熱を帯び始める。

ショーツの間から覗く可愛らしい割れ目からは愛液が垂れ、ペニスを塗らしていく。

必死に快楽に耐えようと口元をきゅっと紡ぐレインの姿に、ゾフィの加虐心が刺激される。


「さぁ、言いなさいよ。私に犯されたい、って。

 オークに犯されてもまだ犯されたりない淫乱な雌犬だって、ね?」

「そ、そんな事…っ んっ! ……っっ!」


ゾフィが僅かに腰を落とし、ペニスの先端をくちゅりと膣へ少しだけ入れると、

そのままの姿勢でレインの瞳を見つめ、吐息がかかるほど顔を近づける。


「このまんまじゃ貴女も辛いでしょう?楽になりたかったら早く言いなさい」

「ぁ… あぁ… うん…ッ はぁ、…っ ぁ  …っ!」


わずかに入り込んだ膣の快感にレインの身体は敏感に反応し、

この中途半端な快楽に吐息が荒くなり、快楽を拒んでいた瞳が徐々に放蕩に染まっていき、

閉ざされていた口がわずかに開いた。


「… お願い…します…。 淫乱な… 私を…  犯して…くださいっ…っ!」

「よく言えました。

 それじゃぁ、ご褒美よ♪ んっ…あ、はぁんっ♪」

「っ!っあはぁあぁあーーーっ!!」


レインが言葉を発するや否や、ゾフィは一気に腰を下ろし、根本までレインのペニスを飲み込んだ。

小さな膣内はレインの大きく硬くなったペニスをぐちゅ、ぎちゅりと飲み込み、膣ヒダが一斉に蠢いて刺激する。

焦らされていた体でその急な快楽に襲われたレインは、眼を見開き、大きく口をあけて艶声をあげた。


「はぁっ んっ、あぁ、いいわぁっ、 ペニスもなかなかいいモノを持ってるじゃない」

「あはぁっ、ああぁ、っひいっぁあぁーー〜〜っ!」


ゾフィがペニスが抜く寸前まで腰を上げ、そして直後にぐちゅぅ!!と根本まで再び飲み込む。

少女のキツいながらもざわざわと蠢く膣中にレインのペニスは

一気に限界近くまで膨れ上がり、先走りをびゅるっとその中に零した。

ゾフィの膣中は先走りを胎内に吸収し、その熱さに身を震わせる。


「あはぁっ あつぅ… ふふ、先走りでこんなに熱いなら、射精したら火傷しちゃいそうね」


「ひぁっ…はぁっ くふぅ… んっ…!あぁ…っ!」


ゾフィが腰を上げ、下ろす度にレインは喘ぎ、悶え、

いつしかレインも自分で気づかぬうちに腰を動かし始めていた。

だんだんと早くなるゾフィのペースにレインの腰の動きも合わされて、

きゅっと自身の髪の毛を握り、快楽に震えるレインを見下ろしながら、

ゾフィは眼を細め微笑みながら腰を揺り動かしていた。


「自分から腰を使うようになってきたじゃない。

 さっきのオーク達にも今みたいに腰を振っていたのかしら?」

「そ、そんな…事…っ、ああぁあーーっ!!?」


ゾフィが単調な上下運動から円を交えた動きに変えた事で、

ペニスに新たな感触と快楽が生まれ、レインを蝕んでいく。

頭の中が白くなるにつれペニスの剛直がぷるぷると震えだし、射精の予感をゾフィに膣ごしに伝える。


「ふふ、もうイッちゃいそうね。いいわ、射精しなさい。私に貴女の熱いモノを注ぎこみなさい!」

「あ、ああぁ、ああぁああーーー〜〜〜〜っ!!?!??」


ゾフィはトドメとばかりに膣の締め付けと膣ヒダの動きを激しくし、ペニスを包み込む。

ペニスはその快楽に耐え切れず、びくびくっと大きく震え、

びゅるぅうう!!びゅるぅう!!びゅるうぅううーー〜〜〜!!!と大量の精液を膣内に放った。


「ひぁっ!?い、いいわっ、わ、私も、イク、イクうぅううーーーっ!」

灼熱の精液は先走りと同じように胎内に染み込み、吸収されていき、

ゾフィはその快感にぞくぞくっと背筋をのけぞらせ、絶頂に達した。


『あぁああぁあーーーーっ!!』


二人同時に喘ぎながら、精液を注ぎ、注がれ…やがて二人の体は脱力し、レインの意識は奈落へと落ちていった。




「ふふ、一杯出しちゃって。…さて、と」


気を失ったレインのペニスを抜くと、栓が抜けたように精液がぼとぼとと地面に落ちていく。

零れる精液の淫靡な香りを楽しみたかったが、ふと思い出したかのように見回せばオークの死体が転がっている。

これらの淫臭と死臭で他のオークやモンスターが寄ってくれば面倒な事になるだろう。

幸い、オーク達を皆殺しにできたので部族の本隊が気づくまで多少の時間はあるだろう。

それまでにこの森をさっさと抜け出さなければならない。

さきほどのセックスで消費された魔力は補充されている。

デストリアもいるので、これなら途中で何かと出くわしても何とかなるだろう。

レインをデストリアに載せると、ゾフィも同じく跨った。


「さぁ、とっととこんなブタ臭い森から抜け出すわよ!」


ゾフィが声をかけると、デストリアは森を駆け出す。

通常の馬なら森の中で走る事は出来ないが、デストリアは魔界の馬だ。

巨体にかかわらず森の中をまるで何もないかのように駆け抜けていく。

時折枝が引っかかるがそのままへし折って直進していく。

やはり普通に走るより遥かに速い。このままのペースでいけば…。

その時、前方の左右の茂みがかすかに揺れた事にゾフィは気づかなかった。

馬がその茂みを越えた瞬間、何本もの矢が放たれ、デストリアに突き刺さる。


「なっ、しまっ…!!」

「ブヒィイイン!!」


デストリアが矢の痛みに動きを止め、嘶きを上げる。

しまった、油断した…と思った時には、既に周囲を囲まれていた。

茂みからオークの集団が現れ、見た覚えのある槍を構える。

規模から見て一個小隊が二集団。


「…ふぅん、思ったより速かったじゃない」

「エモノ、エモノ、ヨコセ」

「グ、グヘ、オンナ、オンナ、オマエモ、奴隷ニ、スル」

「ウマ、ジャマ、マズ、コレヲ、殺セ!」


デストリアは総攻撃をあと一回受ければひとたまりもないだろう。

ゾフィは防御結界を左手に発動させ、右手に鞭を召還した。

直接戦闘は向いていないが、威嚇にはなるだろう。


「まぁ、ピンチにならないと面白くないわよね!」


オーク達が一斉に襲い掛かる。

しかしゾフィとデストリアの方が若干早い。

ゾフィは召還呪文の詠唱を開始し、

デストリアは瘴気を小隊に吹きかける。

しかしこのブレスはたいした効果を得られなかった。

ゾフィの呪文が発動し、傍にもう一体のデストリアを呼び出す。

オーク達はデストリアが増えた事に全く動じもしない。

そのまま槍でゾフィ達に襲い掛かる。

ゾフィはその攻撃を防御結界でかろうじて回避する。

槍がバジィイン!!と見えない障壁に弾かれ、数匹のオークが転倒した。

そこへもう一個小隊が総攻撃を仕掛ける。

さきほどの攻撃で防御結界が左側に移っていた隙を突かれ、

その槍はデストリアとゾフィの体を貫いた。


「ぐっ!ブタの分際で私に傷をつけるなんてぇ!」


ゾフィは魔族なので簡単に倒れはしない。しかし分が悪いのは明らかだ。

とにかく数を減らさなければならない。

ゾフィはレインを抱くと、先ほど呼び出したデストリアの背中に飛び移った。


「イビルブラスト!!」


ヒュン!と鞭が振るわれると、小隊に向かって暗黒球が放たれる。

バヅン!!バォン!!ドァン!!

暗黒球は触れたオーク達を次々と消し飛ばしてゆく。

おそらく小隊の半数は消し飛んだが、その攻撃の勢いは衰えない。

その小隊にデストリア達のブレス攻撃が追い討ちに与えられる。

しかしいかんせん数が多い。1匹2匹を塵に変えたがそれだけだった。

オーク達が負傷したデストリアとゾフィにそれぞれ攻撃を仕掛ける。

その時、オーク達はとんでもないヘマをしでかした。


「ゲヘヘ、ウマ、ホットク、オンナ、オンナイク!」

「ウマ、ツブセ!ウマヤッカイ!ウマヲサキに!」

「ウルサイ!オンナオカセバ、ウマモキエル!」


オーク達は仲間割れを起こし、攻撃のチャンスを失ったばかりか、

ゾフィ達が攻撃を与えるチャンスを与えてしまったのである。


「やっぱりブタはクズね!集団統率すらできない有象無象が私に勝てると思わないでよ!」


ゾフィの放った暗黒球が仲間割れを起こしている小隊で弾ける。


「ゲヤァアアアア!!!」


オークの一個小隊はその一撃で全てが骸と化した。

あと一個小隊。こちらはまだデストリアを一体も失ってはいない。

勝利は約束されたようなものだが、まだ油断はできない。

この待ち伏せはおそらく時間稼ぎだろう、すぐに背後から本隊が追ってきているはずだ。

残ったオーク達の総攻撃はゾフィの防御結界を突き破り、デストリアに槍が突き刺さる。

もうこれ以上デストリアを召還する余力はない。やはりさっさと潰してしまうに限る。


「もう、鬱陶しいのよ、このゴミ蟲どもが!!」


イビルブラストが小隊で炸裂し、やはり半数以上を打ち倒す。

弾けた肉片や血飛沫で当たり一面は血の海となり、ゾフィもまた血塗れていた。

デストリア二体は小隊に瘴気のブレスを吹きかける。

そのブレスは残った全てのオーク達を蝕み、黒ずんだ塵に変えていく。


オークの小隊は全滅し、あたりに静けさが戻った。



「ふぅ、手間とらせるんじゃないわよ、下等が」


あたりに気配がない事を確認すると、結界を解除し鞭を異空間へ放り込む。

そしてぐしゃりとオークの成れの果ての塵を踏みつけると、すぐにデストリアに跨った。

こんなところに長居は無用。すぐに森の中を駆け出し始める。

数十分も走った所で森が抜け、暗黒の荒野が現れた。

ようやくオークのテリトリーから抜け出したのだ。

しかしまだ追ってこないとは限らない。

そのままデストリアを走らせ、魔都へと向かう。

その時、背中のレインが意識を取り戻し薄く目を開いた。


「あら、お目覚め?」

「ゾフィ様… いったい…  っ その傷は…っ」


血まみれで、そして体に穴を開けているゾフィを見てレインの顔が青ざめる。


「あぁこれ?ちょっとクズどもにヘマやっちゃってね。アナタはまだ眠ってなさい」

「まさか… さっきのオーク達に…? どうして…」

「何?まさか、貴女を護る為に戦った、とでも言って欲しいわけ?」

「それは…」

「私は私の玩具を横取りされるのは我慢ならない、それだけよ。

 それに、この私まで奴隷にしようだなんて、おこがましいにも程があるわ」

「……。」


横取りをしたのはゾフィの方なのだが、
レインの沈黙にゾフィは口をへの字にして問いかける。


「何よ」

「いえ…。ありがとう…ございます」


レインはそっとゾフィを抱きしめると、頬にキスをする。


「ちょ、礼を言われる筋合いなんてないわよ!これはあくまで、私のためなんだから!」


さきほどまで意地悪な微笑しか浮かべていなかった少女の頬が不意に染まる。

その顔を見て、レインは優しげな微笑を浮かべ、きゅっと抱きしめ、豊かな胸をゾフィの背中に当てつける。

すると、ゾフィの傷が全て癒え、魔力も大幅に回復した。

ただの下級魔族である魔奴隷には出来ない事だ。


「へぇ…?ただの魔奴隷かと思ったら、こんな隠し技があったのね。

 ますます気に入ったわ。私が飽きるまでずっと傍に置いてあげる。感謝しなさい」

「…飽きるまで…?」


レインは不安げにゾフィを見つめる。

ゾフィを抱きしめる手に心なしか力がこもる。


「それが嫌なら、私を飽きさせないように楽しませなさい♪

 私は私を楽しませるものには優しいんだから」


満面の笑みを浮かべるゾフィに釣られて、不安げだったレインの表情が小さな笑みに戻る。


「さっきはゆっくり出来なかったから、魔都についたらたっぷりと奉仕してもらうわよ。

 誠心誠意で私に仕えなさい、いいわね?」

「はい…ゾフィ様…」



あ、魔都に戻ったらソウルイーターが面倒くさいわね。

まぁどうにでもなるか。どうせ連中はソウルにしか興味ないんだし。

それに面白い玩具も手に入ったし、私のメイドにすればいいわ。

これだから魔界は楽しいのよね。

さて、次はどんな面白い事があるかしら?



歪んだ草木が生えた荒野をゾフィ達は駆けていく。

それを暗黒の太陽が二人を祝福するかのように照らし出ていた。




続く。
*************************************************
戻る