【 堕ちた神子と奈落の魔王 − T 】
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『神子』の魂が堕落した時、『無垢なる夢』を見る事となります。それは『啓示の夢』で見る、《宝物》との幸福な日々の光景が崩壊していくものではなく、逆に崩壊したそれらの世界が、再構築されていくものとなります。夢見る者はそれを落下感と浮遊感の中で見上げながら、自らを『魔女』へと導いた超常なる存在と邂逅します。 自由を渇望せし者には、白き魔王。それは『アスモデウス』。 魔女への復讐を渇望せし者には、赤き魔王。それは『ルシファー』。 叡智と世界の真理を渇望せし者には、黒き魔王。それは『ダンタリアン』。 それら魔王のいずれかに魅入られた者は、その肉体を現世に置きながら、魂は、永劫、現世と奈落との境界に縛られます。もはや天上へと至る事は叶わず、かくて『魔女』へと至る者は、その証である『烙印』が刻まれ、『奇跡と加護』は『魔術と庇護』へと変化します。 夢より覚めた者は、『神子』においての『イデア界の修道院』に相応する、それぞれの魔王たちが作り上げた『サバトハウス』へ出入りする権限を与えられ、そこで同じく堕落した、あらたな同胞たちに迎えられ、あらたな守護天使『黒山羊』の管理下へと置かれます。
『魔女』は、盟主たる魔王より、以下の絶対の使命を与えられ、それを元に行動します。
アスモデウスよりの使命は「探求」。
ルシファーよりの使命は、「鏖殺」。
ダンタリアンよりの使命は、「探索」。 『魔女』は常時監視されており、これに反する動きは「裏切り」とみなされ、警告を無視するならば、凄絶なる粛清が与えられます。
かつての《穢れ》は《リビドー》へと名称が変化し、《堕落レベル》は「0」に初期化された上で《奈落レベル》へ名称が変化します。『奈落レベル』が「13」に至ると、肉体もろとも魂が『奈落』へと、『猟犬』と呼ばれる異形の獣へと引き釣りこまれ、【ロスト】します。 《魔術妨害》の術を得ます。 『魔女』へと堕落した時に、最も深い《罪》1種を原罪とする《大罪の烙印》と《原罪の庇護》の《魔術》を行使できるようになります。 『イデア界への修道院』からは追放され、『アルコーン』と『羊飼い』、そしてそこでの生活の記憶のすべてと、そこに至る《銀の鍵》は失われます。 《悪霊払いの収穫祭》は《ヴァルプルギスの夜》となり、祈る対象は『黒山羊』へと変化します。
『魔女』が『黒山羊』よりの使命を与えられ、集団で行動する際に作られる小集団です。『カヴン』の結成を許可した『黒山羊』を『守護者』とし、リーダーを『司祭長』に、その他を『助祭』として、「互いを害してはならない」という誓約を誓い合います。 《ヴァルプルギスの夜》はこの『司祭長』が『守護者』へ祈る事で展開できます。結界内の光景は、『守護者』の創りだす異常なる世界となります。 |
【 堕ちた神子と奈落の魔王 − U 】
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アスモデウスのサバトハウスの光景は、宮殿というよりは高級旅館じみており、大広間は『魔女』が集うロビーとして開放され、しばしば「魔女のお茶会」が開かれています。ロビーから繋がる通路の中には『魔女』が疲れを癒すための個室が並んだ区域が用意されています。 特色は「食事以外が贅沢の極み」である事です。サバトハウス内では、食事の供給は「栄養もなくひたすら糞不味いだけの、料理と言えない料理」以外の供給が一切行われておらず、また食材や飲食物の持ち込みは禁止されています。 しかし『魔女』に与えられる個室は、王宮の王族もかくやという絢爛豪華、クローゼットには華々しい衣装が並んでいます。また、それぞれの部屋で、裏切り行為以外の何を行おうが自由であり、麻薬の持ち込みも許可されています。 『魔女』はそれらの贅沢を堪能してしまうと、もはやその贅沢から逃れる事は困難です。また、食事が全く与えられないので、長期滞在は乾きと飢餓に襲われる事となります。このため、『魔女』は『黒山羊』よりの使命を受けて、あの贅沢を維持するために、美食を味わうために、現世へと戻って、渇望を満たすために積極的に活動を行います。 なおサバトハウスでは、どれも同じ姿の、二又に別れた鼠の尻尾のように長い裾の燕尾服姿の少年少女が使い魔「ブラッキー」としてサバトハウスの維持を行っています。ただ、仕える『黒山羊』によって、ブラッキーの性格は豹変します。
ルシファーのサバトハウスは、天上の楽園とはかくもあるやというばかりの、栄光と輝きに満ちた大宮殿です。宮殿にはルシファーをかたどった黄金の彫像がいたるところに陳列されており、城壁には同様に剣を空に向けたルシファーの胸像が延々と立ち並んでいます。内装もまた、この世の支配者であれば相応であろう気品と威厳にあふれたものです。 特色は、とにかく規律が厳しい事です。アスモデウスのサバトハウスのような自由は一切認められず、王の近衛兵ばりの格式が求められます。そこでの生活は完全管理された兵士宿舎そのものであり、黒山羊『ベリアル』による戦闘鍛錬が延々繰り返されます。『魔女』はこのサバトハウスで生活しており、現世に【家】を持つ事は基本的にありません。 『魔女』はまずターゲットを発見するために目立たぬよう監視の旅を行い、発見次第襲撃をかけるのが基本となります。この単独の狩人が全国に散らばっており、その性質は【魔狩人】に近く、実際にその構成員は【魔狩人】であった者が多くなっています。死亡者が出た場合、黒山羊『ネビロス』が回収し、蘇生を試みます。
ダンタリアンのサバトハウスの光景は、超階層吹き抜け構造の巨大な図書館です。一度迷ってしまえば帰還は困難であり、このため、入り口の大広間と図書館は鉄格子によって区切られています。図書館内部に入ったり本の閲覧を求めるならば、大広間の一角にある司書室の主ダンタリアンそのものにその許可を求めなければなりません。 蔵書の内容はこれまで教国内や蛮族領から集められたあらゆる分野の書物や石版、あるいは古代文明時代の希少な情報媒体で、焚書されたものを修復したものや補完したもの、そして危険極まる『禁書』で占められています。『禁書』が収められた書架の区域は絶対立ち入り禁止の『禁書室』であり、閲覧や貸出はまず認められません。
館内での抗争や加害行為は厳禁です。大広間の通路はアスモデウスのサバトハウスに繋がる扉があり、行き着できます。ルシファーのサバトハウスに繋がる扉もありますが、普段こちらは空間が繋がっていません。その理由は、ルシファー陣営はその攻撃性によって、館内でターゲットとなる魔女狩りを強行するなど問題を多発させるからです。 |
【 堕ちた神子と奈落の魔王 − V 】
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『黒山羊』とは、奈落という現世を元に生み出された混沌とした荒涼の世界にて、神によって幽閉されている力ある超常の存在です。彼等はかつて天上にて創造主に仕える天使としてあり、人間のための楽園を創造するために生み出された管理者達でした。彼等は創造のために『ラジエルの書』によって、世界創造と世界改変の力を得て、それにより楽園を人間にとって快適な環境を作り上げてきました。
ある時、アザゼルという天使が楽園の人間に『ラジエルの書』の知識を与えるという禁忌を犯し、それによって営々と作り上げられてきた楽園は、それより遙かに短い期間にて荒廃し、神は楽園を廃棄しました。アザゼルは永遠の幽閉刑を受け、崩壊した楽園、現世を模して生み出された世界の何処かへと封印されました。残された天使たちは、生き残った人間がかつての楽園で生きていた人間のように天上へ至る資格を得られるよう見守る使命を命ぜられましたが、生活向上や発展を促す介入を禁じられました。 神は、新たな楽園の世界を、新たに生み出した天使に創造を任せ、古き楽園は古き天使どもども放置されました。石器時代にまで逆行した人間は楽園にあった時代とは程遠い蛮性を帯び、幾千幾万の年月を経ても新たな楽園へ迎える資格ありと認められたのはただ1人のみでした。 やがて、楽園を守護する軍団長の立場にあったルシフェルという天使は人間に絶望し、無為な悠久の年月を強いた神に憤り、決別と、神への成り代わりを宣言します。ルシフェルは楽園の管理者達を率い、天上へと攻めこみ、新しき天使たちを圧倒しました。新しき天使たちは、『ラジエルの書』の知識の断片に相応する力を有していなかったため、神の居座へ反乱軍の侵入を許してしまいます。 反乱は一瞬で決着がつきました。瞬き。ただそれだけで、古き天使達は、奈落へと叩き落とされました。数多の天使はその名が貶され、ルシフェルはルシファーへと変貌しました。奈落の世界から脱出しようにも、猟犬という神の御使いに阻まれ、反乱は失敗に終わりました。以後、彼等は荒廃した楽園よりも荒れ果てた奈落の世界を自らの世界とする他なくなったのです。天使であった彼等は奈落の瘴気に侵食され、天使から『黒山羊』へと堕落しました。そうして生まれた『黒山羊』という堕天使達の中で特に強大な力を有する者が、『魔王』として彼等の指導者となったのです。
奈落へと叩き落とされ『黒山羊』と化した者たちは、楽園を創造した『ラジエルの書』の知識にて、彼等は自らの居城サバトハウスを作り出し、そこに篭もります。これによって一応の安定を得た『黒山羊』は、現世へ至る、猟犬が嗅ぎ付けられぬ程の小さな空間の穴を見つけ出します。『黒山羊』はその穴をくぐれるほどに力を弱めた分身、『化身』を送り込み、現世の状態と天上の様子を探るための旅を始めました。 その旅は、結果として、彼等『黒山羊』を分裂させ、終わりなき抗争状態へと導きます。現世の旅にて見つけたもの、それは『ラジエルの書』、その紙片。紙片はそれだけで、楽園の残骸を未だに維持し、それどころか異界を生み出していました。異界の罠や異形によって多くの化身が犠牲となりながらもついに紙片を手に入れた『黒山羊』に、あの猟犬が襲いかかりました。紙片を化身が有すると猟犬に嗅ぎつけられる。それほどに強力な紙片だったのです。 これを集め、『ラジエルの書』を復活させれば、その叡智を全て得れば、猟犬を逆に狩り取る事ができるかもしれない。このラジエルの書をめぐる議論は、神の打倒を第一とする復讐派、神に恭順し恩赦を得る事を望む恭順派、そして神に復讐も恭順もせず、奈落と現世を己の領域する決別派に別れ、以後これらの派閥で凄惨な闘争と抗争の日々が繰り広げられるようになったのです。
奈落とは、神が罪人を幽閉するために創造した、牢獄の世界です。自然に草木が生える事なき不毛の世界にして、地から湧き出る水は毒を含んでいます。現世を模していながらも、それをおぞましく悪意をもって醜悪なものとした世界、それが奈落なのです。 奈落には現世のように原生する動物や住人がいますが、それらに人として好ましいと感ずる要素はありません。怒り、怠惰、傲慢、暴食、色欲、強欲、嫉妬。7種の悪徳それぞれのみを凝縮したかのような、純粋に醜悪なものども、それが奈落の住人なのです。奈落に身をおくものは、その世界を包む瘴気に汚染され、肉体は醜く変貌ます。それにより正気は失われ、身も心も怪物となって世界を徘徊する事となります。 |
【 堕ちた神子と奈落の魔王 − W 】
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【 堕ちた神子と奈落の魔王 − X 】
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【 堕ちた神子と奈落の魔王 − Y 】
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