【 サンプルシナリオ − 警告 】



“建国の聖女”ダリア

 「お待ちなさい、愛しき我が同胞の子よ。

 この禁書「サンプルシナリオ 〜 緋色の業火 〜」は、

 デカダンスRPGイノセンスのGMを試みる敬虔な神子のみが閲覧を許されています。

 貴方はGMを目指すものですか?

 そうであるならば、このまま本を開きなさい。

 そうでないのならば、本を閉じ、今すぐ図書館より離れなさい。

 でなければ、知りすぎる地獄を貴方は身を持って味わう事となるでしょうから。


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 ……心の準備はよろしいですか?

 では、この退廃に抗うゲームにて、存分にお楽しみなさい。 戻れなくなるまで……。

 

【 サンプルシナリオ − T 】
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『 緋色の業火 』
想定プレイ時間 : 3〜6時間 想定PL人数 : 4人

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《 あらすじ 》

 ロシュという宝石商の集う町にて、1人の宝石商が凄惨な変死体となって発見されました。現場からは空になった宝石箱が発見され、強盗殺人とされましたが、どのように殺害したのか、宝石は何処へ消えたのかはわからず迷宮入りとなりました。

 『羊飼い』はこの殺人事件を『魔女』の《魔術》によるものとし、『神子』に調査と、『魔女狩り』を命じます。調査の過程で『魔女』と噂される犠牲者の一人娘と接触し、彼女からの情報を元に調査を進めると、犠牲者は確かに《魔術》にて殺害されたものと確認され、さらに犠牲者が特大のダイヤを掘り当てた鉱夫を殺害し奪った事が判明します。それにより、殺害された鉱夫の妹がこの町に住んでいることを突き止めます。

 彼女こそが、宝石商を殺害した『魔女』であり、兄の「遺品」たる、特大のダイヤを有しています。その傍らには『憤怒の破壊者ビレト』が与えた使い魔の犬がおり、『魔女』を凶行へと駆り立てており、犠牲者の一人娘もその犠牲となろうとしていました。新たな犠牲が出る前に『魔女』と『魔獣』を打ち倒す事で、今回の事件は収束を迎えます。回収された特大のダイヤそのものは呪物ではありませんでした。

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《 舞台となる集落 》

 シナリオの舞台となる集落は「ロシュ」という名の新興の「町」です。近場の鉱山から産出された宝石はまずこの町に運ばれ、宝石商によってその価値を見出されます。

 特産として特に名を馳せるその宝石はダイヤモンドであり、かつて特大のダイヤが発掘されたという噂がたちましたが、肝心のダイヤは市場には現れなかった事からデマとされ、その事は変死事件が起こるまで忘れられていました。

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《 使用PCデータ 》

 PLが使用するPCは、サンプルキャラクターの「異端査問官の少年」「気だるげな医者」「家名背負う騎士令嬢」「瀟洒なる格闘家」を想定しています。PLはこれらのサンプルキャラクターの《性別》《魅力》《嗜好》《性癖》を、任意に変更できます。

 このシナリオは戦闘が2回想定されており、特に大罪人との決戦を前提としています。このため、サンプルキャラクターを用いない場合、PCは【戦士】あるいは【武術家】の《境遇》を有している者が2名、【医者】の《境遇》を有している者が1名いる事が望ましくあります。

 PCが戦闘技術を有しない場合は【暗殺者】の《境遇》を有する者による【睡眠薬】や【毒薬】での敵勢力の事前無力化が主軸となるでしょう。

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《 シナリオ作成時チャート結果 》

 このサンプルシナリオは【シナリオ導入チャート】【集落特産物チャート】【集落雰囲気チャート】【シナリオ作成補助チャート】の結果を元に作成されています。
 
シナリオ導入 「3:憤怒の魔女」
集落特産物 「10:宝石」
集落雰囲気 「4:安心」
シナリオ作成補助 「7:復讐のための」 「4:殺人」 「4:陰謀工作」 「6:彼の者の家」

 

【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − U 】

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《 シナリオ登場NPC − A 》

【 クロエ・ディアマン 】
性別 年齢 17 階級 高位市民階級
魅力 《グラマラスな体型》 《清楚な雰囲気》 《小柄な体型》 
嗜好 《凛とした顔立ち》 《真面目な雰囲気》 《爽やかな声質》
性癖 《恋話》 《談笑》 《宝石》
「そんな、そんな事が……。あぁ、ジョン、どうしてこんな事に……!!」

 今シナリオの「撒き餌」です。《楔》は既に【喪失】状態にあります。

 惨殺された宝石商ネビル・ディアマンの一人娘です。かつて鉱夫の恋人がいましたが、いずれ騎士階級の青年に嫁ぐ事が親の間で決められており、父親に関係を引き裂かれています。かつてのその恋人は父親によって殺害されていますが、事故死として聞かされており真相を知りません。しかし、まさか、という疑念は抱いています。

 日頃からの父親との不和は有名で、父親が惨殺された事件では、反発故に父親を殺害して隠蔽した、父親の宝石を今も隠している、と心ない噂を立てられています。そして父親の死体の凄惨さから、その噂は「父親殺し」から『魔女』へとエスカレートしており、婚約者である騎士との縁談は破談となり、孤立状態にあります。

 現在は噂から逃げるように屋敷に引きこもっていますが、クロエはネビル殺害の真犯人であるシェリから「兄を捨てた者」として恨まれ、命を狙われています。


【 シェリ・デュポア 】
性別 年齢 16 階級 中位市民階級
魅力 《猫目》 《スリムな体型》 《清楚な雰囲気》 
嗜好 《大柄な体型》 《真面目な雰囲気》 《爽やかな声質》
性癖 《宝石》 《束縛》 《依存》
《憤怒:4》《怠惰:1》《傲慢:1》 《暴食:2》 《色欲:3》《強欲:1》《嫉妬:3》
「私から兄を、全てを奪ったあいつらを、赦しはしない!!!」

 今シナリオの「大罪人」です。

 『憤怒の魔女』であり、《魔術》によって宝石商を殺害し、その死体を焼き払うという、異変の発端となる事件を起こしました。

 天涯孤独の身で、今も独身を貫いています。かつて兄がおり、兄が自身の嫁入りの際の持参金を稼ぐために鉱山へ働きに行き、そこで殺害されたことを知ると、《憤怒の罪》に飲み込まれ、『魔女』として覚醒しました。その後、復讐のために深夜、宝石商の元へ赴き、《魔術》を行使して惨殺しました。その際、兄が『ゴースト』となって『緋色の女王』に宿っていることを知ると、『緋色の女王』を回収し、かつて兄と遊んでいた秘密の場所へこれを隠しました。

 復讐を成した事で兄が戻ってきたと思い込んでおり、兄の『ゴースト』に執着し、永遠に自らの側にあるようにと束縛し続けています。そして、復讐はまだ終わっていないとして、兄の元恋人であるクロエ・デュアマンを『魔女』にしたてあげ、無残な最期を看取る事を楽しみとしています。その計画を兄の『ゴースト』に話し、そして反対され諌められた事に動揺し、「兄を奪われた」と逆恨みしてクロエの直接的な殺害を決意します。



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − V 】

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《 シナリオ登場NPC − B  》

【 ジョン・デュポア 】
性別 年齢 19(当時) 階級 中位市民階級
魅力 《大柄な体型》 《真面目な雰囲気》 《爽やかな声質》
嗜好 《グラマラスな体型》 《スリムな体型》 《清楚な雰囲気》
性癖 《援助》 《崇拝》 《宝石》
「私も妹も、もはや楽園には行けないでしょう。しかし、開き直り、罪を重ねてはいけない。」

 今シナリオの「端役(協力者)」です。

 成人後すぐに両親を失い、妹のシェリを養っていました。幼少時からこの町に住む若者らしく宝石の美しさに魅入られており、妹やかつての恋人に、美しい宝石をこの手にする事を夢として語っており、その夢は特大の赤色ダイヤ『緋色の女王』を掘り当てる事で成就します。

 しかし、その美しさに魅入られた宝石商ネビル・ディアマンに殺害され『緋色の女王』を奪われました。死体は鉱山事故を装われ埋めらながら、魂は自身が掘り当てた『緋色の女王』に束縛される『ゴースト』として現世にとどまっています。その未練は『シェリの幸福、あるいは救済』です。

 クロエとの別れは仕方がない事と納得しており、彼女への恨みは一切抱いていませんが、シェリの陰謀によりクロエが『魔女』の疑惑をかけられ衰弱していく事に苦悩しています。

 妹シェリが自身の復讐のために『魔女』となった事を悲しんだものの、宝石商殺害時に妹を守るために異界を展開し、結果的に復讐を補佐しました。しかしクロエの殺害計画をシェリが話した事により、その未練は妹を守る事から妹の凶行を防ぐ事へと変化し、『神子』が『緋色の女王』を発見したならば、その姿を現して全てを告白し『神子』に協力します。


【 ネメス 】
性別 年齢 階級 使い魔
魅力 《猫目》 《腹黒な雰囲気》 《愛嬌ある声質》 
嗜好 《小柄な体型》 《真面目な雰囲気》 《熱血な声質》 
性癖 《援助》 《歌唱》 《主従》
「君の復讐は正しい。お兄さんもそれを望んでいるよ。さぁ、やるんだ。」

 今シナリオの「端役(大罪人の配下)」です。

 『黒山羊』である『憤怒の破壊者ビレト』の使い魔の一匹であり、普段は飼い犬としてシェリのそばに控えています。人語を解し、会話が可能ですが、普段は通常の犬のように振る舞います。

 復讐の肯定者として復讐者の側にあり、その者の心の支えとして取り入り、復讐を唆し続けます。シェリにもそのように取り入り、兄の最期の真相を教え、言葉巧みに復讐心を煽り『魔女』に堕落させ、仇となる宝石商を殺害させました。その後も宝石商の娘であるクロエへの加害を「兄の復讐の代行」として教唆しています。

 ネメスはシェリに物理的な危機が迫ると魔獣となって敵対者を排除しようと試みる、あるいは幸運や事故に見せかけ保護します。そしてシェリに対して常に彼女の意に肯定的に優しく接していますが、決してシェリを案じて付き従っているわけではありません。彼が守っているのは、『憤怒の魔女』であって「シェリ」ではないのです。



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − W 】

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《 オープニング 》

 『神子』である4人のPCが『イデア界の修道院』にて深夜集い、語り合っている場面から開始します。GMはPLにPC間での紹介や、既知関係では掛け合いの談話を促すとよいでしょう。

 それぞれの関係がひとまず把握出来たならば、GMはPCを聖堂へ呼び出し、魔女狩りの使命をマルコシアスを通じて与えます。使命を下した後、PC達が現地集合の打ち合わせをして解散したならば、それぞれが準備を整えて現地へ向かう場面を演出したところでミドルフェイズへと移行します。

 この時、「気だるげな医者」と「瀟洒な武闘家」は、現地の住人としても構いません。【異端査問官の少年】の後見人は基本として「ポール・ジョルネ」となります。必要とあらば後見人から異端査問の指示が下る演出をして下さい。

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《 演出参考 》

 深夜。それは『神子』にとって、特別な意味を持つ。『神子』は就寝し眠りに入ると、【銀の鍵】という加護を通じ、その魂を『イデア界』へと転移させる。そこは荘厳な中空の修道院であり、同じ『神子』達が集う場所であり、君たちの守護天使である『羊飼い』が鎮座する場所である。

 君たちは、現世での《階級》や住む場所は異なれど、気心が合ったりするなどして、自然と深夜の会合でよく集まって話す仲となっていた。他にも『神子』はいるはずだが、今夜は君たちの集う場所には他の『神子』の姿はないようだった。

 そんな君達へ、修道院を維持する下僕『ウコバク』の1人が話しかける。

 「神子様方、羊飼い様が聖堂でお待ちやがりになってやがりますだよ。」

 言葉遣いの悪いウコバクに各自思うものはあるだろうが、『羊飼い』の呼び出しとあらば断るわけにはいかない。そこには「マルコシアス」という『羊飼い』が、君たち『神子』に、魔女狩りの使命を伝えるために待っているだろうから。
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 君たちが聖堂に踏み込むと、壇上には予想通り、背中に純白の翼を生やした騎士マルコシアスが立っていた。長椅子には他に誰もいない。天窓から注がれる黄昏の斜光を浴びるマルコシアスの姿は、神の御使いに相応しい神聖さと威厳を有しているように見える。マルコシアスは君たちが参上すると、十字の印を切り、語り出す。それは、ロシュという宝石商の集う町で起こった殺人事件についてであった。

 1、殺害されたのは〈高位市民階級〉である宝石商人ネビル・ディアマンであるという事。
 2、死体は獣に食われた上で焼かれたかの様であり、損壊状況から死因が特定できない事。
 3、発見現場である事務所倉庫には飛び散った血痕も延焼した形跡も存在しないという事。
 4、死体を運んで捨てたとしても、死体を運んだ荷馬車などの轍や足跡が存在しないという事。
 5、現場には規格外サイズの宝石箱が空になって転がっていた事。
 6、官憲は犯人に繋がる証拠は発見できていない事。
 7、犠牲者の一人娘であるクロエ・ディアマンが犯人として注視されているという事。
 8、クロエ・ディアマンが『魔女』であるという噂が現地で流れという事。

 羅列すれば不可解極まる、そして超常の存在を知る者であれば『魔女』の起こした事件であると推測容易な事件であった。しかし実際にそうであれば、官憲では手に余る事件であるという事でもあった。君たちは眼前の御使いに呼ばれた理由を確信できるだろう。

 「ロシュに向かい事件を再調査し、『魔女』の仕業であれば、打ち倒して火にかけよ。」

  詳細は現地にて直接集め、そのためにまずは現地の教会に赴いて聖職者と面会し、クロエ・ディアマンに対して【調査許可申請】を求めるように、とマルコシアスは付け加える。【異端査問官】には、明日にも現地に向かうよう〈枢機卿〉より指示があるだろうとも。そしてそれは実際にそうなるのである。

 マルコシアスは現状判明している事は全て話したと言い、その上で質問があればするようにと君たちに言う。質問がなければ、マルコシアスは解散を告げる。君たちは出立までの間に、「初めて下された魔女狩りの使命」について語り合い、そして思いふけるだろう。



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − X 】

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《 ミドルフェイズ 》

 PCが現地にて集合したところからミドルフェイズは開始します。ここから、PCが主導権を持って事件の調査を行っていきます。

 ● 業者利用

 PCはこの町に滞在中、町で業務を行っている業者を利用する事ができます。現地に【家】をPCが誰も有していない場合、【旅籠】あるいは【旅館】で寝泊まりする事となり、《所持金》が尽きれば野宿となります。

 PCは滞在中、これらの業者の利用や町の観光などを行う事で《性癖》の充足を試みる機会を得やすくなるでしょう。

 ● 調査許可申請

 【異端査問官】が現地の教会に向かい、聖職者と接触し、立場を明かしてクロエ・ディアマンの調査に来た事を伝えれば、聖職者はクロエ・ディアマンを対象とした【調査許可申請】を受理します。これは自動的に成功します。

 聖職者は彼女が『魔女』であるという噂の信ぴょう性に対して「無関心」です。彼にとって、事件が何かしらの進展を迎え解決したという結果のみが重要であり、その犯人が誰であるかは問題とはならないのです。自身が事件に巻き込まれない範囲であれば、聖職者は非常に協力的です。他の対象への【調査許可申請】も、彼の保身に繋がるのであれば自動的に受理されます。

 【異端査問官】あるいは「家名背負う騎士令嬢」が宿泊を求めれば、聖職者は了承しますが、空きのベッドは2つのみです。

 ● 官憲詰め所

 ネビル・ディアマン殺人事件に関して調査を行っています。【異端査問官】あるいは「家名背負う騎士令嬢」、つまりは《権力レベル:4》以上のPCが事件の調査に来たと伝えれば、現状判明している事を全てPCへ伝えます。その大半はマルコシアスが伝えた以上の情報ではありませんが、容疑者に関しての新情報があります。

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 被害者に恨み持つ者の資料として、被害者と取引のあった破産者や鉱山の事故死者と、その遺族の名前や現住所がリストアップされています。これを2時間かけて読んだ後【知識判定】に成功した者は、その中に「ジョン・デュボア(当時21)」という事故死した鉱夫の名前と年齢、その遺族としてただ一人の「シェリ・デュボア(現17)」という女性を見つける事ができます。

 ジョンは1年前の宝石鉱山落盤事故で行方不明となり、生存が絶望視され半年後に死者認定されました。この時の落盤事故の死者はこのジョンのみ、かつ目撃者もいないという状況で、判定成功者はその記述が気にかかります。

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 官憲詰め所では、それ以上の情報はありません。容疑者リストは持ち出しできません。持ち出しを強要するならば、【官憲】を相手とする【誘導判定】での〈対決判定〉に勝利する必要があります。この詰め所への調査は、リスト参照の時間を除いても2時間かかります。

 【異端査問官】あるいは「家名背負う騎士令嬢」が宿泊を求めれば、官憲は仮眠室の利用を認めますが、使用できるベッドは2つまでです。

 ● 疑惑逆探

 クロエ・ディアマンに対する【魔女疑惑】の噂を流した工作者を探る【疑惑逆探】の《陰謀工作》を行います。クロエ・ディアマンへの【調査許可申請】が受理されていれば、【手配判定】に「+10」を受けます。

 準備期間後の判定に成功すると、工作の【顔役】が《中位市民階級》である「シェリ・デュボア」である事がわかります。

 官憲詰め所で容疑者リストの【感知判定】に成功していた場合、その名前を思い出します。これにより、「シェリ・デュボア」への【調査許可申請】を行えるようになります。

 ● 参謀特定

 クロエ・ディアマンに対する【魔女疑惑】の【顔役】であるシェリに【参謀】がいるのか、いるとすれば何者かと確認するための【参謀特定】の《陰謀工作》を行います。クロエ・ディアマンへの【調査許可申請】が受理されていれば、【手配判定】に「+10」を受けます。

 準備期間後の判定に成功すると、【参謀】もやはりシュリ・デュボアである事が判明します。これはシェリが明確にクロエ・ディアマンを貶めようとする明確な悪意がある事の証拠となります。



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − Y 】

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《 クロエ・ディアマンへの面会 》

 被害者の一人娘であり、『魔女』の疑惑の渦中にあるクロエ・ディアマンの住む屋敷へと向かい、面会を試みます。しかし彼女は誰にも会おうとせず、従者に門前払いをさせます。

 【異端査問官】あるいは「家名背負う騎士令嬢」が面会を申しこめば、クロエは渋々面会に応じ、面会者一行を応接間へと従者に案内させます。

 応接間に現れたクロエは憔悴しきっており、現地到着した初日時点で【魔女疑惑】の《陰謀工作》によって彼女の《命運》は最大8点から4点まで減少しています。7日が経過する毎に《命運》は1点づつ低下していくため、あと1ヶ月で《命運》は「0」へと至り、彼女の破滅が決定します。

  クロエは自身がついに『魔女』として裁かれる日が来たと怯えており、面会者へ無実を泣きはらしながら訴えます。PC達が総意としてどのような対応を取るかにより、彼女は対応が変化します。

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 ● 「喚くな、魔女め!」

 クロエを当人の前で『魔女』と断定する対応を取ります。クロエの《命運》が恐怖によって「2点」減少します。クロエは最後の希望も破壊されて絶望し、その場で卒倒します。以後彼女はベッドに伏せってしまい、もはや何の反応も抵抗も返さず、彼女からはもう何も情報は得られません。彼女の体を調べても『烙印』は何処にも存在しません。

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 ● 「まだそうと決まったわけではない。」

 クロエを『魔女』の可能性もあると示唆しつつ、そうではないという希望を残す対応を取ります。クロエの《命運》が不安によって「1点」減少します。クロエはこれが最後の希望だと覚悟を決め、PCの調査に全面的に協力し、『烙印』の有無を調べるため男PCの前で裸になれなどの非倫理的な要求も受け入れ、正直に答えます。

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 ● 「状況的に貴方が『魔女』とは考えられない。」

 クロエの無実を全面的に肯定する対応を取ります。クロエは安堵し、表情を和らげます。彼女はPCたちに気を許し、質問には正直に答えます。さらに事件解決までPCたちを【賓客】として扱い、屋敷での宿泊と食事の提供を申し出ます。

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 クロエの面会に成功すると、《クロエ・ディアマンへの質問》へと移行できます。

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《 演出参考 》

 従者「お嬢様は今誰とも会いたくないと仰っておられます。どうかお引取りを」

 従者「い、異端査問官!!?あ、あわわわ……お、お嬢様、お嬢様ーー!!」

 従者「騎士の方?しばしお待ち下さい。」

 従者「ど、どうぞ……お上がり下さい。応接間までは私が案内させて頂きます……。」

 クロエ「私が、クロエ・ディアマンです。父の死と『魔女』の件で聞きたい事があると……」

 クロエ「私は、私は確かに父を憎んでいます!けれど、殺すなんて……!!」

 クロエ「査問官様も、私を、魔女と……? あ、あぁ、そんな…… ジョン……。(昏倒)」

 クロエ「わ、私に出来る事があれば、喜んで協力させて頂きます……。神の名に、誓って……、うぅ。」

 クロエ「知っている事があれば、包み隠さず全てお話致します。神の名デミウルゴスに誓って。」

 



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − Z 】

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《 クロエ・ディアマンへの質問 》

   クロエとの面会に成功し、協力を取り付ける事で、以下の情報を得ます。

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 ● 犯人の心当たり

 クロエは「心当たりが多すぎる」として、父親を「守銭奴」として非難します。そこには父親に対する憎しみが全面的に現れており、家族愛らしきものは感じられません。

 父親を憎む理由を問えば、もともと父は情に薄い性格であり労働者を酷使して多くを死に追いやったと告発します。そして愛を向けられた事など感じた事がないと言い、そして決裂の決定打として、かつて父親に政略結婚の道具とされて恋人と引き裂かれた事を告白します。

 恋人は宝石鉱山に務める「ジョン・デュボア」という青年であり、採掘した宝石を彼が父に卸す際に出会ったと言います。しかし鉱夫との恋愛を許さなかった父親に彼と会う事を禁じられ、その直後に彼が鉱山で事故死した事を父に伝えられたと言います。

 そして、彼には大事にしている妹がおり、妹が嫁ぐ際の持参金を稼ぐために鉱山で働いていたと言い。妹の名は「シェリ」という事を伝えます。クロエはシェリと交流があり、彼の生前は懐いていましたが、死後は「兄を捨てた」として敵意をむき出しにされ、それ以来会っていない事を話します。

 クロエは兄弟の住む家の場所を知っており、問われればそれを答えます。

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 ● 事件発生時のアリバイ

 事件発生時、屋敷にいたクロエ他従者は就寝しており、屋敷の警備員もクロエがその時間帯に外出した事は確認していません。ネビルの死体は深夜に見回りの自警団によって発見されており、発見される深夜3時の前日、少なくとも夜6時までは生存が確認されています。

 死体が見つかった場所は事務所倉庫であり、倉庫には厩もあり、その厩へ向かう道で発見されています。ネビルはその日は屋敷には戻らず、泊まりこむ事を従業員や警備員に伝えていましたが、その際、とても切羽詰まった顔をしていたと話しています。

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 ● 烙印の有無

 肉体のどこかにある『魔女の烙印』の目視確認を求めます。【クロエの信用】を満たしていれば、女性PCでの確認を受け入れます。男性PCが目視確認を強行すれば、「喚くな、魔女め!」の対応を取った事となります。【クロエの覚悟】を満たしていれば、男性PCでの確認も受け入れます。結果として、クロエには『魔女の烙印』が存在しない事を確認できます。屋敷中を探索しても、悪魔信仰などの異端信仰の証拠は一切存在しません。

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 ● 調査許可証

 クロエの屋敷を探索する公的な許可証を提示する事で、屋敷中を探索できます。屋敷中を探索しても、悪魔信仰などの異端信仰の証拠は一切存在しませんが、父親であるネビルの私室には【強化鍵】と【隠し扉】が床に仕掛けられており、その扉の向こうには階段で繋がった増築された地下室があります。

 隠し部屋にはネビルの不正取引の証拠や日記が残されており、そこには「ジョン・デュボア」を殺害し、彼が掘り当てた規格外の赤色ダイヤを奪った事が記されています。そのダイヤは『緋色の女王』と名付けられ、盗難を恐れて肌身離さずネビルが持ち歩いていた事が書かれています。

 そして殺害される数日前から、自身の周囲に異様な気配を感じ始め怯える様子が記されており、殺害したジョンの幽霊にとり憑かれ呪われていると記しています。最後のページには、「『緋色の女王』を幽霊に言われた通りに、明日の深夜に森のなかの洞窟へ納める事にした。幽霊の出る深夜でなければ許された事がわからない。」と記されており、その場所を記した即席の地図が挟まれています。その日記の最後の日付は、ネビルが殺害される前日の日付となっています。

 


【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − [ 】

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《 森のなかの洞窟へ 》

 ネビルの日記から洞窟の情報と地図を入手する事で向かえるようになります。森は馬は入れますが、馬車は入れません。町から出て現地に到着するまでの間に徒歩であれば30分毎、馬に乗っていれば15分毎に【方角判定】を行い、これに計4回成功しなければなりません。

 失敗すると30分を無駄に過ごす事となります。しかしその【方角判定】には地図が荒すぎる故に「−40」を受けます。この時、地図を対象に【推測判定】に成功する事で、その記述の意味を鮮明にでき、これによりペナルティを「−20」にまで軽減できます。

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 【方角判定】に2回成功すると森のなかへと入ります。以後、【方角判定】に失敗すると、30分の無駄な時間の浪費だけでなく、獣に襲われる危険に見舞われます。また、馬には悪路故に【乗馬判定】に「−20」を受けます。

 PCの代表者が、昼間では〈目標値:90〉、夜間では〈目標値75〉の【幸運判定】を行い、失敗すると、先頭のPCから「10PT」の距離の茂みから【狼】が「1D10÷4(最大3)」匹、1PT毎の間隔を維持した縦列で現れます。

  PCたちは先頭の【狼】相手に【隠密判定】の〈対決判定〉を行い、全員が勝利すると【狼】との戦闘を回避できます。あるいは、PCの代表者が「−狼の出現数×10」のペナルティを受けて、先頭の【狼】相手に【隠密判定】の〈対決判定〉に勝利した場合も戦闘を回避できます。これはどちらかしか選択できず、判定に失敗すれば【狼】はPC達の存在に気付いて戦闘となります。

 一度【狼】に襲撃され、それに勝利した場合、以後【狼】は気配を消し、隠密の必要も戦闘も発生しなくなります。

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 【方角判定】に計4回成功すると、地図に記された洞窟のある場所へと到着します。

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《 狼との戦闘 》

 狼は最も《機敏》が低い者の【脚部】へ集中して攻撃を行います。そしてその獲物を【脚部重傷】に追い込んだならば、その次に《機敏》が低い獲物へ集中攻撃を行い、これを繰り返します。全員を【脚部重傷】にまで追い込んだ場合、【脚部】をさらに攻撃し、【大量出血】をそれぞれに与えていきます。

 狼にPCが敗北して全滅した場合、ゲームはその時点で終了となります。

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 ● 敗北時の処理

 襲ってくる狼の群れの過半数が、最低一個の【○○重傷】や【大量出血】を受けたり【死亡】した場合、狼の群れは戦意を喪失し逃亡します。

 狼の群れを退けたものの、全員【脚部重傷】を受けており、乗物も利用できない状況である場合、PCの代表者〈目標値:75〉の【幸運判定】を2時間毎に朝6時以降になるまで行います。この時、連続して4回失敗した場合、【狼】の群れが戻ってきてPCに襲撃をしかけます。

 襲撃を受けなかった場合、生存者は森から街道に出る事に成功し、通りすがりの行商人の荷馬車に発見され、応急手当として【重傷】や【大量出血】を受けた箇所に【包帯】を巻かれ救助されます。行商人はPCが望めば町への帰還を手伝い、死体があれば荷台に乗せる事を渋々ながらも了承します。

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《 洞窟に隠されていたもの 》

 洞窟は偽装されており、「−20」を受けた【探索判定】に成功する事で発見できます。洞窟内部は人の手が加えられており、小さな坑道のようになっています。馬に乗って入る事はできません。坑道は一本道で、10PT程歩けば袋小路の最奥部に到達します。

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 最奥部には比較的新しい祭壇が設けられており、そこにはカヴェル教団を冒涜する「逆十字(PLにとっては普通の十字)」が掲げられています。そして片手で持てるほどの小箱が置かれています。この小箱は〈総重量:10〉まで保管できる【鍵付き宝箱】と扱います。小箱を開けると、そこには規格外の赤色ダイヤ『緋色の女王』が入っています。

 『緋色の女王』は〈重量:5〉〈権力:99〉〈価格:換金不可〉の【非消耗品】と扱います。

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 ● 夜間にダイヤを発見した場合

 その時の時間帯が太陽が沈んだ夜間(午後7時〜午前5時)であれば、それを確認すると同時にジョン・デュボアの『ゴースト』が現れます。今が夜間でなくとも、『緋色の女王』を所持したまま夜間となれば、同様に『ゴースト』が現れます。PCは眼前の『ゴースト』に敵意がない事がわかります。

 ジョン・デュボアの『ゴースト』は、『神子』であるPCの特異性を一目で見抜き、交渉を持ちかけます。その内容は、妹であり『魔女』であるシェリ・デュボアの凶行、クロエ・ディアマンの殺害を食い止めてほしいというものです。ジョンはネビル殺人事件の真相をPCへと伝えます。

 

【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − \ 】

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《 ジョン・デュボアの告白 》

 ネビル殺人事件の真相を語る際、ジョンは懺悔のようにそれまでの事を告白します。

 ネビルに殺害されて後、妹シェリの幸福を見届けられない事が未練となって、魂が『緋色の女王』に束縛されてしまった事。

 ネビルは守銭奴ではあるが『緋色の女王』の美しさは金に換算できないと市場に流す事を拒否したのに対して、自身はあれほど求めた美しき至高の宝石を、莫大な財産と何処にでも妹を嫁がせられる持参金としての金に換算してしまった事。

 ネビルへの怒りが自己嫌悪の苦悶に打ち消された事。

 そして自身の夢である「最も美しい宝石を自身の手で掘り出し、それを宝石飾りとして加工する事」の足がかりたる『緋色の女王』をネビルにシェリへ届けさせる事でネビルを赦そうと決意した事。

 直接シェリに届けてもシェリは混乱するし、『緋色の女王』がシェリの手元にあればそれを狙って悪人が押し寄せるだろうと心配し、かつて妹と遊んだ秘密基地たるこの洞窟に届けさせる事で、その真意を察してもらおうと思った事。

 しかし、それも、ネビルが洞窟に向かおうと出発しようとしたその時に、『魔女』となったシェリが復讐のためにネビルを殺害した事で崩壊したと語ります。

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 ● 事件の真相

 シェリは犬とともに空から音もなく現れたと言います。この襲撃が町の自警団に目撃されれば、もはやシェリの幸福は失われてしまう。そのため、ジョンはすかさずシェリとネビルを「異界」に隔離し、邪魔が入らぬその世界で、妹が、そして犬が魔獣と化してネビルを惨殺する様子を傍観していた事を告白します。現場に殺人の痕跡が残っていなかったのは、現場が現世ではなかった故だったのです。

 ジョンは『魔女』に堕ちた時点でシェリの幸福はもはやなく、ネビル殺害を補助した自身はもはや神の御下へ行ける資格はないと、懺悔するように告白します。そして、次にシェリが狙っているのはクロエであり、彼女を魔女として貶めたのはシェリであると告発します。

 シェリはクロエが噂によって孤立し、消耗して自殺する事を狙っているとし、それを自身が咎めた事で計画を変更したと続け、今の目的は、クロエが自殺する直前に真実を暴露し、絶望の果てに絶望を重ねてネビルのように惨殺する事だと伝えます。

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 ● クロエとの破談

 ジョンにクロエとの破談について問えば、階級格差故に恋を諦めた事は事実と語ります。クロエと結婚できれば、妹を高位階級にまで引き上げられ、持参金の問題も解決するという打算もあった事を認めます。ネビルからその事を指摘され、政略結婚のために騎士階級へ娘を売り飛ばしたネビルと同じ事を企んだ自身に幻滅し、身を引いてしまったのだと聞き出せます。この事をクロエに伝えた場合、【クロエの決意】が満たされます。

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 ● 緋色の女王を握りこむ手

 ジョンは、シェリが『緋色の宝石』に《魔術》を行使し、何処にいってもこれですぐに見つけられる、と話していたとも伝えます。これを聞いたPCは【知識判定】に成功すれば【見えざる手】の《魔術》に違いないと確信します。《緋色の宝石》をこの場から動かせば、シェリは兄が宿る《緋色の女王》の異変に気づきます。

 以後、シェリはネメスと共に《緋色の宝石》の回収のために動き出し、それを有している者を『魔女』の力を駆使して追跡し、殺害の後に回収を行う事を再優先にして動きます。

 《緋色の女王》をPCが有している上でシェリとの戦闘に入ると、ジョンの『ゴースト』はシェリに戦闘をやめ裁きを受けるよう説得を試みますが、シェリは聞く耳を持ちません。

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《 決戦の時、来たる 》

 ジョンの告白を聞いたならば、以後、シェリとの戦闘になった際、その時が夜間、かつ『緋色の女王』がその場にある場合、ジョンはシェリを逃さぬよう異界を展開できます。異界にはPCと、シェリとネメスのみが隔離され、そこで行われる戦闘は現世に影響を与えません。展開するかどうかの判断はPCの任意で決定できます。

 異界が展開されると、シェリは【箱庭の扉】の《魔術》が行使不可となります。異界は朝日が登るまで、あるいはどちらかの陣営が無力化されるまで展開されます。

 

 

【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − ] 】 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《 シェリ・デュボアとの面会  》

 デュボア兄弟の情報を官憲の容疑者リストやクロエから得ていた場合、デュボア兄妹の家に赴く事ができるようになります。家にはジョンの遺族であるシェリが住んでおり、クロエに面会する前に尋ねればシェリと飼い犬である小型犬のネメスが出迎えますが、クロエ面会後では誰もいません。

 シェリがいる場合、訪ねてきたPCを快く家の中へ迎え入れます。シェリの側にはネメスがシェリを守るように付き従っています。ネメスはPCには全くなつかず、撫でようとしても身を躱し、それでも触れてこようとすれば噛み付いてきます。

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 ● 兄について

 シェリに兄の事を尋ねれば、気丈に笑顔を返します。そしてジョンにどれだけ護られ、助けられていたかを話しだします。両親が流行病で亡くなった後、自身を養うために働き出した事、働きながらも宝石事業を興す夢を持っていた事、その習作が今身に着けている宝石飾りだという事、いい家に嫁がせられるように持参金を稼ごうと宝石鉱山ヘ出稼ぎに出た事、そして、一年前に事故死し、その遺産を引き継いで暮らしているという事を語ります。

 兄の事を語るシェリの瞳は、在りし日の思い出を見ているかのように輝いていますが、その死が語られる時は、その光は消えうせ、悲しみと怒りを滲ませて言葉を震わせます。

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 ● 事件について

 ネビル・ディアマン殺人事件について尋ねれば、話題になっている事以外はわからないと言います。この時、PCがシェリの表情に気をかけていれば【知覚判定】を行わせます。

 これに成功すると、シェリが「笑みをかみ殺した表情」を一瞬のぞかせた事に気づきます。それを追求するとシェリは戸惑い、飼い犬のネメスがPCを吠え立て始めます。シェリはPCとの面会を打ち切り、帰るように要求します。

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 ● クロエについて

 クロエの事を尋ねれば、シェリは明らかに不機嫌な表情となり、クロエを「お金欲しさに兄を捨てた」と非難しはじめます。シェリはクロエがジョンのかつての恋人だった事を話し、たまに帰ってくる兄が話すいい人と聞いて、その時はいい人だろうなと思ったと語ります。

 しかし兄から彼女の父に交際を禁じられと聞かされ、それを階級格差を理由にジョンを捨てたと解釈し、兄の事故死が認定された半年前に面会に来たクロエに激高した事を語ります。彼女のクロエを語る言葉には憎しみが込められており、険悪という域を超えている事が用意に推測できます。

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 ● 調査許可証

 シェリの家を探索する公的な許可証を提示する事で、シェリは渋々ながらもそれを受け入れます。探索の間、シェリはそれに付き添い、ネメスも常にシェリに付き従っています。

 家を探索しても、悪魔信仰などの異端信仰の証拠は一切存在しませんが、兄の部屋は死が認定された今でも生活感を感じさせる程に維持されています。石細工が陳列された兄の部屋の机の中には古い日記があり、苦労の中、妹のために身を粉にして働く兄の情愛が感じられる内容が綴られています。

 これを読んだPCは【知識判定】を行い、成功すると、日記には飼い犬のネメスの事は一切記述されていない事に気が付きます。それをシェリに問えば、ネメスは兄が行方不明になった一年前に、不安と悲しみに暮れる中で拾った野良犬だと説明します。ネメスは兄の帰りを待ち続けるシェリを窓越しにずっと見つめており、それに気がついたシェリがネメスを招き入れた後、家族となったと語ります。そこには疑いようのない愛犬への情愛を感じます。

 ネメスに触れようと執着するPCがいれば、【素手】による【攻撃判定】の〈対決判定〉を行わせます。ネメスの【回避判定】の〈目標値〉は「40」です。これに勝利しネメスへ触れたPCには【感知判定】を行わせ、成功すればネメスに何かしらの魔力を感じとる事ができます。



【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − ]T 】

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《 シェリ・デュボアの暗躍 》

 シェリは【魔女疑惑】の《陰謀工作》によってクロエの《命運》が「0点」になる4週間後まで、クロエが憔悴していく様を、【闇の従者】にて使い魔としている烏を使って監視、鑑賞しています。そしてその時が来ればクロエの屋敷に現れ、クロエに真実を暴露した後に惨殺を試みます。その際に遭遇した従者はその場で殺戮し、ネメスは邪魔な警備員を襲撃します。警備員は突如現れた異形の怪物に対して恐怖し、殺されるがままとなるか、あるいは逃亡します。クロエの惨殺が成れば、屋敷を《魔術》で燃やして逃亡し、『緋色の女王』を回収した後、ロシュの町を離れ、二度と戻ってくる事はありません。

 クロエの屋敷の周囲をPCが注視する場合、【感知判定】を行わせ、成功すれば1羽のカラスがクロエの私室が覗ける木の周辺から離れようとしない事に気が付きます。食事に出かけてもまたその木へと戻ってきます。烏に対して【隠密判定】を行わず観察を行い続ければ、烏は観察者に気が付きます。シェリは烏が注意を引いている事に気づき、烏を自宅まで引き返させ、以後は自宅へ向かう者を監視しはじめ、警戒を強めます。PC達が自宅に向かってくるのを確認すると、事前に兄の部屋の日記と身の回りの荷物をまとめ、『緋色の女王』の回収へと向かい、そのまま逃亡し戻ってくる事はありません。

  烏がクロエの屋敷を監視している間にPCがクロエに面会する、あるいはその前にシェリと面会した場合、シェリとネメスは【異端査問官】が来たと判断し、やはり荷物をまとめて家を離れます。

 その後、住居を森の洞窟に移してクロエの監視は続けられます。森の洞窟に拠点を移している間、ネメスが洞窟の入口周辺に潜伏して侵入者を警戒しており、シェリが祭壇にてPCと対峙した場合、ネメスは気配を殺してPCの背後へと忍び寄り、戦闘になれば魔獣化してPCを不意打ちします。シェリが洞窟に移って後に、クロエを監視する烏がPCに気づかれたと判断すれば、即座に『緋色の女王』を持って逃亡し、やはり戻ってはきません。

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《 シェリ・デュボアの逆鱗 》

 シェリとネメスに対して、彼女たちの意に反する対応を取り続ける事により、その場で戦闘になる可能性があります。家から出て行くように促しながらも居直る、ネメスの魔力反応に対して攻撃的意思を明確にする、『烙印』の確認のために裸になるように強要、あるいは襲いかかる、『緋色の女王』を所持して面会を行えば、シェリは『魔女』としての本性を現し、ネメスは魔獣の姿となって、その場で戦闘が始まります。

 PCがシェリ・デュボアに【睡眠薬】や【毒薬】を服薬させようと差し入れを行った場合、PCがいない時にネメスが事前に毒味を行います。ネメスは毒が効かないため、服薬を試みた事が完全に露見します。以後、シェリとネメスは洞窟へと拠点を移します。

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《 シェリ・デュボアとの戦闘 》

 シェリの家やクロエの屋敷での戦闘では、PCとシェリとの戦闘開始時点での距離は基本3PTとなります。洞窟での戦闘では5PTとなり、PC最後尾の背後2PTにネメスが出現します。ネメスの魔獣化は瞬時に行われ、戦闘開始時点で魔獣化が完了しています。

 『悪霊払いの収穫祭』を展開していない場合、ネメスが壁となってシェリに逃亡を促し、シェリは逃亡を図ります。その時、可能であればシェリは【箱庭の扉】の《魔術》を試みます。

 逃亡に成功すると、『緋色の女王』の隠し場所へと向かい、『緋色の女王』を持ってロシュの町から姿を消し、戻ってくる事はありません。PCが『緋色の女王』を有している上で逃亡に成功した場合、シェリは町の焼却を目論見、【炎獄の魔獣】の《魔術》を行使し、火災を撒き散らしながらなりふり構わず打倒されるまで無差別に攻撃を行います。ネメスが生存している場合、魔獣の姿となって無差別に人々へ襲いかかります。

 『アルコーン』が《悪霊払いの収穫祭》を許可する条件は「シェリが《魔術》を行使するのを確認している。」「ネメスが魔獣化している。」「臍と股間の中間部にある『烙印』を目視確認している」「ジョン・デュボアの告白を聞いている」のいずれかが満たされる事です。

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《 シェリ・デュボアの逃亡 》

 上記いずれかの展開に至ってシェリがロシュの町から逃亡した場合、マルコシアスから下された使命は失敗します。

 

 

【 緋色の業火 − 敵対存在 − 異形 】

【 ネメス 】
《 命運 : 13 》   《 権力レベル − 》 〈 階級:なし 〉〈 学歴:なし 〉
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《 境遇 》   〈 なし 〉
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《 能力値 》
【 器用:70 】 【 機敏:80 】 【 体格:50 】 【 知恵:70 】 【 意思:80 】
【 権力:− 】 【 財力:− 】
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《 武器 》
〈 種別: 片手用相当 近接武器 〉 〈 射程: 0PT 〉
 〈 攻撃値 : 70 〉 〈 威力: 2 〉 〈 重量: − 〉
〈 種別: 片手用 近接武器 〉 〈 射程: 0〜1PT 〉
 〈 攻撃値 : 70 〉 〈 威力: 1 〉 〈 重量: − 〉
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《 防具 》
【 毛皮 (装備解除不可) 】
【 基本回避 】 腕部:  40 脚部:  40 急所:  40 頭部:  40
防具防護 腕部:− 脚部:− 急所:− 頭部:−
【 合計回避 】 腕部:  40 脚部:  40 急所:  40 頭部:  40
《 特色 》
異形 社会的な活動を前提とした判定は行えず、また影響を受けません。《意思》を使用する判定に自動的に成功します。毒や薬の影響をうけません。《命運》が「0」になると【死亡】します。
炎熱耐性 火傷や高熱の影響を受けません。
猛獣 【移動】を行う際、「3PT」まで移動できます。【牙】攻撃を行った際、命中時に対象と【揉み合い状態】となります。
超感覚 真の闇を月明かりのように、月明かりを昼間のように見る事ができます。【感知判定】【看破判定】【追跡判定】に「+20」を受けます。
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「ここでシェリを失うと、ご主人様が悪い機嫌をさらに悪くしちゃうんだよ。だから死んでね。」
《 概要 》

 飼い犬としてシェリの側に控えているネメスが、本来の姿である魔獣へと変化した姿です。ライオンのような赤毛の鬣と、ラッパのような耳を有し、乱ぐい歯を裂けた口から覗かせる、大型犬サイズの異形の猫科の猛獣の姿をしています。打倒されればその死体は塵のように崩れていき、消滅します。使い魔故か自身の死を主人の元への帰還として認識しており、「ご主人様に怒られるなぁ。」と他人事のように呟きながら消えていきます。



【 緋色の業火 − 敵対存在 − 人間 】

【 シェリ・デュボア 】
《 命運 : 12 》  《 権力レベル 2 》 〈 階級:中位階級 〉〈 学歴:義務教育 〉
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《 境遇 》   〈 策士 〉
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《 能力値 》
【 器用:60 】 【 機敏:60 】 【 体格:40 】 【 知恵:80 】 【 意思:80 】
【 権力:40 】 【 財力:40 】
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《 武器 》
短剣 〈 種別: 片手用 近接武器 〉 〈 射程: 0PT 〉
 〈 攻撃値 : 60 〉 〈 威力: 1 〉 〈 重量: 5 〉
 〈 備考: 「フェイント」を行う際、《リアクション》に「−10」。 〉
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《 防具 》
【衣装 : 服】+【鎧 : なし】+【装身具 : 宝石飾り】
【 基本回避 】 腕部:  20 脚部:  20 急所:  20 頭部:  20
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《 特色 》
『憤怒の魔女』 「憤怒の烙印」を有する『魔女』です。《魔術》《魔術妨害》《穢れる》を行えます。ただし、『穢れる』について、既に《憤怒》《怠惰》《強欲》を指定済みです。
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「せっかくお兄ちゃんを取り返せたのに、また奪われるなんてそんなの嫌よ!」
《 概要 》

 『魔女』として覚醒したシェリ・デュボアのデータです。《憤怒》を原罪とする『大罪の烙印』の《魔術》を行使します。ネメスが健在な内に【炎獄の魔獣】の準備を整え、その後は前線に立って【短剣】で攻撃を行います。その際、『緋色の女王』を有している者を優先的に攻撃します。

 【炎獄の魔獣】の発動前にネメスが倒されれば、動揺して準備を中断します。その後は【檻の綻び】や【炎の舞踏】にて攻撃します。



 
【 サンプルシナリオ  緋色の業火 − ]U 】

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《 兄妹の末路と堕落判定 》

 『憤怒の魔女』であるシェリとネメスを打ち倒す、あるいはシェリがロシュの町から逃亡する事で、事件は収束に向かいます。その際、『緋色の女王』に束縛されていたジョンの未練は晴れ、同時に『ゴースト』としての存在を保てなくなりつつあります。

 シェリを火葬した後に埋葬の儀式を行う事で、『魔女』は完全に葬られます。その火葬の際、PCとジョンにだけ聞こえる声で、孤独に震えて兄を探すシェリの嘆きが聞こえてきます。その声は憎しみや憤怒を感じさせず、ただ家族がいない寂しさに泣く少女そのものの印象を与えます。

 ジョンはそれを聞くと、今回の事件を解決してくれた事に感謝の礼を伝えると共に、自身もシェリと共に逝き、しかるべき罰を受けると言います。『緋色の女王』を誰が所有するかについてはPCに託されます。

 その後、シェリの埋葬の儀式が完了した時にはジョンの『ゴースト』は消滅しています。

 クロエに『緋色の女王』を託す場合、忌まわしき惨劇の象徴としてクロエは拒否します。しかし事の経緯をすべて明かしたならば、クロエは『緋色の女王』を受け取り、ずっと大事に持ち続ける意志を示します。クロエが『緋色の女王』を受け取った場合、【クロエの決意】が満たされます。

  上記のイベントがすべて終わった時、GMはPC全員に【堕落判定】を行わせます。その処理が終了するとともにエンディングフェイズへと移行します。

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《 エンディング 》

 ミドルフェイズでの結果が反映されます。

 シェリとネメスを打ち倒し、火炙り(火葬)と埋葬の儀式を完遂させているならば、魔女狩りの使命は達成されます。マルコシアスは労いの言葉をかけ、次の聖務に備えて休息を取るように命じます。

 クロエが自殺をしたり殺害されているなどして破滅した場合、過程に問題があったとし、反省と改善に務めるようにとマルコシアスから忠告を受けます。シェリを取り逃していた場合は休息の後に追跡を命じられます。

 【クロエの決意】が満たされた場合、『緋色の女王』は基本としてクロエが《楔》として秘密裏に管理する事となります。そしてPC全員は「クロエ(高位市民階級)との友好関係」の《コネクション》を得ます。今後彼女と再開する事があれば、彼女は出来うる限りPC達に協力する事を惜しみません。

 しかし、クロエを魔女扱いし、クロエの《命運》が「1以上」維持された上で【クロエの決意】が満たされる事なく終わった場合、PC全員はクロエから著しい不信と敵愾心を抱かれ「クロエ(高位市民階級)との敵対関係」の《コネクション》を得ます。

 結果としてPCが【死亡】していた場合、その亡骸は故郷の墓地へ運ばれ埋葬されます。

 PCの誰かが『緋色の女王』を取得した場合、以後にその所持が公になれば、その美しさを求める好事家達からの嫉妬や敵意を抱かれ、その対処に追われる事となります。

 それぞれの演出が終了すれば、シナリオは終了し、アフタープレイへと移行します。

 お疲れ様でした!!

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《 破門 》

 魔女狩りの達成未達成に関わらず、その過程にて不必要な無法行為が目に余ったと判断されれば、その無法行為を以後慎まなければ『神子』の資格と加護を剥奪される『破門』の警告を受けます。警告を3度受けた者は『破門』が確定します。

 『破門』を受けた『神子』は、以後はただの人間として生きていく事となり、《堕落レベル》が規定値に達するのを待たずしてPCとして【ロスト】し、やがて『魔女』となった姿が確認される事でしょう。

 この基準はGMが、PCが『魔女』のような無法行為行おうとした際に「それは破門に繋がる行いだ」とPLに警告し、その上で強行した際に与えるものとします。

 そうした行為の中で「それは即破門に直結する外道だ」として警告する域の無法行為(『神子』としての活動から逸脱した強盗殺人や強姦など)を強行したならば、『破門』は確定します。

 『破門』は原則として「ゲーム内の常識に照らし合わせて判断」ではなく、「ゲームの域を超えた不快行為」へのペナルティとして扱って下さい。『破門』を受けたPCは『魔女』としてのPC化も認められるべきではありません。そして同時に、『破門』は決してGMからPLへのハラスメントのために行うものではありません。乱用はGMの信用を損ない、ゲームそのもののプレイ機会を失う事に繋がるでしょう。

 『破門』やその警告が発生した時点で「事故」が発生したものと扱い、参加者は摺り合わせを十分に行うようにして下さい。

 

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