【 超常現象−T 】
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現世には大規模な自然災害という神の怒りとも例えられるものはありますが、そうしたものとは特異な災害的現象が存在します。それらの渦中には、それを生み出すに至る起因や原因となる存在があり、その対処を行うために、『神子』をはじめとする、対《魔術》の心得を有する者達が投入されます。 そうした災厄には『魔女』が引き起こすものもありますが、それを良しとしない『魔女』がその対処に乗り出す事もあります。このため、『神子』と『魔女』の呉越同舟となる珍事が時折発生します。
現世において、おそらく最も多く直接的に災厄を与えうる、危険な書物や情報媒体です。多くは書物の形ですが、中には石版が含まれます。 ごく稀に現代語ではないものもありますが、図書館などで古語の書物にあたれば、その中のものであると判明します。この性質は、古代から現在に至るまで、どこかで生み出され続けている事を示しています。
『禁書』には著者の名が記される事は稀で、その文面はつたない走り書きで記されているものが大半で、文章力も低いもので溢れています。読み取れない場合は言語の問題よりも、この字の汚さや読むに耐えない分かりづらい文章が主因です。 論文のように難解ながらも綺麗に読みやすくまとめられている『禁書』の場合、著者の名前が確実に記されています。その著者はかつての古代文明の研究者に多く、『レムナント』に調査に趣き、そして気が触れて戻ってきた狂人が多くを占めます。この事から、著者名なしの汚い『禁書』は、『レムナント』に何かしらの理由で踏み込んだ、学の程度が低い者達が、何かを知ってしまい衝動的に書き記したものであろうと推測されています。 『禁書』で得られる知識は「読み手の望みを叶える力」となり得るものであり、それゆえに巻き起こる事件や災厄の方向性は数多に渡ります。 『禁書』で得られる力の多くは特定の《魔術》の取得や、その抵抗の術を記したものです。ですが、『魔女』の《魔術》とは異質な、そして大規模な災厄をもたらす知識を与えるものも存在します。 抵抗力を与える『禁書』は【異端査問官】など魔女狩りを行う者達が携帯します。それ以外は《焚書》の対象となり、回収が義務付けられており、有するものは『魔女』と扱われます。 後者の大規模災厄をもたらす『禁書』は、さながら物言わぬ意思を有しており、読み手を『書物』が選びます。資格なしとみなされれば、『禁書』が暴走し、資格なき者もろとも現場を飲み込み、異界を作り上げます。資格ありとみなされれば、『禁書』は読み手によって制御され、大災厄の発生の有無はその読み手の意思に左右されます。
『禁書』は禁制品であり、売買は禁じられ発覚すれば火炙りとされます。しかし力を求める者の数は、そうではない者を常に圧倒するためにその需要は高く、『禁書』を取り締まる教団内部が腐敗しており、処分指定されたはずの『禁書』が闇の流通ルートに流されて所在不明となる事も珍しくありません。また処分されるために写本が作られる事もあり、『禁書』は一向にその数を減らす様子がありません。 『禁書』は、その内容を知識として得ても、書物を実際に携帯しなければその内容を実践する事ができません。このため『禁書』の読み手は、知識を得たからといってそれを捨てたり譲渡する事はできず、常に所有し続ける必要があります。 『神子』はこうした野に放たれている『禁書』を回収する使命を、『羊飼い』から与えられます。『魔女』も同様に回収を行う事があり、鉢合わせてしまうと面倒な事となるでしょう。 |
【 超常現象−U 】
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プルガトリウムの大地に点在する、楽園の残骸にして古代文明の都市廃墟群です。数千を遥かに超える年月を経てもなお完全に崩壊せずその姿を止めています。 未崩壊の場所もあれば、完全に崩壊している場所もあり、その全てが維持されているわけではありません。廃墟には木材の家具らしきものの残骸も放置されていますが、触れるとまず塵となって崩れ去ってしまいしまいます。 居住区にはその外観から照明器具と見受けられるものや、使用意図不明な箱や板状のものが机の上などに置かれています。幅広の道や厩と思われる場所には馬を有さない鉄の馬車が数多に放置され、とくに広大に開けた屋外には、乗り込める鉄の巨鳥が並んでいる事もあります。 不思議な事に、看板などはあるものの、書物とみられるものは『レムナント』で一切確認されていません。古代文明での文書での連絡網はどうなっていたのか、あるいは何かしらの理由で全てが失われたのかと推測は立つものの、真実は謎のままとなっています。
『レムナント』の外縁から始まる廃墟の荒廃度合いは中心に近づくほど軽くなっていきます。しかし同時に、突如不自然に灯りが消える、携帯食料が瞬時に腐敗する、袋の飲料水が血液に変わるなど、異常な現象が来訪者を包み込み、周囲にこの世ならざる存在の気配が感じられるようになります。 現時点で、ある程度の安全が確認できているのはそこまでであり、それ以上中心へ踏み込んだ者は突如周囲に満ちる霧に包まれ行方不明となります。野生動物すらも近寄りません。 行方不明となった者は、その殆どが近いうちに外縁部に物言わぬ躯となって発見され、その遺体には尋常ではない傷跡が残っている場合もあれば全くの無傷のまま息絶えているものもあります。 共通点は、遺体のどれもが恐怖に満ちた絶叫の表情のまま死亡しているという事です。 極稀に霧から生還した者が発見されますが、気が触れているか、全くの別人のように人格が豹変した上で記憶を一切失っているなど、常人として戻ってきたものは確認されず、行方不明のまま消えてしまう者もいます。
過去に3度程、大規模な調査隊として騎士団が霧の中へ入り込みましたが、いずれもそれまでの行方不明者と同じ末路を辿っています。そして、これらの総犠牲者数は《魔女戦争》の次に大きいものとなりました。 調査団を派遣した時の教皇も、これ以上の調査に益はないと判断し、レムナントを「残してはならぬ名」の信仰によって生み出された呪われし遺跡と断定し、その維持や補修は以後永久に禁ずる事を宣言しました。 その後、街道では外縁部が地平に隠れるほどの距離で立ち入り禁止の看板がたてられ、迂回路が設けられてました。 レムナントの危険性は『羊飼い』すらも認めており、よほどの事がないかぎり『神子』がレムナントに近づく事を禁じています。
俗にいう「幽霊」や「心霊スポット」にて発生する超常現象です。プルガトリウムでは「魂」の存在は実在するものとして扱われており、『羊飼い』や『魔女』もそれを肯定します。しかし、その魂が肉体を喪失した後、何かしらの理由でその場に留まってしまう事があります。 『ゴースト』の多くは未練によって縛られ、未練が果たされれば自由となり、以後姿を表さなくなります。憎しみにとりつかれた『ゴースト』は、未練によって正気を失い、惨劇を引き起こす事があります。 『ゴースト』は肉体的な接触が不可能であり、会話は念話で行います。 その性質上、武器のたぐいは一切通じず、それを払う(《命運》を「0」とする)ためには特殊な条件を必要とします。 『メモリー』は『ゴースト』の人格性が喪失し、その記憶のみが縛られているもので、やはり深夜帯に周囲を異界化させます、その異界では、「残したい記憶」が具現化され、そこで擬似的な『ゴースト』が発生する事がありますが、残された記憶により生み出された存在故にコミュニケーションは行えません。 『メモリー』の生み出す異界には核となる「遺品」が何処かに隠されており、それを破壊する事で異界化は永久に解除されます。 |