深き奈落の世界

1,奈落と魔王 2,魔王の思惑 3,幻の魔王達

 

 1,奈落と魔王
1,伝承の真実
伝承には、楽園の崩壊により神と天使は楽園を去り、
楽園は煉獄と化したと記されている。

この伝承は、堕天使アザゼルが、
禁じられた知識を人間に伝えた事から始まった、
天上全域を巻き込む大戦乱の末の悲劇を伝えたものである。

しかし、数多の年月の末に伝承の詳細は失われ、
時には捏造された情報に歪められ、現在に残る伝承となっている。

以下は、楽園の末路に纏わる部位の、今は失われてしまった真実である。
 

2,禁忌の過ち
楽園とは、神が人間を生み出した際に
住居として与えた箱庭の世界であり、
人間は神に従い慎ましやかに、幸福を謳歌していた。

人間の側には、先に生み出された天使が在り、
道を踏み外そうとする人間を導いていたが、
同時に、人に伝えてはならぬ知識を有していた。

やがて、天使の一人であるアザゼルが、
禁じられていた人間との情通を行ってしまう。
アザゼルは、その情愛から、禁断の知識を人間に与えてしまうのである。
 

3,楽園の崩壊
アザゼルによって禁断の知識を得た人間は、瞬く間に堕落し、
楽園を汚し、魂を穢していく事となり、その結果、楽園は失われた。
楽園に依存していた人間たちは、自らの行いによって多くが破滅していった。

神は楽園を放棄し、破滅した不毛の大地を、生き残った人間達が
自らの過ちを正す事が出来るかの試練の場「現世」として造り替えた。

アザゼルの過ちを重んじた神は、天使たちの現世介入を許さなった。
数多の月日の中で赦しを得られた人間は、僅か1名だけに留まった。
 

4,天使から魔王へ
堕落の絶えぬ現世の現状に、天使たちは苛立を募らせ、人間排斥を主張した。

「人間など救うに能わず。我ら天使さえいれば、神への奉仕は十分である」

神は、その主張を退けたが、これが天界の大騒乱を招いた。
天使たちに「神は愚かなり」との認識を与え、
己が神に取って代わるという野心を芽生えさせたのだ。

これにより、神と、神を裏切った天使達の、
天上全域を巻き込んだ大戦乱が巻き起こった。
この反乱は、激しい戦いの末に神が勝利し、
敗北した反乱軍の天使達は、牢獄たる奈落へと堕とされ、
永劫の彼方へ封印された。

奈落の底で堕天使たちは、その高貴なる天使としての姿を、
冒涜的な悪魔としての姿である「黒山羊」へと変質させていった。

こうして奈落の魔王達は生まれ、己の移し身や配下を、
試練の場である現世へ送り込み、様々な思惑で介入を行っているのである。
 

5,奈落という世界
楽園が光の世界とすれば、
奈落は闇の世界そのものであり、その性質は楽園の影に限り無く近い。

奈落の世界は現世(かつては楽園)を元に構成されており、
その住人や風景は現世の住人が忌避して止まない影で占められている。
それ故に奈落の住人は凶暴、陰湿、破壊的、享楽的であり、
そして奈落の住人は自らの光である現世の住人に猛烈な憧憬を抱いている。

黒山羊達は奈落に適応してはいるが、元々は天上の住人であり、
原生の住人達とは絶えず戦いが起こっている。
 

6,猟犬の正体
現世にて奈落に魂が染まった者を引き釣り込む“猟犬”は、
奈落に堕ちた者が、そこから抜け出さない様に見張る神の番犬である。
反乱を起こした天使達の指導者ですら、この番犬に直接打ち勝つ術を持たない。
その鼻と目と耳を掻い潜るだけで、精一杯といった有様である。 

魔王達はこの猟犬を当然憎々しく思っており、猟犬を打ち倒す手段を探してはいるが、
今のところ、その方法は見つかっていない。

 

 2,魔王の思惑
奈落の派閥
反乱の末に敗北し、奈落に封じられる堕天使は、
主に三通りの思惑を持つ者に分かれるという。

それは、「神への復讐」「神への恭順」「神との決別」であり、
彼ら個人がどのように行動するかの指針となっている。
 

1,神への復讐
天上から奈落へと堕天し、黒山羊に堕落した
天使達の大多数を占める派閥である。

この派閥の者たちは、奈落に我が身を追いやった
天上の者たちに対して、非常に強い憎しみと恨みを募らせている。

彼らは現世に移し身や使い魔を送り込み、救いを求める民を誘惑し、
奈落へ引き釣りこもうと活発に行動している。
神に従順な者を奈落と現世へ縛り付け、時には自らの眷属へ招き入れ、
やがて天上へ決戦を挑むための布石とするために。

復讐の派閥に属する魔王は、現世の民を”聖槍の魔女”とするよう、
黒山羊に言いつけている事が多い。
 

2,神への恭順
神への復讐を誓う者達とは反対に、神の赦しを得て、
天上へ帰還する事を望む堕天使達の派閥である。

この派閥は、復讐を望む派閥とは基本的に敵対関係にあり、
魔王たちの勢力争いの大きな要因となっている。

彼らは、復讐の派閥による聖槍の魔女への誘惑を妨害し、
磔刑の魔女に傾くように介入を積極的に行う。

この、復讐と恭順の派閥抗争により、現世の魔女は、
常に選択を求められる事になるのである。
 

3,神との決別
復讐でも恭順でもなく、天上への帰還も罪の赦しも
求めぬ堕天使が集うのが、この派閥である。

彼らが、神との決別を決断し、不毛の奈落と現世を
永遠の己の領土として受け入れる理由は様々である。

思想にとらわない中立的な、ある意味で現金主義、
俗物的な者が多く、現世で最も民を堕落させたのは、この派閥とも言われる。

このような性質故に、この派閥に属する黒山羊達は、
魔女が聖槍、磔刑のどちらになるかという事に関して、介入をする事は少ない。
 

 

 3,幻の魔王達
審判者サタン
神を裏切り、反旗を翻した堕天使達にとって、
神からの内通者、奈落の裏切り者としての存在は、
警戒せずにはいられないものである。

そこで「審判者サタン」と呼ばれる特殊な天使が、
奈落に内通者として降り立ち、魔王たちの情報を
天上へ伝えているのだと噂されている。

性質上、恭順派がサタンの疑惑を掛けられる、
あるいは自称する者もいるが、
サタンは天上を行き来できる力を持つ事にも繋がるため、
その力を巡って、サタンの疑いのある者が
復讐派と恭順派から狙われる事は常であり、
己こそがサタンだと自称する者は、今や皆無である。
 

始原の堕天使アザゼル
人間に禁断の知識を与え、天使ではじめて堕天したというアザゼルは、
その罪によって、神のみぞ知る秘密の牢獄へ封印されたという。

アザゼルは封印される直前、神の知識を纏めた禁書「ラジエルの書」を
何処かに隠蔽したとされ、それらの行方は、未だ不明のままである。

その秘密の牢獄と、禁書の隠し場所は、
奈落の何処かであると噂されるにとどまり、
それを知るのは神と、当人のみだとされている。
 

淫欲の魔王アスモデウス
プルガトリウムにて、最も名を馳せている魔王であり、
煉獄の魔女たちの盟主である。

この魔王は、ひどく我侭で相手の都合など考えない、
好奇心旺盛な子供のような性格をしており、人間の心に強い関心を持っている。

魔王たちの派閥の中では決別派に属しており、
現世に強く介入するのは、人間の醜さと美しさを堪能する、それだけのためである。

特に美少女に目がなく、目をつけた少女の周囲に誘惑や災厄を撒き散らし、
その心を弄ぶ事を一番の楽しみにしている。

その移し身の姿は、その嗜好に見合う無垢なる美少女であり、アリスと呼ばれている。
 

知識の魔王ダンタリアン
禁書室の管理者である黒山羊ダンタリアンは、
奈落に鎮座する魔王の移し身である。

ダンタリアンは、時と場合によって魔王達の派閥を移り変わりながら、
禁書室という己の書架をサバトハウスへと強引に繋げている。

ダンタリアンの動機は不明だが、その目的は、今は失われし
始原の魔道書「ラジエルの書」の回収であり、禁書の回収もその一環である。

ラジエルの書の回収は、復讐派にとっては、神に対抗する絶対の力を得るために、
恭順派にとっては、赦しを得られるという大義もあり、それ故に魔王たちは、
知識を管理する事に最も長けた、移り気な魔王ダンタリアンの介入を容認しているのである。
 

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