【 神子の加護と奇跡 − T 】

__《 イデア界の修道院 》___________________________

 『神子』は『アルコーン』より、『イデア界』を行き来するための術【銀の鍵】を与えられています。それは『魔女』のように直接その身を異次元に空間転移させるというものではなく、『夢』を通じて魂を『イデア界』へと送り込むというものです。『神子』はそうして『イデア界』へ至るための眠りを任意に取る事ができます。眠っている間、肉体は通常通り休息状態になり、魂が抜け出ているため全くの無反応となります。肉体に危害が与えられれば、即座に魂は肉体へ戻って意識が覚醒します。

 夢を通じて『イデア界』に至ると、『神子』は巨大な壁で囲まれた荘厳で広大な修道院の門内に立っている事に気が付きます。また服装も眠った時のものではなく修道士、修道女が纏う衣装となっています。所持品の大半もなく、『アルコーン』が認可した物品のみが持ち込みを許されます。『イデア界』の大空は黄昏色に染まっており、門や壁の外側は大地が途切れ、この修道院が遙か天空に浮いているように見え、その外輪の縁に立てば黄昏の空を見下ろせます。『イデア界』から現世に戻る時は、この縁より飛び降りる事で行えます。この時、飛び降りる事に対して恐怖を抱く事はありません。

__《 修道院の環境 》______________________________

  修道院の本堂は大聖堂ともいうべき規模で、遥か高みにある天窓からは壇上に向かって黄昏の光が降り注ぎ、反射光が大聖堂全体を照らしだしています。音もよく響くように設計されていて、壇上からの肉声は集音器を必要とせず聖堂全域に届くようになっており、壇上の奥には巨大なパイプオルガンが添えつけられています。

 生活居住区は、門から見て右手に男子棟、左手に女子棟にと別れています。生活棟の部屋は二人分の家具が容易されており、そこで休む事もできますが、その内装は質素そのもの、ベッドは粗末な木に藁を敷いて布を張っただけのごわごわとした硬いもので、牢獄や最低品質の安宿よりはマシ、という程度のもので贅沢とは程遠いものとなります。もっとも、現世にて過酷な環境にある『神子』が有り難みを見いだす事は少なくないようです。

 中庭は自活可能な畑と水場があり、そこでは安定した気候によって野菜や薬草、穀物や家畜小屋、そしてワインが作られ、いつでも収穫できるようになっています。これらの食物や飲み物は摂取する事ができ、その栄養は眠る肉体に栄養を与えます。ただし、そこで生産されるもの以外の飲食物や調味料は存在しておらず、その収穫も番人である『羊飼い』の許可が必要で、好きなだけ美味しいものを食べるという事は出来ません。それらの食材は厨房に運ばれ、食堂にて注文し食べる事ができます。

 これらの生産や修道院の維持を現場で行っているのは『羊飼い』の下僕達です。下僕達は人型ではありますが、その輪郭より内側は立体感のない漆黒であり、その上に簡素なフード付きのローブを纏うという、人ならざる存在です。下僕達は生理現象というものがないようで、いつも休まず黙々と働いています。彼等は自分たちの作業に関わる事以外の知識は有しませんが個性や知性はあり、口に当たる部分がないにもかかわらず会話は可能で、その声も個体によって違いを持っています。

 大聖堂の裏手には図書館と倉庫がありますが、そこは『羊飼い』によって封鎖されており、窓口の『羊飼い』が認可した本以外を見る事はできません。また、貸出も認められていません。この図書館や倉庫に収められている物品は大半が『焚書』のために集められた『禁書』や『祭器』といういわくつきの呪物です。『羊飼い』は『神子』が集めてきたこれらの呪物を一時的に保管し、定期的に焚書・処分して無力化しているのです。

__《 神子集う場所 》_______________________________

 階級が異なる等で現世で容易に顔を合わせる事が難しい関係にある『神子』達は、こうして『イデア界』に魂を移す事で集合できます。親しい関係にある者たちはグループを作り、修道院のあちこちをたまり場としています。最も人気なのは食堂で、次に生活棟となっています。

 修道院では礼節が重んじられ、風紀を乱す行動はご法度です。この空間は常に『羊飼い』の目が光っており、風紀を乱すとみなされた者は即座に現世へと送り返されます。何をもって風紀を乱すと見なされるかの基準として、「集落の広場にて咎められる行為」がよく持ちだされます。

 『羊飼い』より使命がくだされる場合、その使命を受ける『神子』は大聖堂に呼び出されます。壇上では『羊飼い』が待っており、呼び出した『神子』が揃うとその内容を説明します。内容としては主たる魔女狩りの他に、焚書されるべき魔道書『禁書』や、呪具『聖石』の回収も命じられる事もあります。使命を下す『羊飼い』は固定ではなく、状況に応じて誰が壇上で待っているかが変化します。


【 神子の加護と奇跡 − U 】

 実際に『魔女』と相対した時、最も脅威となるのは《魔術》に他なりません。《魔術》は物理法則を完全に無視した事象を都合よく発生させるという理不尽なものです。それは主神のみが許される世界法則への介入の術を盗み出し、その一端を悪用して世界を改変させたものとされます。『魔女』の扱う《魔術》は程度の低いものとされながらも、その時点で並の人間では太刀打ちができません。

 それに対抗するためには、自身が同じ『魔女』となるか、《魔術》の断片を記した魔道書を手に入れるか、そして『魔女』に立ち向かう存在として選ばれるかしかありません。『神子』ではない異端査問官や魔狩人は、魔道書によってその術を一時的に得ていますが、『神子』は『啓示の夢』の中で『アルコーン』から与えられた術によって、それを常に成す事ができます。

 《魔術》の対象となった時、そこで鍵となるのは、対象者の心の強さ、《意思》の強さです。《意思》の強さは魂の強さであり、『魔女』に堕落しないためにも、また、超常の存在に立ち向かう勇気のためにも、心の強さはなくてはならないものなのです。

 『神子』はアルコーンの加護により『奇跡』を起こす力をいくつか与えられています。その中に、《魔術》に対する抵抗力があります。『神子』は自らの《命運》を障壁として展開し、世界をねじまげる《魔術》の影響を無効化する術を有しています。かつて教国を滅亡寸前にまで追いやった『魔女』を退けられたのは、まさにこの《魔術抵抗》故なのです。

 《魔術》は加害のための手段だけではなく防御や逃亡のための《魔術》も多く、その範囲は実に多彩です。特に空間転移と飛行の《魔術》には、多くの狩人が苦渋を飲まされました。その中で『神子』だけが、そうした状況に対応できる奇跡を行使できます。

__《 悪霊払いの収穫祭 》___________________________

 『アルコーン』から与えられた『魔女』を狩るための最大の奇跡、それが『悪霊払いの収穫祭』と呼ばれる結界の展開です。この奇跡が展開されると、周囲は現世から『イデア界』に隔離されます。隔離されるのは『神子』と『魔女』を含めた『奈落』に連なる存在のみとなります。

 結界内は先程までいた現世を再現しながらも、雷鳴轟く空が黄昏色に染まり大空を蝿の群れが埋め尽くすように飛び交っているという異様に過ぎる光景が広がっています。

 この蝿の群れは、空を飛ぶ存在があれば何であろうと瞬く間に群がって飛行を妨害し地上へとつなぎ留めます。この蝿の群れは通常の蝿ではなく、炎に巻かれても決して焼け死ぬ事がなく、いくら叩き潰されても無尽蔵に湧いてきます。これにより、何人も空を飛んで逃げる事も、空間転移で逃げる事も出来なくなり、檻に閉じ込められた状態となります。

 この結界は、『神子』か『魔女』どちらかが無力化されるまで展開されます。決着がつくと黄昏の世界は紙が裂けるようにして崩壊を始め、崩壊した箇所からは元の現世が現れ、やがて現世に包まれるように完全に消え去ります。

 『悪霊払いの収穫祭』はその場にいる『神子』のいずれかが『アルコーン』へ祈りを捧げる事で可能となります。『アルコーン』がその祈りに応えると結界は即座に展開されますが、『アルコーン』に展開は必要ないと判断されれば結界は展開されません。その時の祈りの言葉は特に決まっていませんが、『羊飼い』が語る正式な祈りは次のようなものとなります。


  「 高き館にまします王よ。

   我ら清き叡智はいずこにいたり、落ちる影の帰路はどちらにありや? 」



 『アルコーン』が祈りに応えるならば、次の言葉で返答されます。


  「 共に楽園に。 奈落の底へ。 」



【 神子の加護と奇跡 − V 】

 以下は『神子』が与えられた『加護』と《奇跡》の具体的な発動ルールです。

__《 魔術への抵抗 》______________________________

  《魔術》が行使され、自身がその《魔術》の対象と指定された際に、意識の有無を問わず任意に発動出来ます。《魔術》の【魔術判定】が成功した際、その〈対象〉となった際に《リアクション》として【抵抗判定】を行い、成功すれば、その《魔術》の効果を一切受けません。

 ただし、成功時に〈抵抗代償〉で指定された数値分、《命運》が減少します。また、《命運》が〈抵抗代償〉未満だった場合、【抵抗判定】は行えません。

 既に発動している、持続効果のある空間を範囲とした《魔術》やその副次的な効果に対しても基本的にこの抵抗は行えます。ただしその場合、成功しても〈抵抗代償〉は発生しません。また、抵抗はあくまで自身が効果を受けないだけに留まり、《魔術》を打ち消すものではありません。この抵抗は『魔女』も同様に行えます。

__《 銀の鍵 》________________________________

 自身がその場で眠りにつきます。実際に眠りに陥るまで4ラウンドかかります。この間、いつでも入眠を解除できます。眠りに陥ると、自身の魂が『イデア界の修道院』の門内に転移します。肉体に実害(【損傷】を受ける、《命運》が減少する、【抵抗判定】が行われる等)が及ぶと魂は即、肉体に帰還します。

__《 魔力感知 》________________________________

 《神子》は、なにかしらの《魔術》、あるいはそれに準ずる超常現象の効果受けている者や物品に触れた、あるいは土地や空間に踏み入れた時、その魔力を感じ取れる可能性があります。

 《神子》は【感知判定】を行い、これに成功すると、そのものが魔術的効果を受けていると明確に感知します。ただし、その魔力の具体的な効果や、それをもたらした原因はわかりません。あくまで、魔力を感じるのみに留まります。なお、《奇跡》も同様に感知できます。また、これらは『魔女』も行えます。

__《 穢れ 》__________________________________

 『神子』は己が有する《罪》に溺れる事で、本来失敗するはずだった行動を、運命を改変して強引に成功へと修正する『奇跡』を有しています。『魔女』もまた同様に同じ《魔術》を起こす事ができます。

 自身が何かしらの【判定】を行い、それに失敗したならば、《穢れる》と宣言する事で、【再判定】あるいは【後付修正】を行えます。

【 再判定 】  自身が行い、結果の出た【判定】を振り直します。その際、自身が有する《罪》の中から1種を選択します。振り直し時、【判定】に「+《罪点》×2」を得ます。自身の《穢れ》が、「2点」増加します。
【 後付修正 】  自身が行い、結果の出た【判定】にボーナスを適応し、改めて結果を出します。自身が有する《罪》の中から1種を選択し、「+《罪点》×4」をボーナスとします。自身の《穢れ》が、「4点」増加します。
《穢れる》時に指定した《罪》は、【堕落判定】終了後まで再指定できません。

__《 悪霊払いの収穫祭 》____________________________

 これは「【行動済み】にならず、【行動済み】でも行える」行動として扱います。『魔女、あるいは奈落に属するこの世ならざる存在を狩る事を目的とした、収穫祭の開催』を祈ります。心で祈っても、言葉に出しても構いません。その際の祈りの言葉と返答は、それを行う『神子』のPLとGMの任意であり、必ずしも『アルコーン』の名を呼ぶ必要はありません。結界展開時、『悪霊払いの収穫祭』の参加者とその獲物だけが『イデア界』へと隔離されます。


【 神子の加護と奇跡 − W 】

__《 ゴースト化 》________________________________

 ミドルフェイズ中に『神子』が使命半ばに【死亡】した際、『神子』は『アルコーン』を通じて神に慈悲を訴える事で、『アルコーン』より『ゴースト』として僅かばかりの間、現世に留まる事を許されます。その魂は幽体の『ゴースト』となって仲間と同行し、使命の結末を見届けるまで現世に留まり、その後に昇天する機会を得られる事を告げられます。《ゴースト化》を決意し、それが受理されれば、人間として完全に【死亡】が確定され、死体は一瞬で風化して塵となり、そして消滅します。

 ルールとしての処理は、【死亡】した『神子』のPLが《ゴースト化》を宣言し、GMの許可を得る事で適応されます。

 『ゴースト』となった『神子』は生前の五感の内、視覚と聴覚が維持され、他の感覚は失われます。自力で移動が行えなくなりますが、他のPCのいずれかを指名し、指名したPCに憑依する事で同行できます。この憑依は距離を無視し、いつでも憑依するPCを変更できますが、憑依できるのはPCのみです。そして憑依対象は同じ世界にいなければなりません。憑依対象が眠りについて『イデア界の修道院』に向かった場合、『ゴースト』も必ず同行し、側から離れる事はできません。

 『ゴースト』となった『神子』は、その姿を任意にいつでも透明化、そして透明化を解除する事ができます。会話は憑依対象を中心に「《意志》÷10PT以内》」の範囲内の対象と念話にて行えます。しかし幽体故に物理的な接触が必要な行動や判定は行えず、同時にそうした干渉も受けず、《魔術》の対象にもなりません。

 『ゴースト』となった『神子』は【堕落判定】の結果によってエンディングが変化します。

 【堕落判定】に成功した場合、その魂は彼方(『アイオーン』の御下だと『アルコーン』は語ります)へと昇天し、PCとして【ロスト】します。

 【堕落判定】に失敗した場合、その魂は漆黒の『ウコバク』へ変化します。以降は記憶を封印され、PCとして【ロスト】し、NPCとなって『イデア界の修道院』に滞在し続けます。

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